明日公開!『RAMEN FEVER』小林真里 監督インタビュー! | Just for a Day: 小林真里ブログ

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映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

明日、10月2日にいよいよ、

僕の実質的なデビュー作『RAMEN FEVER』が

公開になります。

 

構想から6年、ここまでは

本当に長い道のりでした。

 

ここで、監督・プロデューサー、小林真里の

インタビューをお届けします。

 

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小林真里 インタビュー by 小林真里 (映画評論家)

 

 

この映画のアイディアはどこから生まれたのでしょう?

 

2015年の11月にニューヨークを訪れた時、

以前2005年から2年弱住んでいた

イーストヴィレッジを歩いていたら、

ラーメン屋の数が増えていることに気づいたんです。

 

「日本のラーメンが一体なぜ? 

これは一体どういうことだろう?

 食を超越した文化的な現象なのでは?」

 

そんなことをぼんやり考えていたら、

突然「ラーメンの映画を作ろう。作らなければいけない」

というアイディアが降りてきたんです。

Epiphany、まるで天啓みたいに。

 

ラーメンが大好きということもなかったですし、

映画作りを学んだり映画を撮ろうと

考えたこともなかったのですが、

このひらめきを直感的に信じて突き進むことにしました。

ドキュメンタリー映画ならある程度一人で、

低予算で作れると思いましたし。

自分は映画評論家としてのキャリアを通して、

インタビューが好きで得意だという自信がありました。

だから、良い対象に出会えれば素晴らしい映画が

できるという確信のようなものがありましたね。

 

どのように映画のメインキャストである

中村兄弟と出会ったのですか?

 

海外マーケットを対象にした作品を作ることに決めて、

リサーチにかなり時間をかけながら、

どういうお店や職人さんを題材にするのがいいんだろう。

と色々候補を考えながら、国際的に展開している

メジャーなチェーンや国内外で有名なお店の方にコンタクトを取り、

お話をさせていただいたのですが、なかなか話が進展せず。

 

そんなとき、企画の段階でしたが、映画を売り込むために

2016年のカンヌ映画祭に参加しまして。

カンヌに着いたら東京のアシスタントから連絡がきて、

AFURIさんから前向きなメールの返事が来て、

映画に興味を持ってくださっていると聞き、

帰国後すぐに会いに行きました。

それが中村比呂人社長との出会いでしたね。

本当に運命的な出会いでした。

 

そのとき弟の中村栄利さんの話を聞き、

すぐに紹介してくださって、

ニューヨークまで会いに行きました。

この時点でアメリカのポートランドに

AFURIさんが出店することが決まっていたので、

映画の着地点をそこに設定しました。

 

伝統的なラーメン職人の方やラーメン以外の

一流シェフの方にも出演してもらいたいなと思っていたら、

栄利さんが仲が良くてリスペクトする

レジェンドといえるシェフの方々、

竹井和之さん、山田宏巳さん、成澤由浩さんを

快く紹介してくださって。

運良く、皆さん出演してくれることになって。

 

これが実質的な監督デビュー作。

 

そうです。同時に製作していた

フレンチホラー・ムーブメントのドキュメンタリー

『BEYOND BLOOD』(2018)が

先に世に出てしまいましたが、

着手したのは『RAMEN FEVER』が先でしたから。

 

ニューヨークで本格的に撮影を始めたのですが、

当初は現地のアメリカ人撮影監督を雇うはずだったのに、

初日の前日に急に来れないということになって。

仕方なく自分で持参したカメラを回したんですが、

結局最後までそのまま一人で撮り続けました。

キモであるインタビューは特に、

ベストなものを撮るために親密に、

なるべく二人きりでやりたかったので、

結果良かったのかなと思っています。

 

初めて映画、ドキュメンタリー映画ですけど、を撮影してみて、

こんなにエキサイティングで充足感が得られるとは

思っていなかったですね。

ゾクゾクするような瞬間が何度もあって。

自分は文筆業が天職だと思ってたんですけど、

ものを作る面白さを知ったというか。

色々とチャレンジングで多くの困難にもぶつかりますけど、

そのぶん喜びも大きいというか。

次は一昨年から準備を進めている、

劇映画での監督業を来年早く体験したいですね。

 

映画の前半はラーメンの魅力と海外での人気、

後半は中村兄弟の物語へと変化をとげます。

 

世界的に広がるラーメン人気の検証、

ラーメンの奥深い魅力、天才ラーメン職人の生き様と哲学。

これだけの題材でも一本の映画に成立したと思うのですが、

それ以上に中村兄弟のドラマを描きたかった。

ちょっと分裂症的ですが、前半と後半でドラスティックに

展開が変わる予測不可能な作品が好きなので、

それもありかなと思って。

もちろんこの映画は劇映画ではなく

ノンフィクションのドキュメンタリーですが、

僕にとって映画は映画なので。

中村栄利という中心人物は一つの芯として、

一貫して映画に登場するわけですし。

 

