3月末から4月初旬にかけて、仕事に忙殺されていて、気が付いたら新年度が始まっていました。桜の花も散り際だし、時間の感覚が抜け落ちてしまってますね。

ヨシミアーツの「横溢-柿沼瑞輝展」がよかったです。
柿沼氏とは、以前1,2回会ったことがあるのですが、今回はかつてない大作に挑んでいて、まずはその姿勢を評価してあげたいです。

というのも、以前は小品が多くて、それはそれで密度のある良い作品だったのですが、やはり作家の力量を知る意味でも大きな作品に取り組んでほしいと思っていたからです。


で、出来あがった作品は、ご覧のようにとても綺麗で迫力があり、絵画的な空間性を豊かに持った秀作です。


小品も相変わらずいいです。


これが、今回の一押し作品かな。カンバスを燃やしたり、いろいろなことを画面上で試みているのですが、引いてみると、とてもロマンチックな色彩美に溢れている感じです。

道向かいにあるコウイチファインアーツでは、「山江真友美-名残り-」展を見ました。
単行本の表紙にも使われている人気作家?



カンバスに絵の具を何層にも塗り重ね、表面を鏡のようにツルツルに仕上げた作品は、優雅で可憐な花のイメージにぴったりです。




もっと他の色も使って欲しいなと思うのですが、ストイックな作家なのでしょうね。一貫した色の使い方です。

最後は、以前にも一度見に行った信濃橋の橘画廊で開催中の「加茂昴展」。





なんと、橘画廊は近く東京へ移転してしまうのだそうで、せっかくいい画廊が見つかったと思ったのにショックです。大阪での見納めとなってしまいました。
春を思わせる陽気の中、和歌山県立近代美術館へ「宇佐美圭司回顧展:絵画のロゴス」を見に行ってきました。1月の村井正誠展に続き、今年2回目です。


大阪に生まれ、戦後一時期和歌山市に住んでいたことから、この美術館でも15年前に、一度大規模な展覧会をやっているのですが、その後、2012年にご本人が急逝されたため、今回は回顧展となっています。




一番古い作品は1959年、作家19歳の時の作品です。東京藝大を目指しながら不合格となり、失意の中から独学で勉強を始めた、その出発点に当たる作品です。
そして、1960年代前半までは、当時の抽象表現主義の影響を受け、オールオーバーな抽象絵画が主流となるのですが、転機となったのが、1966年のNY旅行でした。


その年に描かれた作品には、分かりにくいのですが人の形が現れています。ここらあたりが、宇佐美絵画の大きな転機になったのでしょう。


そしてほどなく、作品は大きな変化を遂げます。雑誌「LIFE」で偶然目にした黒人暴動の写真のポーズを切り抜き、それらを繰り返し構成的に組み合わせた、宇佐美絵画の誕生です。




その後、宇佐美の絵画には生涯、この人物像が登場するのですが、晩年に行くに従って、らせん状の構造を取るなど、画面はどんどん複雑化していきます。


壮大なスケール感は、個人的には、ミケランジェロの「最後の審判」を連想します。とにかく、再晩年まで、宇佐美の筆力は衰えることを知りません。非常に卓越した作家であったことが分かります。
和歌山だけの展覧会ですので、見に行く価値ありますよ!

月曜日は代休日でお休みでした。

午前中、近所のタリーズへ行き、締め切りを既に2日過ぎている原稿の執筆にとりかかりました。
そうしているうちにお昼になったので、ご覧のとおりのパンケーキを注文。


バナナと生クリーム、チョコレートまで乗っかってて美味しかったです。
でも、これでお腹が膨れてしまい、結局、原稿執筆は未完成のまま終了。

散歩を兼ねて、義父が眠る宝塚の中山寺までお墓参りに行ってきました。


これが山門。仁王像が立ってます。

ちょうど梅の花が咲いているとの情報を得て、お寺の奥に広がる梅林に行ってきました。


5分咲きといったところでしょうか。でも、色とりどりの梅が咲いていて綺麗でした。


お天気は曇りで、少し肌寒かったのですが、ちょっとしたハイキング気分に浸れて気持ちよかったです。


中山寺の境内からは、遠くあべのハルカスまで見渡すことができ、景色も最高。
ただ、この日は兵庫県警のヘリコプターがずっと頭上に止まっていて、そのうちおまわりさんまでやって来て、なにやら捜索中の様子。脱獄犯でも追っているのかと、気になって仕方ありませんでしたよ。

