ゴーン氏の弁護人に弘中弁護士が就任された。村木さんや小沢さんの事件など数々の国策事件で無罪を勝ち取られた日本最強の刑事弁護士の一人だ。

日本ではあまり意識されていないが、弁護士には腕がある。それは元検察幹部だったりなどという経歴とは関係がない。まさに「包丁一本」で渡り歩くような世界であり、実績だけが頼りになる判断基準だ。

ゴーン氏の前弁護人は元検察官の大物だったようだが、そのような基準で弁護人を選ぶと、ろくなことがないことは元検事総長をずらりと揃えたロッキード事件でわかりきっていること。日本ではなぜか弁護士には腕の差があることが意識されていないが、同じ専門職である医師には腕がありゴッドハンド級からそうでもない級まで色々であることはよく理解されていること。それは弁護士稼業でも同様。アメリカでは弁護士の腕次第で結果が分かれることから、裁判の沙汰も金次第であることは庶民から大企業に至るまで意識されているところである。

さて、この事件の危うさは以前から指摘させていただいたところである。だからこそ、この事件の帰趨は日本の刑事司法制度の前近代性と共に国際的にも注目されているところなのだ。したがって、この事件について、裁判でどんな攻防がなされるのか、今から本当に興味がわくところ。こういった点について海外では裁判の面白さが理解されており、公判中の攻防がそのまま報道されるが、日本では残念ながら入口と出口しか報道されない。過程にこそ醍醐味があるのに、結果だけを知っても理解度は半減、もったいない限りだ。今回のケースは、そういった報道の底の浅さも含めて、日本の司法の在り方を根底から改革するチャンスでもある。なぜここまで無理な逮捕や起訴がなされたのか、その謎の解明も、ゴーン氏の無罪主張が認められるか否かにかかっているところだ。弘中弁護士の手腕に期待したい。