日本において主流になりつつある英国型変異株を含むN501Y型の新型コロナウイルス。

特に大阪府はその割合が8割を超える高い水準が継続し、既に従来株から置き換わったと厚労省アドバイザリーボードは推定している(第33回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード「資料1 直近の感染状況等の分析と評価」)。
 

そして、変異株は従来株と異なり、「重症化しやすい」「若い世代も重症化」と毎日のように報道され、医師の方々が体感的にこれらを肯定するコメントを発している。

 

 

だが、その報道や体感は本当なのか?

実は、近々の本年4月12日、「ランセット感染症」という世界的に権威ある雑誌に査読されて掲載された論文では、英国型変異株は重症化・死亡とは無関係ということが強い相関関係をもって認められたと記されている。

 

 

発祥の地であり、大きな流行地となった英国での信頼できるコホート研究において、重症化・死亡と関連した証拠はない、とされているのに、日本だけ「重症化しやすい」「若い世代も重症化」はおかしな話。

 

そこで、詳細な年代別データと共に各波毎の重症化率を公表している大阪府データにあたってみた。

その結果は、以下のとおり。(なお、第4波についてはアドバイザリーボード資料の3/1~4/26判明分を足しこんだもの)

 

 

これを見る限り、第4波は以前と比べて各年代とも重症化率に著変はなく、全体の重症化率はむしろ低下している。

 

この傾向は、大阪府だけでなく全国も同じ。

下記は週一度厚労省が報道発表している年代別重症化割合の直近のものと昨年12月末を並べたもの。

 

 

やはり各年代とも重症化割合が低下していることがわかるだろう。下記グラフはこの2枚をまとめたもの。

 

 

結論として、これらの統計的数字を見る限り、報道や医師の体感は、事実を反映したものとは言えないことは明らかだろう。

 

なお、最後に、大阪府で重症者が多い理由を推測する。主な原因は2つだろう。

その1つは、高齢者施設でのクラスター発生が多く、重症化しやすい施設入所者から多く重症者が出ていること。

もう1つは、おそらくは感染力の増大により、はっきりとしたピークを形成せずに、高原状に高い新規感染者数が続く英国型の特徴と、重症化すると入院期間が長くなる新型コロナの特徴が相まって、重症者病床のひっ迫が慢性化してしまっているのだろう。

 

 

ただし、それが「変異株は重症化しやすい」という特徴をもっていることを意味するものではなく、新規感染者数の絶対数が多い期間が長引いていることによって、間接的に重症者数増をもたらしているのだろう。

 

重症化率の推移や感染力の増大などを総じていえば、スペイン風邪でも見られたように、「新規感染症が変異に伴い弱毒化して一般化する」道を新型コロナウイルスも歩んでいる可能性があるともいえるだろう。

 

私たちは、ヒステリックな様相のマスコミ報道から一歩距離を置いて、事実を淡々と検証しなければならない。

 

なお、12日の厚労委員会では、私の上記エビデンスを示した質問に、田村大臣が

 

「大阪で確かに若い世代の重症者が多いという話は聞いているんですが、それが感染者が多いからそう見えているのかどうかということも含めてよくよく分析しないと、確かに、我々は変異株怖い、だから重症者が多い(と思っていたが)、確かに感染力はあるということは間違いないんだけれども、重症化率という意味からすると、よくよく分析しなければなりませんので、正しく国民にお伝えするためにもよく分析をさせていただきたい」」

 

 

と答弁されたことを最後に申し添えて置く。