今朝のNHKワールドニュース。感染者数が減少したということで人々が解き放たれ、セントラルパークの大きな平たい岩の前で何十人かが集ってマスクもせずにズンバを踊っているのを「良いニュース」として伝えていた。

 

喜んでいるのは、一部の人ではなくNY市民全体。報道では

「コロナワクチン接種が進み、デブラシオ市長は経済全面再開の目標を7月1日と宣言。観光振興へ巨額の支援策を打ち出す。市民からは楽観的な声が聞かれ、業界のデータにも明るさが示されている。」(時事通信

とのこと。

 

アメリカの現在の100人あたりの接種回数は74.6回、接種完了人数は32.28人だ。イスラエル、UAE、チリ、英国などと並んで世界のトップクラス、日本がそれぞれ3.0回、0.83人であることに比べればだいぶ先行している。

 

だから、アメリカは喜びに沸き返り、日本は遅れている、マスコミはそう伝えたがっている。報道を見る限りは、我々はアメリカを「羨ましい」と思わざるを得ない。

 

だがちょっと待って。ここでFact Checkをしてみよう。以前のブログにも書いたが、クリティカル・シンキングこそ必要だ。

ニューヨーク州の5月5日の新規陽性者数は2,511人(Worldometersより。以下人口も含め同)。同州の人口は1,945万人なので100万人あたりの数は129人。

東京都の同日の新規陽性者数は621人。人口は1394万人(東京都推計)なので100万人あたりの数は45人。

 

あれ?喜びに沸くニューヨークの3分の1程度の数字だ。ワクチン接種などほとんどされておらず、かつ、第4波・変異株とマスコミが大騒ぎしている最中なのに、だ。

ちなみに大阪府は668人、人口880万人なので、76人。東京よりは多いが、それでもニューヨークの半分。

 

つまり、ワクチンを先頭を切って開発し、接種もトップグループで行っているアメリカよりも日本の方が状況はずっと良い。だから本来ならばこの1年を通して日本は、緊急事態宣言などの社会的距離政策を採る必要のもなく、むしろGoToなどの観光支援策を採り続けていても良かったのだ。

 

それを阻んでいたものは何か?

それは、主として2つの要因。

 

まず1つ目は、言わずとしれたマスコミの「コロナ恐怖」のあおり報道と、一部野党の政治利用。

マスコミは、最初の頃は外国の症例をそのまま紹介して「日本でも人がバタバタと死ぬ、若者も急死する、重大な後遺障害が残る」と煽り、それがないとわかると今度は「長期的な後遺障害が残る」と煽り、それも見えて来ないと「医療崩壊が起こる」と煽り、それも起こらないと今度は「変異株で感染爆発、若い世代も重症化」と煽り続けてきた。

このような報道(+ワイドショー)ばかり毎日見ていれば、敵はとてつもなく巨大なものに見え、本来行うべき対策(重症者の主要な発生源である高齢者施設・慢性期病院での感染防止対策(従事者への頻回検査・ブログ参照)はパニックの中で放り出され、派手で見栄えのする緊急事態宣言などの社会的距離政策ばかりに注目が行き、為政者はそれを取らざるを得なくなる。

 

2つ目は、医療システムの融通性の欠如。現在、マスコミの煽ってきた中で唯一現実化しているのは、大阪府における重症者を中心とする医療逼迫。

しかし、これとて諸外国では普通に行われている自治体(都道府県)の垣根を超えた移送をすれば、現状でも溢れることなど決してない。

厚労省オープンデータで確認できる最新の数字は5月4日時点の重症者数1114人。仮に大阪府で本来入りたいが入れない方が相当数おられるとして、1200人。

これに対して、全国の確保病床数は4200を超えている。

 

つまり、3000の空き病床が実は存在しているのだ(下記は菅総理との質疑時に示したグラフ)。

 

 

そして、さらに驚く話もある。

ある医療系ニュースによれば、積極的に受け入れてきた基幹病院は、令和2年の利益がすごいことになっており、まさに「コロナバブル」だという。そして、コロナに対応しない医療機関にも支援金が入っているお陰で、病院のほとんどは「ほぼ前年並み」の医業収益を達成出来ているという。

 

私達は、落ち着いて周りを見渡そう。海外の情報・日本の情報を、数字も参照しながら参考にしよう。今、何をやるべきで、また、どうしたら多くの人を苦しめる「対策」という名の制限を最小限に出来るのか?そこにこそ智慧を絞ろう。

マスコミやどこかの野党のように、政府を批判して、対策の強化を訴えるのが「リベラル」でも「知性」でもないことを、私達はもっときちんと理解しよう。

そうすれば、「NYではズンバを踊り、東京では緊急事態宣言が続く」不思議を、不思議として正しく受け止められるだろう。