近鉄吉野線の前身が、吉野軽便鉄道と呼ばれていたことを知った。それなら、その痕跡を探してみたい。そこで、コツコツとウオーキングがてら探索してみた。
吉野軽便鉄道(よしのけいべんてつどう)とは、現在のJR和歌山線吉野口駅から近鉄六田駅までの区間に、大正元年に開通したものである。現在は、近鉄である。
痕跡探しのスタートは、薬水。奈良県で有名な土木遺産である薬水拱橋があるところである。以前訪ねたが今回は徒歩で探索した。
たしかに、ベースが軽便鉄道なのでアールがきつい。
薬水の駅は、立派な高石垣の上に造られている。その前面には、抑え壁がコンクリートで施工されている。城にしか見えない。
確認したら、どうもここに変電所があったみたいである。これだけで、立派な土木遺産と思える。
吉野方面へブラブラと歩いていく。レンガ造りの重厚なアバットをもつ、谷奥橋梁に出会った。
本当に見事なレンガ造である。
この路線の特徴は、コーナー部をR処理していることだそうだ。その他は、普通のイギリス積みと思われる。もしかしたら、このコーナーの積み方で、イギリス積みとオランダ積に別れるので、もしかしたらイギリス積みではないかもしれん。
福神駅手前の排水路トンネルもレンガ積み。
線路に対する斜角がきついが、坑口をせり出す事で解決している。(河川進行方向に対して坑口を直角に施工)
明治末期の施工であるが、こちらもしっかりとしている。
下市口で待ち合わせをしている時に、ふと駅裏をみたら、使用されていない待避線と、ホームらしき遺構を発見した。駅員さんに聞いたところ、やはり吉野軽便鉄道の遺構の可能性があるとのこと。
越部から六田間には、ひっそりと隠れてレンガ橋台がある。
こちらも、コーナー部がR加工されている。かなり奥まった、人知れずある橋梁にも美しさを求めている。設計者のこだわりを非常に感ずる。
そして、大正元年の終着駅、六田駅に到着。ここは、『むだ』駅だ。「むだ~むだ~」
吉野軽便鉄道の発着駅場所を発見する。
今は、鉄道として使用されていなく、駐車場として使用されている。ホームに丸石積みが施されている。
エンドストッパーを発見。これで、吉野軽便鉄道を探すウオーキングは完了。
あっ。河道としてのレンガアーチ橋梁を発見した。
現在の近鉄吉野線は、軽便鉄道線路を改良しているので、曲率半径が非常に小さな区間が続出している。また、明治末期の施工で、大正元年に開業してから、土木構造物は痛みもなくしっかりと構造を保っている。
おそるべき、土木技術力である。
by Taro Wariishi