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映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

『ワールド・ウォー Z』鑑賞。

(以下ネタバレに注意!)


【100%】過剰なライター/翻訳家 小林真里の rock n' roll days



さて、原作小説は全然世界に入り込めなくて

(オーラル・ヒストリーというスタイルは大変苦手)、

読み始めてすぐに断念したのですが、映画はブラボーでした!


開巻5分でゾンビ襲来&フィラデルフィア大パニック!一大ケイオス!

という素晴らしくスピーディーな展開は腕のいい名鮨職人さながらで感服。

主人公一家がビルを逃げ惑うシーンがちょっと『ゾンビ』。

カタストロフィックでドゥームズデイな世界各国を飛び回りながら、

最後まで一気にスリリングにハイ・テンションを保ちながら駆け抜けるが、

クライマックスでギアを一気に落としてリズムをドラスティックに

変えてくる大胆な演出ぶりは、さすがの『チョコレート』『主人公は僕だった』

『君のためなら千回でも』『チョコレート』などドラマに定評がある

マーク・フォースターの面目躍如(『007/慰めの報酬』も素晴らしかった)。

バイオレントで勢いだけの暴走ゾンビではなく、

じっくりとスロウな本来のゾンビの迫りくる恐怖を丹念に描いているのだ。


PG-13なので直接的なゴア描写は控えめで血もそんなに出ないが、


ゾンビ核弾頭(ダイナマイト・キッドみたいでした)!

ゾンビ大ジャンプ!

ゾンビ弾丸ダッシュ!

フライング・ゾンビ!

ゾンビ組立体操!

ゾンビ摩天楼!

ゾンビ・オリンピック!


と、ゾンビ描写のバリエーションが豊潤で眼福。楽しい。爆笑の連続。

クライマックスに出てくる博士ゾンビは『死霊のえじき』のバブ

っぽくて、そのメイクとデザインはロメロ・ゾンビへのオマージュが感じられナイス

(ちなみにゾンビといえばの特殊メイク集団KNBは今作には関わっていない)。

瀕死の怪鳥みたいな声を出すゾンビはなかなか乙である。

ゾンビ映画史上一番足が速くてダッシュ力も最速、最もアグレッシヴ、

生ける屍なのに生前よりもハイパー!

というこれは、サバイバル・アクション系ゾンビ映画の一つの到達点ではあるまいか?


まあ、ブラッド・ピット演じる国連エリートのサバイバルは

ほとんど奇跡みたいなもんで、

説得力なんてあったもんじゃないが、でもいいんです。

世界を飲み込むゾンビ黙示録に対抗するには、こんな英雄が必要なのだ。

フライト中の機内に、毒蛇とか幽霊じゃなく、

ゾンビが出てきたらどうなるかな・・・戦慄大パニック!

というシーンもやっぱり面白いし。


7週間の追加撮影が行われ、エンディングが変更になったため

マシュー・フォックスをフィーチャーしたロシアのシーンなど大幅にカット

されたようだが、2時間以内ですっきり腹9分目のほどよい満腹感を持たせ

次作への飢餓感を植え付けてくるあたり、『マン・オブ・スティール』とは違う

長期的な視野と余裕を感じる的確な大人の判断が下された映画と言えよう。


時間の経過を待たないうちにこんなことを言うのは時期尚早だが、

『REC/レック』『28週後...』以来の傑作ゾンビ映画と言ってもいいかもしれない。


とにかく、今年のサマームービーの中でベストな超大作だ!