気が付いたらまた日にちが経ってました。2月は早いです。

今日は午前中、大阪大学豊中キャンパスで1回きりの講義をしてきました。お題は「社会、技術の変容とアートの役割」について。基礎工学研究科の先生のお招きで、工学部の学生に現代アートを語るという試みです。

とりあえず、先週東京出張の折に見た3つの展覧会をテーマにからめて紹介しました。


ひとつめは、オペラシティで開催していた「サイモン・フジワラ ホワイトデー」から。
日常的な事物の背後にある物語や歴史性について。ネオコンセプチュアリズムについて説明し、個別の作品について解釈をこころみました。


一見、ただ割れた陶器にしか見えない作品。しかし、この背後には彼自身の出自に関わる、イギリスと日本との文化的交流の物語が秘められています、みたいな話です。


こちらも、ただの靴にしか見えない作品。しかし、そこに込められたデンマークとナチスドイツとの因縁。フジワラの作品は、一筋縄ではいかない現代アートの見方の格好の事例でしょう。

次に紹介したのが、資生堂ギャラリーで見た「川久保ジョイ展」から。


カラフルなカラー写真にしか見えないこの作品。実は放射能汚染された福島の土中にフィルムを埋め、数か月間感光させた後、現像したものです。放射線量の差が異なる色彩となって表れるのだそうです。まさに、科学技術と社会問題、そしてアートとの関係性を示す作例だと思います。

そして、最後に紹介したのが、横浜美術館で開かれている「村上隆のスーパーフラットコレクション」展です。


テーマは「アートと経済」、あるいは「交換価値としてのアートの価値」、あるいは「アーチストによるアートコレクション」etc.。いろいろ突っ込み所のある展覧会でした。


村上隆のよる骨董コレクション、というのも面白いテーマだと思います。アート市場の現況、等価価値としてのアート作品といった、現代アートを取り巻く状況がよく表れています。


そして村上作品との交換によって集められた最先端の現代アートの作品群。美術の専門外の学生たちに、アートの重要性が上手く伝わったでしょうか。日本の将来を担う阪大の学生たちに、少しでも刺激を与えることが出来たならいいのですが。

90分間、熱弁(!?)をふるい、へとへとになってキャンパスをあとにしました。



週末と週明けに二つの展覧会のオープニングに行ってきました。
一つめは土曜日の夜にコウイチファインアーツであった「横尾美美展」のレセプションです。


横尾美美さんは、言わずと知れた横尾忠則の娘さんです。コウイチファインアーツでは、5年ぶり!の個展ということで、狭い空間に大勢の人が詰め掛けました。


右端が美美さんです。前回よりも若くなられたような! 実際おいくつになられたのでしょう? 年齢不詳ですね。ただ、若い頃の横尾忠則さんに、とっても似ておられます。


作品はすべて新作です。花をモチーフにした小品が多かったですね。大変ビビッドな色彩で、つぶつぶとしたマチエールが独特です。


こちらは唯一の大作。大きすぎるため木枠を外して展示してありました。

さて、一昨日月曜日には、京都国立近代美術館で「母衣への回帰 志村ふくみ展」の内覧会がありました。
去年、文化勲章を受章されたこともあり、和服を着たご婦人方を始め、大勢の人で賑わう、華やかな会場となりました。




ただ残念だったのは、肝心のふくみさんが当日体調を崩され出席されていなかったことです。代わりに娘さんの洋子さんがごあいさつをされました。




展示はとても綺麗でしたネ。着物を着る習慣も愛でる趣味もありませんが、京都の街にぴったりの雰囲気に思わずため息が出ました。
レセプションでは、ギタリストの村治佳織さんの生演奏もあり、綺麗な装丁の図録をいただいてご機嫌で帰ってきました。