○西暦1999年、日本国東京都内、城西警察署

 

後鳥羽法皇、署内で警察官達によって事情聴取されている。

 

警察官A「あんた名前は何ていうの?」

 

後鳥羽「無礼者!」

 

警察官C「(ウンザリしながら)住所、住んでいる所はどこ?」

 

後鳥羽「隠岐じゃ」

 

警察官D「隠岐…って事は現住所は島根県で間違いないね?」

 

後鳥羽「愚か者!」

 

警察官A「あっ?」

 

後鳥羽「嶋根ではなく隠岐と申したであろう!

ワシが逆臣・北条義時によって隠岐へ流された事を知らんのか!?」

 

警察官C「あんたが義時によって隠岐へ流されたっていうのが事実なら、あんたの正体は後鳥羽上皇で本名は尊成で間違いない?」

 

後鳥羽「(怒りで震えながら)東胡の分際で法皇を諱で呼びかけるとは…この無礼者!」

 

警察官D「…高そうな服を着ているし体もガッシリしているから裕福で健康な中年男である事は判るんだけどさ、正直にちゃんと話してくれないと家に帰れないよ」

 

北条時仁の声「上皇様、御迎えに参りました」

 

後鳥羽「?」

 

警察官A「あ、さっきのイケメンのお兄さん」

 

時仁、後鳥羽の背後に出現する。

 

後鳥羽「おお、忠臣トキュートの末裔トキューサ!

待っておったぞ」

 

警察官C「イケメンのお兄さん勝手に入って来ちゃダメだよ。

どうやってここに入ったの?」

 

時仁「上皇様、元の時代へ御戻りになられる前に御一緒に立ち寄って頂きたい時代と場所がございます」

 

時仁と後鳥羽、亜空間へ消える。

 

警察官D「!?」

 

警察官A「消えた?」

 

警察官C「神隠しか?」

 

警察官D「そんなはずはないさ…さがそう!」

 

 

○西暦1590年、相模国、石垣山城、天守閣

 

時仁と後鳥羽、亜空間から出現する。

 

時仁「ここは共通歴1590年、上皇様の時代から3世紀以上後のこの時代に関白殿下が北条を滅ぼす為に造った城です」

 

後鳥羽「関白が北条を滅ぼす?」

 

時仁「はい、この時代の関白殿下は総大将として自ら官軍を率いて相模国に攻込みました」

 

後鳥羽「北条は滅ぶのか…」

 

徳川家康の声「関白殿下が御振舞になられた御酒の返礼品として北条は銃弾を送って来たというのはマコトですか?」

 

豊臣秀吉の声「大納言、それは何を意味すると思う?」

 

家康の声「恐れ多くも関白殿下への徹底抗戦の意思表示…ではなく、兵糧が尽きたのではないでしょうか?」

 

秀吉の声「さすが大納言!その通りじゃ」

 

石田三成の声「官兵衛、如水も『北条は兵糧が尽きた』旨申しておりました」

 

家康の声「氏政殿…」

 

秀吉の声「どうじゃ大納言、北条はもうお終いじゃ」

 

秀吉、家康、石田が天守閣に入る。

秀吉達、時仁と後鳥羽を目撃する。

 

石田「何者だ!」

 

時仁「(後鳥羽を手で示し)この御方は後鳥羽上皇様です」

 

石田「そんな訳ないだろ!

後鳥羽院は鎌倉幕府執権・北条小四郎義時によって隠岐の島へ流されて以降、二度と生きて島を御出になられぬまま崩御された筈だ」

 

秀吉「いや、このお方は上皇様に違いない…

この関白が今まで見た事もない高貴な装束をお召しになられておられるのだから上皇様に決まっておる。

上皇様!ようこそ一夜城へ」

 

石田「(時仁に向って)お前は何者だ?」

 

後鳥羽「無礼者!(時仁を指差し)トキュートは天子様の直臣であるぞ」

 

秀吉「(時仁を見て)天子様の直臣…という事はおぬしは勅使であるか?」

 

時仁「私は北条武蔵守平真人時仁です」

 

家康「北条一族の者が勅使?」

 

時仁「私は大仏流北条氏末裔です」

 

石田「大仏流…256年前、建武政権によって一族の生き残りが処刑、根絶やしにされ断絶した筈では?」

 

秀吉「上皇様!北条の最期をお見せ致します」

 

秀吉、窓から見える城を指差す。

 

後鳥羽「(秀吉の指差す先を見て)北条の城などみすぼらしい砦に過ぎないと思っていたが、意外と立派な城だな…

関白、あれが鎌倉か?」

 

秀吉「上皇様、あれは鎌倉ではなく小田原です」

 

後鳥羽「小田原?」

(To Be Continued)