韓国発のマスターピース『はちどり』 | Just for a Day: 小林真里ブログ

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映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

昨日は映画館で、

キム・ボラ監督の『はちどり』と

ペドロ・アルモドバル監督の

『ペイン・アンド・グローリー』を再見しました。

 

両作とも素晴らしい映画なのですが、

そういえば、どちらも監督の

半自伝的な作品なのですよね。

 

特に『はちどり』は、

1994年のソウルを舞台に、

一人の孤独な14歳の少女の生き様を等身大に

リアリスティックに綴った、ただの青春映画ではない

マスターピースです。

 

 

家父長制の男尊女卑がはばかる時代に、

機能不全の崩壊家庭(バイオレント)に

生きる少女が傷つき、トラウマを受け、涙しながらも

心からの理解者との出会いや、淡い恋愛と友情、

時折顔を見せる人生の美しい瞬間に癒され、

なんとか前を見て生を一歩一歩、歩んでいく。

 

当時の社会的な風潮や事象、事件を背景に、

「無関心」(apathy)の恐ろしさと

思春期の複雑さと痛み、

脆さを多くの印象的なエピソードを無駄なく

スムーズに巧妙に紡ぎながら、

繊細にリリカルに描いていて

ひたすら圧倒されました。

まことに素晴らしいです。

 

監督の緻密に練りこまれた脚本とディレクション、

そして無名ながら主演を務めた

女優パク・ジフの感性と演技力にも脱帽です。

 

同じ韓国映画では、

『パラサイト 半地下の家族』よりも好きな作品です。