カンヌ受賞!ジュリア・デュクルノー監督の衝撃作『Titane』はボディ・ホラーのネクストレベル | Just for a Day: 小林真里ブログ

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映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

傑作『RAW 少女のめざめ』監督、ジュリア・デュクルノーの

最新作『Titane』について、そろそろ書いておきます。

 

あまり、ネタバレはしてません(多分)。

 

 

子供の頃に自動車事故に遭い、頭部にチタン(titane)を

埋め込まれた少女が大人に成長してシリアルキラーになりました。

 

という設定だけで既にインパクトが

大きすぎるのですが、それはただの触り(導入部)で、

実はジュリアが敬愛するデヴィッド・クローネンバーグの

『クラッシュ』『ビデオドローム』『ザ・フライ』、

さらにはロマン・ポランスキーのあれと、

よくよく考えるとフランク・ヘネンロッターのあれ

(ネタバレになるので両タイトルは伏せます)

からの影響が顕著なボディ・ホラーです。

しかも、そこから予期せぬ方向に物語は転がり始めます。

 

車に取り憑かれた女性が主人公の

ワイルドで官能的でセンセーショナルな衝撃ホラーですが、

もはやジャンルのカテゴライズが不可能というか

無意味な、自由に満ちたフリーキーでフレキシブルな逸品で、

前作同様フランス映画らしい文法とリズムを有しつつ、

根底には独特のユーモア(見ながら何度も爆笑した)

とペーソスが込められており、カッティングエッジ。

 

独創性という意味では、さらなる大きな壁を

豪快に突き破ったなと感服した次第。

一人のアーティストとして大きく飛躍を遂げた

大胆で勇猛果敢な、非常にエクストリームな野心作です。

ジャンル映画の最先端をいく他の追随を許さない、

唯一無二の進歩的でパンクな映像作家。

 

スタイリッシュで繊細でリリカルなカニバル青春ホラーだった

『RAW』とはテイストは大きく異なりますが、

一人の女性の変異、メタモルフォーゼというテーマは

大きく共通しており、これはジュリアが

監督として初期から一貫として描き続けたものです。

ここに彼女の強い信念とこだわりを感じないわけにはいきません。

「自動車事故」という出発点もこの2作の共通項ですが。

ガランス・マリリエールがジュリアとコラボレーション

した過去2作(『RAW』と短編『Junior』)と同じく、

今回もジャスティーン役を演じているのも嬉しい限り。

 

ゴア描写やユニークで印象深いセックスなど結構ダイレクトな

過激描写が少なくなく、アメリカなどでは当然R指定ですが、

これは日本でもR-18は確実なのではないでしょうか。

 

このような個性の強いタブーすれすれの

ショッキングな作品がカンヌでパルムドールを獲るとは、

良い時代になったものだなあ、と改めて感慨深いです。

 

 

 

『ハイテンション』『屋敷女』『マーターズ』

そして『RAW 少女のめざめ』までを取り上げている、

小林真里監督のフレンチホラーのドキュメンタリー映画

『BEYOND BLOOD』はDVD絶賛発売中。

Amazon PrimeとU-NEXTでも視聴できます!

 

『RAW』のカンヌ国際映画祭ワールドプレミア

の時の貴重な映像も収録してますよ。