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ある日道を歩いていたんだ。
そしたら道の真ん中に巻き貝が落ちていた。
拾って中をのぞき込んだら空っぽ。
耳に当ててみた。波の音がするっていうからね。
目をつぶって耳を澄ますとほんとに音がした。
ザザーーンっていう音としぶきのパラパラという音まで聴こえた。
目を開けると頭が半分巻き貝に吸い込まれていた。
あっという間に全身吸い込まれて、巻き貝の中を上がっていった。
踊り場のようなところに来たらなぜか止まった。
だれも踊らないのに踊り場。
そう思ったら小さいカニがサイドステップを踏んで踊ってた。
「これより上は海王国の敷地になります。一度入ったら肺がエラになり、クソ陸世界には戻れません。5秒でゴーかリターンか決めてください」
上の方から子供の女の子の声が響いてきた。
陸世界。俺のようなやつを負け犬と蔑むあの世界のことか?
どうでもいい。
「迷ったらゴー。ゴーでよろしく。」
また上に吸い込まれ始めた。
遠ざかるカニが高い声で何かキーキー言っている。
なんだろう。
上を見ると黒曜石の壁があった。
ぶつかる、と思う間もなくズボっとハマってそのまま吸い込まれた。
すごく固いジェルみたいな感触のなかズルズルと上に引きずられていく。
なんだかすごく暑い。
いや熱い。
燃えているんじゃないか。
すぐに体の中まで熱湯に浸かっているような火傷の痛みを感じ、意識が飛んだ。
熱い。
暑い。
ここどこだっけ。
水が飲みたい。
急に冷たい水の中に放り出された。
肌に水が染み込んでくる。
目を開けると静まり返った、海の遺跡だった。
水の中にいるのはわかるけど、目ははっきりと見えるし、まばたきする必要もなさそうだった。
息ができた。
べつに泡とかは出なかったけど、普通に水を吸ってはいていた。
音がしない。
ずいぶん静かだ。
海の中なのに生き物がいない。
海藻がすこしゆらゆらしているだけ。
陸の世界でも何もやることがなかったっけど、ここでもやることがない。
結局なにも変わらないのか?
普通のことをしていては勝てない
飛び込んでみる
走ってみる
そして世界の広さを知る
自分がいかに小さいかわかる
僕の武器は失うものがなにもないことだ
命だって失ってもいいことだ
いくらでも恥をかいてもいい
知っている人から笑われて見下されてもいい
だから普通じゃないことをする
ぶっとんだ攻め方ができる
世界のあまりの大きさに足がすくんだとき
自分には誰にも負けない武器があることを思い出そう
僕らは自分の可能性を狭めるために
すぐ絶望する
やってみなければ分からない
始めなければ始まらないのに
すこずつでも登っていかなければ頂上には近づかないのに
楽がしたいから
逃げたいから
始める前に
真っ暗闇でなにも見えないから、何もないだろうと決めつけて、諦めたがる
暗闇を手探り進めばなにか手がかりに触れることができるかもしれないのに
始めるのに必要なことはただひとつ
始めること
どのぐらい長い道のりか、とか
この先に本当に出口があるのか、とか
考えずに
まず飛び込む
そしてひたすら走る
それだけでいい
脳内麻薬は抜けない
快楽の園にいざない
絶望の淵に突き落とす
僕は心の檻に囚われている
ここは薄暗くて湿ってて寒い
出たいんだ
陽光のもとへ
植物とか花とか波とかが好きなんだ。
どうか1時間でいいからこの心の檻から出してください
こんなことのために生きてきたわけじゃないはず
株で成功する?
誰にでも億までいくチャンスがある?
確かに僕にもあるんだろう
でも楽しくないんだ
がんばって勉強してる時間も分析してる時間もトレードしているときも。
生きている快感が感じられない。
勝ったときも全然達成感がない。
パチンコや宝くじで勝ったような。
全然自分が成長した気がしない。
全然人の役に立った気がしない。
たとえ1億稼ごうと10億稼ごうとそんなことに意味はあるのか?
君、ばかだよね?やっぱり。
自分が命かけてもいいぐらい充実していると感じられること。
それで月に10万でも稼げればそれで人生勝ちじゃないのか?
それに勝る幸せなんてあるんだろうか?
