春先、やたらとPCR検査拡大を煽り、政府批判と繋げていた某医師や大学教授、そしてワイドショーのコメンテーターの面々。 

このところ多くの開業医の方も発熱外来に取り組まれるようになり、初期診療体制も整備されてきて、発熱者が受診先探しに苦労することも無くなってきたようで、「始めにPCR検査ありき」の声も少し静かになってきたかと思いきや、この第三波でまたぞろPCR検査不足を言い出す方がいる。

政府も支持率低下を気にしてか、「感染状況を調べるため」との理由をつけて、30億円もかけて街角で無料検査を始めるとのこと(日経)。


しかし、この風潮は疑問大。

まず、感染者個人にとっては、意味がないだけでなく危険だ。発熱者などがPCR検査だけを受けても意味はないからだ。受診して、適切な診療(X線検査、血液検査)を受けるのが大事。結構重い症状でもPCR検査は繰り返し陰性と出ることもあるが、診察さえ受ければ陰性でも症状から疑って適切な処置を受けられる。

ここを省いて検査だけを受けようとすると、先般お亡くなりになった参議院議員の方のような悲劇が起こる。


一方で、感染拡大防止効果も期待出来ない。

ザルで水をすくっても水は溢れるばかり。やるのであれば地区封鎖を伴って瞬時にこれをやらなければあまり意味はないだろう。これを実際にやっているのが中国。その中国を引き合いに出して、推進論者のお一人、上氏が次のように述べておられた。少し長くなるが引用させていただく。


「注目すべきはPCR検査数を感染者で除した数字だ。1人の感染者を見つけるために、どの程度のPCR検査を実施したかを示している。中国が1808.7回と突出し、韓国66.6回、カナダ24.3回、イギリス22.2回、ドイツ21.0回、日本19.5回と続く。最下位はアメリカの12.7回だ。中国の142分の1である。実は、コロナ対策を考えるうえで、中国のように「闇雲」にPCR検査をやることは合理的だった。コロナの特徴は感染しても無症状の人が多いことだ。無症状の人が巷にあふれれば、偶然、症状が出た発症者と濃厚接触者をしらみつぶしに探すだけでは、大部分の無症状感染者を見過ごすことになる。

 無症状感染者は、どこにいるかわからないから、彼らを「隔離」(自宅を含む)しようとすれば、網羅的に検査するしかない。仮に住民の0.1%が無症状感染だとすると、1人の感染者を見つけるためには、1000人の検査が必要になる。まさに、中国が採った戦略だ。」

(東洋経済)


しかし、中国が行っているしらみつぶしは、1人を見つけるために1000人に行う、という単純なものではない。単に検査をするだけでなく、地域(地域と言っても東京に匹敵する1100万人の人口の武漢市まで)をまるごと閉鎖して、その全員をPCR検査してるのだ。


前記のとおり、散発的に無作為に検査を増やしても、網がかからないやり方では、非検査者は野放し。これと異なり、中国は囲い込むような封鎖を伴って超大量のPCR検査を行っているから効果があるのだ。それが日本で可能か?

また、検査数と迅速性も桁違い。最近の例では北京市朝陽区で1人感染者がでたら、その日のうちに周辺区域の23万人全員を検査して陰性確認したとのこと。1人を見つけるのに1000人どころではない。実際には23万人を一気に行っている。当然、何の予告もない地区閉鎖も伴っているはずだ。


こうした強権的なやり方は、法的にも人員的にも日本では不可能。そして、ただ「闇雲に」検査数を散発的に増やしも意味はないのだ。


結論として、抗原検査という迅速で安価な検査方法も一般化している今、ドイツ・イギリス・カナダと同じ効率を上げている現在のPCR検査を拡大する必要はないだろう。端的に言って費用と資源の無駄遣いだ。