Slowdiveなど音楽も豪華です。

 

僕の人生において映画と音楽は等しく欠かせない、

とても重要なもので、映画における音楽の重要性も

重々に理解していました。

だから自分の周りの才能溢れる作曲家やミュージシャンたち、

弟の小林純生と、MONOのギタリストのヒデキさんに

オリジナル楽曲を依頼し、自分が最も好きなバンドの

音源を使用できたら最高だな。と思っている中で、

熟考した結果、一か八かSlowdiveに

お願いしてみることにしました。

 

たまたま、映画の出演者のリックモンド・ウォンが

ミュージシャンでもあり、Slowdiveのドラマーの

サイモンと仲が良かったので、彼からバンドのリーダーの

ニール・ハルステッドのメールアドレスを教えてもらって。

ニールは僕にとって神様というかヒーローなので、

メールは数分で書き上げたのですが、

送信するまでに一ヶ月以上かかりました。

断れるのは仕方ないのですが、幻滅してしまうような

返事が来てしまったらどうしよう、と怖くて。

ようやくメールを送ったら、すぐに返事がきて

「ラーメンは好きだし、曲は無料で使用していいよ!」

とまで言ってくれて。まったくの杞憂どころか、

素晴らしい音楽を創る天才というだけではなく、

人格者だということがよくわかって本当に感激しました。

最終的に僕が最も好きな2曲を使用させてもらいましたが、

使用料は払いましたよ(笑)。

 

その後、Slowdiveのライヴに何度も招待してもらい、

ニールのイングランドの自宅にも招いてもらったり、

今でもプライベートで仲良くさせてもらってます。

 

音楽ドキュメンタリーではありませんがロックな映画です。

 

映画の企画開発を進める中で、

ラーメンはエンターテインメント、ラーメンはロック

ということに気づき、ラーメン映画の皮を

かぶったロック映画になったらいいなと漠然と思っていたら、

中村栄利さんはDIYに自分の道を独学で

切り拓いた革新的なパンクミュージシャンのような方で、

実際に昔ギターが好きでプロのミュージシャンを

目指していたこともあったそうで、

他の出演者でも熊沢武士さんが、

かつてバンド活動をしながらプロになろうとしていた

過去があったので、結果的にラーメンを通して

人生を描いたロックな映画に着地したのでは、と思っています。

 

敬愛する映画監督は?

 

デヴィッド・リンチ、デヴィッド・クローネンバーグ、

ウェス・アンダーソン、エドワード・ヤン、

リチャード・リンクレーター、ルチオ・フルチ、

マリオ・バーヴァ、キューブリック、

友人だとパノス・コスマトス、ヴィンチェンゾ・ナタリ、

ジュリア・デュクルノー、

そしてフランク・ヘネンロッターは心から尊敬してます。

 

エグゼクティブ・プロデューサーにはご両親の名前があります。

 

この映画を作ると決めたときに、最初に僕の父に思い切って

相談したら「面白そうじゃないか」と言って快く

製作費を少し出資してくれることになったんです。

そのおかげで映画だけに集中し、作る環境ができたので、

父には本当に感謝してます。

母も献身的にサポートしてくれましたし、

この映画の一番のファンでした。

何十回も繰り返し見てくれて、本当に素晴らしいと言ってくれて。

二人とも3年前に突然、立て続けに亡くなってしまったので、

映画館でこの映画を観てもらえないのが心から残念ですし、

もっと早く公開できなかったことを今でも後悔していますが、

両親には一生感謝してもしきれないです。

父と母がいなかったら、この映画を作ることはできませんでした。

 

あと、中村比呂人さんも栄利さんも

この映画を気に入ってくれたのは、やはり嬉しかったですね。

先日も、中村一家全員で映画を鑑賞してくださったそうで

「改めて、良い映画だと思いました。

中村一家みんながこの映画に感謝してます」と

栄利さんが言ってくださって。

『RAMEN FEVER』は小林一家が作った

中村一家についての映画、と言い換えることもできますね。

 

最後にメッセージをお願いします。

 

『RAMEN FEVER』は、数々の偶然や縁がつむいでくれた、

奇跡的に生まれた作品です。

色んな人たちの想いがつまったこの映画が、

少しでも多くの方に届き、心に響くといいなと思っています。

この映画の製作や公開に携わってくださった方々、

皆様全員に心から感謝してます。

ありがとうございました。