もう笑っちゃうよ。
10年間もずっとこんな事考えてばっかで全然行動できないんだからね。
オレには何が大事でなにが優先順位が上でなにが人生を充実させるかを感じる能力が無いんだ。
下手にかしこぶって、かんたんに金儲けをまずやってからそっから自由にやればいいとか考えている。
そうやって逃げ続けてきたのかもしれない。
自信がないから。
何者にもなれないのではと。
だから保険を打つことばかりに自分の人生の時間を使ってきた。
でももういいんだ。
なにたった10年間無駄にしただけだ。
ちょっと迷ってただけのこと。
ずっと自分を見失ってた。
もちろん生まれたときから自分のことがわかったときなんて一度もなかったけど。
一人暮らしをして、自分で金を稼ぎいきていくことになってから、
やっぱり金に縛られて生きてきたんだろう。
インターネットのこの時代。
いつでも表現することはできたのに。
自分で表現しないで、人が生み出したものばかりを死んだような顔で消費し続けた日々。
僕は芯から腐りきってしまったようだ。
それは心地よく甘い腐敗。
まるで覚醒剤。脳内麻薬。おそらく成分はそんな変わらないのだろう。
表現する楽しさも美しさも忘れ。
わくわくするような絶望と孤独を消費する。
どの作品も素晴らしいのに僕をダメにする。
孤独と絶望の淵に頭から浸かって抜け出せなくなる。
そして10年が経ち堕落しきった現在。
僕は消費への依存症から抜け出せなくなってしまった。
怖くて自分で表現することができなくなってしまった。
もう自分の脚で歩くことすらできない。
今日を境に変えようと思う。
人生の主軸を変えようと思う。
遅すぎるとは思わない。
だってもういつ死んでもいいんだから。
いつ死んでもいい人間にとって遅いとか早いとか若いとか歳をとりすぎたとか関係ない。
最高な今日が在りさえすれば
明日死んでもいいんだから。
ここは桜と銀杏の国。低地は一年中桜が咲き、高地では一年中銀杏が色づいている。夜になると銀杏も桜も散る。そして日の出とともに芽が出て、つぼみが開いて国の人達が起きだす頃にはきれいに色づく。東の果ての国にまで伝わる桃源郷伝説のもとになったといわれている国。
都心のターミナル駅の近くの高層マンション。その最上階がケンの住まい。窓からは政府も高速鉄道も王の宮殿も見下ろせる。広々としたリビング。完全防音のかべ。高級な家具。地下駐車場には高級SUV。なに不自由ない生活。それなりに成功した30才だ。
今日は休日。昼ごろ起きだしてシャワーを浴びて、外出の準備をした。投資銀行に務める親友ジュンが久しぶりに海外出張から帰って来たらしく、昼から会うことになっていた。
(この不況だってのにジュンの勤め先は最高益を叩き出してるらしい。顧客はみんな大損こいてるってのにな。さすがだぜ。フフフ)
高級ブランドの服に身を包んでエントランスを出て呼んでおいたタクシーに乗り込む。
マンションの外に黒塗りスモークの外車が停まっているのが少し気になった。
ケンは荒稼ぎしているので敵が多い。名前も住まいも仲間以外には知られないようにしているが、マフィアも敵に回すことがあるので常に注意深い。
しかし久しぶりに会う親友のことを考えているうちにそんなことは忘れてしまっていた。
芋は一年中とれるので朝から晩まで働いて収穫したり、苗を植えたり開拓をしたりしていた
そんなに働いても親指一本ぐらいの小さないもがつるにパラパラと付いてるだけ
子どもたちの一日の食事はその芋を朝晩に一本ずつ配給されるだけだった
だんだん子どもたちが成長するにつれて、毎日ケンカするようになり勝った奴が負けたやつからいもを奪い取るようになった
すべて奪ったら衰弱して管理人に殴られるので、奪うのはひとりから一日一本までと決まっていた
そんな日々を過ごすうちに奪われる者と奪うものが分かれていった
この土地にはそんな畑はいくらでもあって大体20人ぐらいの子どもが働いていた
どこでも同じように奪い合いになっていき、最終的にはボスが決まり子分が7,8人ついて残りはかもだった
かもと奪う側にそこまで大きな力の差がなかったので比率は半々ぐらいだった
でもシンの畑では違った
子分のような存在はいなかった
ただボスが3人いた
3人共圧倒的に強く、そして仲が良かった
この3人が組めば他の奴隷がまとめてかかってきてもびくともしなかったので、支配者3人体制でおもうぞんぶん芋を食べることが出来た
だいたい6歳ぐらいからそんな感じだったので12歳になり夜の2時間の外出が許されるようになって街でほかの奴隷たちと交わるようになると、この3人の体の大きさと圧倒的な強さは知れ渡った
毒の霧を撒いてジャングルの木をすべて枯れさせろと指令を受けていた
その地域はそこに住む部族が何千年も聖地と崇める宮殿が立っていて、周辺で木を切ったり生き物を殺すと天罰が下ると言われている地域だった
操縦士たちにもその話は伝わっていたが鼻で笑っていた
最先端のヘリコプターで最新の科学で生み出した毒を撒いているのに天罰だなんてバカバカしいと思っていた
そして毒を巻き始めてた
ドーンドーンと音がして先頭の操縦士が振り返ると他のヘリコプターが全て墜落していた
下を見ると急に大きな透明なてが伸びてきてヘリコプターの後ろのしっぽの部分をつかんで大地に叩きつけた
あとに残ったのは墜落したヘリコプターの群れといつも通りの平和なジャングルだった