コロナ感染と血栓。PCR検査や、アビガン・レムデシビルなどの新薬にマスコミや一般の注目は集まりがちだが、患者を助けるためにより重要なことは、むしろ「コロナ感染が血栓を呼ぶ」ことに関する医学的知見が集まり始めたことだ。

 

 今回のコロナウイルス・パンデミックは、初期と現在では様相が違う。疫学系の医学者の方との意見交換や感染が蔓延している諸外国の情報をまとめると、以下のとおり。

 

・初期はおそらく静かな病態のS型が東アジアでサイレント感染を広げ、より激しいL型が武漢を中心に猛威を振るい、いったん収束した後、欧米で新しい遺伝子タイプのコロナウイルスが広がった。それが日本に上陸して3月中下旬からの急速な感染拡大を招いている。

 

・一方で、特にその欧米型のコロナ感染で問題とみられるのが「血栓」を生成すること。

「COVID toes(コロナのつま先)」と言われるつま先や手指に赤や紫の変色がみられることはかなり前から欧米のメディアが伝えていたが、このところコロナ感染者が血栓症で足を切断したり、若い人が脳梗塞を起こすという報道が相次いでいる(FNNAFP)。

 

・ここで思い起こされるのが、ニューヨークでは人工呼吸器に繋がれた患者の90%近くが死亡しているという事実(Newsweek)。ニューヨークでは人工呼吸器に害があるので酸素投与だけにすべきという議論がなされていて気になっていた(YAHOO)。これも呼吸状態の悪化が肺血管が微少血栓により塞栓したことによりもらされたものだとすれば、人工呼吸器が無効というのもうなずけることになる。

 

 日本でも突然死や急激な悪化が問題になりつつあるが、この「血栓」に対する対応は是非とも必要である(本日の参院予算委員会で、国民民主党の森議員が関連質問を行い、加藤厚労大臣が具体名は述べなかったがマーカーの測定に言及した。質問者も答弁者も待機場所にじっとしていることにより二次的に生じるエコノミークラス症候群のような合併症と捉えて(というか混同?)いたような節はあるが、国内の治療機関も政府も注目し始めているのだろう)。

そして、その対応はそんなに難しいものではない。

・この答弁にあるマーカーがDダイマーを指すのだとすればそのとおりで、血栓の兆候をダイレクトにつかむのに必要なのは凝固系に関する血液検査(Dダイマーなど)。

・症状面からつかむとすれば、呼吸状態の悪化を簡単に把握できるパルス・オキシメーターの装着。

(どちらも実施が簡単であまり費用もかからないから、感染が疑われるのであればできるだけ早期から検査や装着を始めるのが望ましい。)

・また、血栓を予防するには、ワーファリンの内服やヘパリン点滴などの薬物治療を行えばよいが、これも安価で一般的な治療でどこの施設でも簡単に可能(もちろん易出血性の持病がある方などには注意が必要)なもの。

 

 以上により、今までの医療面でのコロナウイルス感染症対策は根本的に改める必要がある。仮に今まで見落とされてきた血栓生成が、欧米タイプのコロナウイルスの病態の悪質性の本質とすれば、これに対する治療と検査を充実させることが全体の成績を上げ、医療機関の負担を軽減させて医療システムの維持につながるからだ。

 そして今、日本で感染拡大し始めているのも従来のS,L型ではなく、欧米タイプであることは国立感染症研究所の調査でもわかっていることだからだ(TBS)。

(なお、仮に以上の知見が誤りであったとしても、初期段階での治療拒否はいつまでも続けられるやり方ではない。今回のコロナウイルスとは今後も末永く付き合っていくしかないからだ。)

 

 まず改めるべきは、「4日間の自宅待機」。

この4日間の待機中に血栓が生じ、急な転機となって死亡したと考えられる事例も相次いでいる。よって、治療法がないので取りあえずは自宅待機とした今までのやり方は、もう意味も説得力もなくなったというのが現状なのだ。

 

 では、どのように医療体制をシフトし、4日間の待機などをなくして軽症者からの治療を可能とさせるか。ただしここでは、医療機関での医療者や疑い患者同士の二次感染防止ということは考えなければいけない点として残っている。また、特に重症者の医療施設のパンクや一般病院での院内感染はなんとかしなければならない。

 しかし、逆にいえば、こられの点をクリアすることができるように医療体制をシフトし、医療システムさえ維持できればこのコロナウイルスとの戦いが中長期化しても社会は維持できる。無症候感染者を含めれば死亡率は感染者の0.5%以下というのがニューヨークの抗体検査から導かれているからだ。

 

 以下、上記の観点を踏まえた「コロナ・シフト」についての提言をさせていただく。

(血栓に加える知見として、アビガンやレムデシビルなどの有効性が確認されそうであるし、

また、CTによって特徴的な所見が得られることは既に日本の医療界でも浸透した知見となっていることも前提とする)

 

・コロナを疑わせる症状のある患者専用の感染症外来を各都道府県に最低1つ、大都市では複数に設ける。

・上記専門外来だけで賄えない需要を満たすため、コロナ専門オンライン診療施設を早急に拡充し、国がシステム導入のノウハウや費用を支援する。

・オンライン診療と、東京で医師会が設置したような「PCRセンター」や、「血液検査センター」、「CTセンター」を設け、二次感染防止と早期診断・治療を両立させる。

・PCR検査には偽陰性の問題もあるため、PCR検査を経ない疑い診断(味覚・嗅覚障害、コロナのつま先、発熱や咳などの症状を組み合わせた臨床判断)でのパルス・オキシメーターの装着(指先に小さい機械を挟むだけ)や、抗血栓薬の予防処方を行う

 

 書いてみれば、たったのこれだけである。国民の不安やコロナとの戦いに勝利するために必要だ、とのやる気さえあれば多少の困難があっても克服できるものであろう。

 

 そして、これこそがコロナとの戦いに希望を持たせ、社会が通常に戻る一番の早道なのではないか。

 果てしない外出自粛や休業補償などと比べれば、どちらがコストがかかならいのか、誰の目にも明らかだろう。そしてコストなどよりももっと大切なこととして、国民の安全と安心に寄与することは間違いない。