デヴィッド・リンチ新作『Inland Empire』を観た!! | Just for a Day: 小林真里ブログ

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映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

 久々です!

やっと自分のPCが使える環境にきました!


1月10日。


暖冬のはずのニューヨークでしたが、
やはり天候が気まぐれなのもこの街の特徴でして、
昨日はマイナス。しかも初雪を観測。
午前中外に出たら、吐息が白くて焦った。
冷気で耳が切れそうでありました!
切れた耳が!芝生の上に!転がって!

朝からリンチ・モード全開!!

昼間は終始街中を歩いて回って、夜は2007年
一本目の映画を鑑賞。

ずばり、生涯の映画作家であり敬愛なる
デヴィッド・リンチ新作
『Inland Empire』。

彼の全フィルモグラフィをこよなく愛しているわけだが、
前作『マルホランド・ドライブ』公開時には
超長文のレヴューも当時連載を持っていた映画サイトに
書き下ろした。
社内試写観て、さらに配給会社からもらった
ビデオ3回観て、さらに劇場で3回観た。
観れば観るほど異なる視点から観られて、発見があって、
中毒になった。

今作『Inland Empire』の作品紹介については↓参照。
http://ameblo.jp/masato-ny/entry-10020882838.html

NYCでは、グリニッチヴィレッジのIFC Center1館のみで
先行上映中。
日が暮れた5時半過ぎ劇場に着く。
闇の到来と共にリンチ・アワー到来。
小学生時の自分の如く興奮しながら一番乗りした。
そして、6:10の回を鑑賞。場内は、6割がた埋まった。

オープニング。
轟音と共に飛び出してくるそのタイトルを観て、
一気にリンチ・ワールドへ引きずり込まれる。
3時間のローラ・ダーン劇場。

映画の内容自体は、ある程度予想していた通り。
しかし。
今作は、これまでのリンチ作品の中で一番難易度
ハイレベルで集大成的なリンチの頭の中が全開。
メビウスの輪の如き終わりの見えない、幾重にも重なる
複雑怪奇に広がるミステリアスの宇宙に唖然とするばかり。
映画の中のキーワードからも『マルホランド・ドライブ』
の延長戦上と言えなくもないが、
まだ『マルホランド』のほうが圧倒的にシンプルに
感じられる。

衝撃度の高さ(サプライズの多さ)と
暴力性の高さでは、近年のリンチ作品では一番だろう。
ユーモアよりも、バイオレンス指数が上なのだ。

時をかけまくる少女=ローラ・ダーンの怪演は、
強烈なインパクトを残す。
『ワイルド・アット・ハート』や『ブルー・ヴェルベット』
の彼女は、序章に過ぎなかった。
登場人物のアップが目立つ作品であり、面白い顔をする
キャストが多いのがまたこの作品の特徴。
全篇で手持ちカメラを使用しているが、やはりそれは
一長一短で、メリットもデメリットも多かった。
遠目のショットだとその画像の荒さと非現実感から
距離感を感じるときも、多々あった。

ちなみに、裕木奈江はなかなか狂った役で
しかもセリフも多くて相当オイシかった。
既報どおり、英語のセリフをラピッドファイアの如く
まくし立てるのだが、英語字幕がつくんだよ!
ローラ・ダーンも絡めたこのシーンは、
映画のハイライトの一つだ。
Beckの『ブラック・タンバリン』がかかるし!

クセのありすぎるキャラクターの多さも
この映画の特筆すべき点だろう。

扉の向こう側の世界は天国なのか地獄なのかワンダーランド
なのか。

快感度数に関してはまだまだ未知数。
散りばめられたパズルのピースは、時空やキャラクターの
アイデンティティを超越して、その形を変えながら、
リンチの宇宙の中を飛び回る。

もう一度劇場に足を運び、改めてこの映画の凄さを
解析したい。
ずばり、アディクトの、一歩目。

ちなみに、この上映館では、
「9回観たら、10回目は入場料無料」という、
あまり現実的でない話題性にもならないキャンペーン開催中。

うん!それは無理だから!