戦前から祖国日本を離れて米国で生活し、その後大東亜戦争勃発と共に敵性人として不当な扱いを受けた日系人の葛藤が知りたくて、昭和59(1984)年にNHK大河ドラマとして放映された「山河燃ゆ」の前半DVDを柳沼秀夫さんのご好意によってお借りし、拝見させていただきました。

原作は「白い巨塔」などでお馴染みの、山崎豊子さんの「二つの祖国」という事もあって、常に手に汗にぎる展開で非常に面白い内容でした。

東京国際軍事裁判では日本人が嫌がる通訳を引き受けた、主役の松本幸四郎さん演じる天羽賢治氏が日本の大学へ留学中の2・26事件の頃から物語はスタートいたします。

大学卒業後は、米国にある実家に戻るものの時は世界恐慌で米国で人種差別を受ける日系人に職はなく再び日本へ。

そして、英語も日本語も堪能な事から日本での外国通信社での記者生活を送る事となりますが、時にシナ大陸では日中がきな臭い情勢という事もあって現地取材するようになり、そこで観た抗日運動。日本の特高などによるスパイ疑惑など不当な扱いも受けます。

その後、日本政府から国外退去命令が出てしまい、米国に戻るも時に大東亜戦争に突入し、日系人に対する不当な収容所生活が始まるものの、収容所内の親米派と親日派の争いに巻き込まれるなど、壮絶な状況と様々な葛藤の中で苦労された日系人の物語にくぎ付けとなりました。

ただ、やっぱりNHK。

山崎豊子さんの原作を読んでいないのでわかりませんが、脚本でどれ位内容が変わったのかこの大河ドラマを素直に観れば、軍人や特高を始め戦前の日本はロクでもない国だと思う内容。

共産主義者も悲劇の弾圧者としてしっかり美化されておりました。

写真の通り、日本人居留民が虐殺された「通州事件」も「日本軍が悪いから」と無辜の民間人が虐殺されても、日本軍が悪いからと片付けられておりました。

第二次上海事変についても、実際は大山勇夫海軍中尉と斎藤與蔵一等水兵が中国保安隊によって射殺される事件が起こり事変にむけて挑発がエスカレートしたのですが、ドラマの中では、元日本兵が中国保安隊のふりをして日本人の民間人を射殺し、戦争がやりたくて仕方のなかった日本軍の謀略によって上海での戦争が始まったというストーリー。

これにはさすがに驚きました。

実際は上海に居留していた邦人保護のため、わずか4000名程度しかいなかった日本の海軍陸戦隊に対して、ドイツ軍の指導により近代化された5万人の中国国民党軍が相手は弱いと判断して挑発をかさね、日本人居留地区だけに絞って先に戦闘を仕掛け空爆までしたのが真実です。

ストーリーの面白さ、若かりし頃のケントギルバートさんなどの出演を懐かしむ事も出来、また激動の時代を生きた日系人の葛藤を知る貴重なドラマとして楽しめる反面、フィクションとは言えNHKならではの着色で、歴史が歪曲されていて自虐史観を国民に植え付けるプロパガンダ作品でもあると感じました。

いずれにしても食い入るように観させていただき、DVDを貸してくださった柳沼さんに感謝申し上げます。