下衆の勘ぐりという言葉がある。小池都知事が東京都知事選を見据えてスタンドプレーに走っているというバッシングはまさにこれ。

確かに都知事はオリンピック延期決定とほぼ同時期より,新型肺炎感染増大を警戒する発信を強めた。ただし,欧米での感染爆発が明らかになり,同時に欧米からの入国者・帰国者の感染発覚が相次いだ,という社会情勢の変化もそこにはあった。

仮にオリンピックの重しが取れたことによって自由度が増したという背景があったとしても,あの時,従前からの姿勢を守って発信を行わなければ事態はさらに悪化していただろう。まさに「改めるに憚ることなし」,だ。

 

その手のことを言って批判している記者らは,外国の情勢をきちんとフォローしていたのであろうか?今から1,2ヵ月前,他ならぬニューヨークでは新型肺炎など対岸の火事。NHKの「キャッチ!世界のトップニュース」では,現地在住のリポーターがのんびりとまさに他人事として捉えているニューヨーカーの姿を報じていた。

そして,2週間前のニューヨークの感染者数は212人。3月25日の東京の感染者数と同じだったという(livedoor news)。私はこの1ヶ月ほど毎日世界の感染者数をチェックしているが,アメリカは1000人が翌日3000人,その翌日は5000人という感じで一日当たりの感染者増大数が2000人ずつ増えていき,昨日はなんと1日で2万4000人も増えて国全体では18万8000人。明日には20万人を超えるだろう。

 

こんな時は,仮にオーバーアクションに見えても,トップが強いリーダーシップで直接国民あるいは住民に呼びかけるべき。

日本のメディアではあまり報じられなかったが,ドイツのメルケル首相,イギリスのジョンソン首相は自らの言葉で説得力のある呼びかけを行い,これを視聴した一部の日本人も高く評価している。

そしてニューヨーク州のクオモ知事は,強くはっきりとした表現で危機的状況を率直に語る記者会見を毎日行っており,現地での評価も高い(DAYLYSUNNewsWeek)。

小池都知事も,あえて目新しい言葉「ロックダウン」「オーバーシュート」を使って,一時確かに緩んでしまった空気を引き締めようとしたのであろう。そして,それは成功した。

連日の会見に新味がない,などと批評する向きもあったが,今の東京が,都知事の連日の会見が必要な瀬戸際に立っていることを理解していないが故の批判であろう。

 

知人の免疫学系の大学教授によれば,今回の再流行は中国や韓国,そして日本で流行したS型,L型とは異なる欧米からの変異型ウイルスによるものとみられ,だからこそ帰国者からの感染が相次いでいるとのこと。味覚・嗅覚障害や若年層の重症化もそのウイルスの特徴である可能性もあるとのこと。

 

今は,政治的な思惑によってリーダーの足を引っ張るの時ではない。

「ニューヨークの惨劇を東京で繰り返すな!」を合い言葉に,感染症法・新型インフルエンザ特別措置法における東京都の感染拡大防止の実質的な最高責任者・小池都知事を皆でもり立て,都民,国民を守るべき時だ。