先の国会でかなりの反対があったことを押し切り,入管法改正という形で,事実上いわゆる単純労働の範疇に属する職種の外国人労働者の大量受け入れ(5年で35万人)と永住権付与(最長5年とはされているものの期間の延長1回で10年の定住要件を満たす)に途を開く法案が成立した。これについて,移民受け入れは経済を活性化させて日本人雇用にもプラスなのに消極的なのはなぜか,と経済的観点からパックンがプレジデントオンラインに寄稿されていたので,それに関連して若干の考察をしてみた。

 

移民の受け入れが経済的にプラスになることはあまり議論するまでもないところ。アメリカだってヒスパニック系の移民流入及び彼らの多産が出世率を引き上げ、先進国で唯一人口が未だに増え続けていることがGDP不動の世界一位を支えている。あれだけ経済発展した国において,3億人の人口が,まだ4億人に向けて伸び続けるというのだから驚きだ。

だが,日本において最近成立した入管法改正による事実上の単純労働者受け入れ及び永住権付与に道を開いたことの問題点は別のところにある。類似性の少ない言語と島国という地理的環境そして歴史的に鎖国が続いていたという特徴から,外国人と接した経験が少ない日本人は少なくない。こういったことを踏まえれば,外国人労働者の方とwinwinの関係を築いていきたいのであれば,日本語教育や,日本社会の慣習などを丁寧に学んでもらう機会を受け入れにあたって設けることは当然必要だ。

私の法律事務所に昔在籍していた事務員さんは,学生時代に富士山でバイトしているときに知り合ったドイツ人の方と結婚し,ドイツに在住しているが,ドイツ語の学習が必須でそのための受講が大変だ,と前にぼやいていた。そのぼやきのとおりで,ドイツにおける移民への教育姿勢は徹底しており,言語などの統合コースは当初600時間以上だったものが900時間までに延長され,終了テストまである。さすがドイツ,という感じだ。

これに対して,先の入管法改正にあたっては外国人受け入れにあたっての環境整備も事前には具体的に計画されていないばかりか、受け入れにあたっての具体的条件はすべて省令に丸投げ,法案をみてもイメージすら掴めない。今までの国策を180度転換するに等しい実質的な移民法が,国民に対しても国会に対しても不意打ち的進められたのであった。

さて,入管法改正を待つまでもなく,実は今までも技能実習生に加えて外国人学校などに在籍する留学生が労働者として活用されていた。現段階においても,既に127万人の外国人の方が労働者として日本の社会を支えてくれているのである(日経新聞)。特に留学生の方々については、彼ら自身にとっては大変ではあったであろうが日本語を学ぶ機会が必然的に伴っており,日本語能力が同時に醸成されていた。前記記事にあるとおり日本で働く外国人労働者の方は中国,ベトナム,フィリピンなどアジア系と日系ブラジル人が中心であったことも相まって,その日本語能力が今まで大きな摩擦を生じさせることなく外国人労働者が日本社会に溶け込む要因となっていたことは想像に難くない。

だが,こういう縛りが外されていく今後はどうなるのか。

単に経済面のみをみて労働力として受け入れるだけではなく、外国人も日本人も幸せになれるよう、国が日本語教育など責任ある環境整備をするべきなのである。