一年九ヶ月ぶりにスカラを訪れました。最後に行ったのは昨年2月22日で、丁度その日にイタリアで最初の感染者がヴェニスの近くのパドワで見つかり、翌日はミラノの南60kmのところでも発見された為、大急ぎでスイスに逃げ帰り、事なきを得ました。同じ日にミラノ•コレクションを訪れていたチューリッヒの人が1週間後スイス最初の感染者となりましたが、車で行ったので、危険が少なかった様です。そして24日のトロバトーレ公演は中止となり以後ロックダウンがずっと続いていたところ、今年9月から観客数を半分にしてオペラ公演が再開されました。一ヶ月前からはその制限も撤廃され、全てのチケットが販売されています。
イタリアでは今年2月に連立政権が崩壊した際、マッタレーラ大統領が、『このコロナ危機に選挙をして居る余裕はない』と独自の提案で元ヨーロッパ中央銀行総裁、マリオ•ドラギを首相に任命しました。彼が2012年のユーロ危機に 『Whatever it takes』と述べて一挙に鎮静させたことは伝説的で、ヨーロッパ全体で大きな信頼を得ています。この事からスーパー•マリオと呼ばれ、イタリアを救う切り札と期待されて居るのです。
彼に対するイタリア人の信頼も大きく、コロナ危機に際し、『ワクチン接種に反対する者は死ぬか他人を殺す』、と述べたところ、一斉に未接種のイタリア人がセンターに駆けつけ、あっという間に接種率が80%を超えました。又、先の選挙で接種に反対意見を述べていた政治家の多くが落選しました。その結果イタリアはコロナに関して現在ヨーロッパで最も安全な国となり、私達もスカラに行ける様になりました。安全管理は厳しく、接種証明の提示を求められ、体温が測定されました。医者である息子が『解熱剤を前もって飲めば良い』と言ったのでアスピリンも持参しましたが必要ありませんでした。
訪ねたのはオペラでなくソーニャ•ヨンチェヴァがバロック•アンサンブル、カペレ• メディテラネアと共演したコンサートでした。彼女を体験したのは2018年7月にベッリーニの海賊に出演したのが初めてでしたが、その素晴らしさに感動しました。
これはマドリードに於ける録画ですが、スカラと同じプロダクションです。
その彼女が同年引き続きザルツブルクに於けるポッペアの戴冠に出演したときには余りに畑が違うのでビックリしましたが、そもそもはポッペアを指揮したバロックの大家、ウィリアム•クリスティに弟子入りしていたのです。その為、今日でもバロックは彼女の重要なレパートリーです。この事はウィリアム・クリスティとレザール・フロリサンに書きました。
2006年、ウィリアム•クリスティのオーディション
昨年のザルツブルクで行われたバロック•コンサートがスカラで再演されたので行ってきました。
ロマン派のオペラと異なり響きは小さいのですが、多彩なニュアンスの表現に集中して聞き入りました。そんな彼女をカメレオンに例える批評もありました。わざわざ出かけて来た甲斐がありました。ネトレプコが一本調子の歌手に思えました。
アンサンブルの指揮者レオナルド・ガルシア・アラルコンは何故か不在で、代役を勤めたのはリュート奏者のモニカ・プスティルニクで、リュートの他チェンバロとオルガンも担当しました。彼女についてはコモのオペラ、タウリスのイフィゲニアでも言及しました。
新シーズンの開幕公演、12月7日はヴェルディのマクベスで、ルカ•サルシとアンナ•ネトレプコです。全ヨーロッパで同時中継されます。
スカラでは舞台後方に新たな増築工事が進行中で、18メーター位掘り下げ、練習場と録音スタジオとして使える大きなホールを作り、その音響設計は豊田 泰久さんが担当します。地上部分は11階あり、楽屋、小さな練習室、事務所などが備わります。行ってみましたが、まだ地下部分の作業中で、なにも見えませんでした。ーー>スカラ座の増築
今回とても嬉しかったのは、常宿や行きつけのレストランなどで旧知の皆さんに再会できた事で、コロナの為休業を余儀なくされたりしていましたから、どうなっているのかとても心配していました。自然な入れ替わりがあったにせよ、ほぼ2年前と同じ様に歓迎されました。





