コモにタウリスのイフィゲニアを見に行って来ました。コモのオペラ、ラ•ボエームの最後のところに書いたのですが、お目当てはいくつかあって、指揮のデイエゴ•ファゾリス、主役のソプラノ、アンナ•カテリーナ•アントナッチ、それに演出のエムマ•ダンテです。これだけ揃うとスカラで上演しても良いくらいです。
ファゾリスは既にスカラで何度も特にバロックのオペラで体験し、その真摯かつ生き生きとした演奏に感銘を受けていました。昨年2月にスカラで上演された『イタリアのトルコ人』のプリミエを指揮し、その翌日からコロナでロックダウンになりましたが、そのプロダクションがこの秋、再び取り上げられ、ファゾリスが再び登場しました。アントナッチはその名を知っていたものの聞くチャンスがないままに過ごしていました。演出のダンテは映画監督として知られていましたが、2009年スカラ、オープニングのカルメンでオペラ演出家としてデヴューしました。このときやはり主役でデヴューしたのが当時まだ研修生であったスカラ•アカデミーの出世頭 アニタ・ラチヴェリシュヴィリです。
このオペラは嵐の場面の激しい音楽で始まりますが、それを突き通してアントナッチの第一声がトランペットの様に聞こえて来た時は一瞬度肝を抜かれ、『何が起こったのだ』と思ったくらい素晴らしかったです。失礼ながら61才の歌手から予期していたものと全く違っていました。その後も美しい声を聞かせてくれ、とくに低域が柔らかく豊かに響くのが魅力的でした。小さい劇場とはいえ、このお年でオペラ全曲を完璧に歌い通せる事が驚異に思え、聞けた事が大変幸せでした。思い出したのはジーン•コックスという1922年生まれのテノールで、1956年から1984年、つまり62才までバイロイトで歌いました。1983年はゲオルク•ショルティの指揮でジークフリート、最後の年はホルスト•シュタインの指揮でマイスタージンガーのワルターでした。更に1996年、76才までマンハイムの舞台に立ちました。インタヴューで『どうしてそんな事が出来るのですか』と聞かれて、『毎日歌って居るからだ。そうするとどんどん調子が良くなる』と答えていました。又アントナッチを聞きたいと思いました。
ファゾリスはいとも簡単に指揮していました。私はこのオペラを初めて見たので、勉強しておこうとYouTubeで探し当てたのが、やはりファゾリスの指揮によるフランスのアンジェに於ける録画でした。私の親しく、尊敬して居る人がこの近くの出身で、招待された事があるのである程度知っていますが、こんなところにもオペラハウスがあるのには驚きました。728席でコモより小さい劇場です。ここでは前のブログ久しぶりのスカラ, ソーニャ•ヨンチェヴァのバロックでアンサンブルを主導したリュート奏者モニカ・プスティルニクがオペラを指揮したこともあります。