デヴィッド・エアー監督のクライムバイオレンス『The Tax Collector』 | Just for a Day: 小林真里ブログ

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映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

監督、デヴィッド・エアー。

 

『フェイク シティ ある男のルール』

『エンド・オブ・ウォッチ』

『サボタージュ』

 

といった見るからにガラの悪い男たちの行状を描いた

ハードコアなバイオレンス・クライムアクションを

撮り続ける漢(おとこ)である。

 

2012年12月に、『サボタージュ』の

セットビジット取材でアトランタを訪れた時、

シュワルツェネッガーらメインキャストたち、

そしてデヴィッド・エアーにも

インタビューをした。

 

エアーは、L.A.のデンジャラスなエリア、

サウスセントラルのストリートで

サバイブした男だけに、

目がすわっていて、本人もギャングスターみたい、

情熱的な人だな、とひしひしと感じたものです。

 

そして、いつのまにか彼の最新作

『The Tax Collector』

アメリカのドライブインシアターや

配信で公開されてました。

 

 

L.A.の犯罪王ウィザードの部下として、

タックスコレクターとして、地元ギャングたちから

利益の一部を回収する2人の男たちだが、

ある日ウィザードのかつての強力なライバルが

メキシコから帰還、緊張感が高まる。

 

というストーリー。

L.A.の極悪ヒスパニックギャングたちの血みどろな

戦いを描いた、エアー印120%の

ブルータルなクライムアクションドラマだ。

 

エアー史上最もバイオレントで、ホラーばりの

ゴア描写も飛び出すが、シンプル極まりない

深みに欠ける一直線のプロットで、

アクションもドラマも致命的に弱く、

凡庸で、B級感も漂う。

 

アメリカでは、インディのRLJE Filmsが

配給しているという時点で、ある程度の予想は

ついていましたが。

 

シャイア・ラブーフも出演しているが、

ダーティなセリフを連呼するだけの

頼りにならないサイドキックで活躍が乏しい。

主演俳優は無名でインパクトが弱く、

存在感が薄い、というか軽い。

狂った悪役も、他のキャラクター同様に、

どうもキャラクター造形が薄っぺらい。

背景も皆無である。

 

黒人ギャングたちも交えるクライマックスも、

盛り上がりそうであまり盛り上がらず、

これが言いたかったのか!という

肩すかしなツイストのオチも、

唐突で説得力がなく、焼け石に水である。

うーん、残念極まりない。

 

これで3000万ドルのバジェットかあ、

と驚愕したものだが、

日本では劇場公開も難しそうな。

 

監督作『スーサイド・スクワッド』製作途中に

クビを切られてから、その後ウィル・スミス主演の

『Bright』を撮ったりと低迷している

エアーだが、再起が待たれる。