デヴィッド・リンチ超待望の新作
『Inland Empire』が
いよいよアメリカで公開される。
今作のストーリーだが、
「A Woman in Trouble」
とポスターに書かれているように、ローラ・ダーン
演じる主人公が時空を越えて！キャラクター名さえも
次々に変わって！トラブルに巻き込まれまくる、
「現実を超越した、ダークでディープでミステリアスな、
でもユーモラスで幻想的な、いつものリンチ節炸裂映画」
であり、つまるところ、
あっちもこっちもにっちもさっちもローラ・ダーン状態
である。
そもそも、最初に登場するローラ・ダーンが演じるのは
映画女優。これがこの映画のキーである。
変幻自在のカメレオンである女優を生業とする女性が
恋に落ち、数々の壁を越え場所を変え変身していく様を
想像するのはリンチ・ファンからすれば容易なことだろう。
しかし、そのローラ・ダーン演じる数々のキャラクターの
波乱万丈奇々怪々なジャーニーのプロセスと行く末は、
リンチのみぞ知る。
この（上映時間）３時間のローラ・ダーン・ワールドを通じ、
新たなるリンチ・ワールドを我々は体験することになる。
「ハリウッド・ドリームの栄光と影、成功と転落」を、
ナオミ・ワッツ演じる女優の一人二役で描いた
マスターピース『マルホランド・ドライブ』にも通じる
今作だが、重層的で複雑怪奇なリンチ・ワールドの
さらなる脱構築が推し進められ、この世の「壁」
（村上春樹文学用語的に「井戸」）をさらに行き来した
想像を絶する世界が待ち構えているであろう。
今年のベネチア映画祭で初お披露目となったときには、
途中退場者続出で酷評の嵐で我らがリンチ、
絶体絶命のピンチか？
と思いきや、その後もNEW YORK FILM FESTIVALを
含む映画祭で一般客も交え上映され、公開前に観た
オーディエンス（リンチファン）の評価も上々である。
『Rolling Stone』誌の名物映画クリティックの
ピーター・トラヴァースのおやじは
「ローラ・ダーンが凄すぎる。オスカーに値する」
なんて大絶賛しつつ、この作品に対し
★３つ半（４つが満点）与えている。
キャストは、『ブルー・ヴェルベット』以来の
リンチ作品出演となるローラ・ダーン、リンチ映画
常連のハリー・ディーン・スタントン、そして前作
『マルホランド・ドライヴ』続投組も多く、
ナオミ・ワッツ（しかもうさぎの人形の声役。とか読むと
それがどんなうさ公なのか想像するだけで興奮するよね！）
ジャスティン・セロックス（前作は監督役だったが今作
では俳優役）、 そしてローラ・ハリング（『マルホランド・
ドライブ』 日本公開初日の彼女の舞台挨拶＠シネマスクェア
とうきゅう に仕事を抜け出して駆けつけたのだが
超ホルスタイン 美女だったよ）。
ついでに裕木奈江も出演してます。
さらに、デヴィッド・リンチ自ら今作にミュージシャン
として出演しているらしく、来年はブルース・アルバムを
リリースするとのこと。おいおい大丈夫か！！
ウディ・アレンみたいなことにならないだろうな！
自分のバンドのドキュメンタリー映画とか撮らないように！
そして、リンチが「デジタルビデオ・カメラが
私に自由を与えてくれた」と語っているように、
今作ではDVカムをフル活用しており、細かい部分
の編集やタイミングの調整に大いに貢献しているそうだ。
そんな映像の変化についても注目したい。
ちなみに、「内陸の帝国」を意味するタイトルの
『Inland Empire』だが、
L.A.のダウンタウンから車で１時間ほどの地域の
ことであり、今年の国勢調査で全米都市・地域別
経済成長率で１位に選ばれているエリアだそうだ。
ただ、単純にこの地域名がこのタイトルを表している
わけではなく、どうやら隠語もあるようだが。
そう、リンチが2002年に撮った短編映画『Rabbits』も
今作の重要なキーらしい。
複合的なストーリーの中の幾重にも重ねられたミステリー
はカレイドスコープのようであり、その謎を紐解き
リンチワールドの奥深くまで足を進めていくためにも
我々はまた繰り返し、この映画を観かえすことに
なるだろう。
本日12月2日、ニューヨークはLincoln Centerでの
スペシャル・プレミア（デヴィッド・リンチが来場し
Q&Aも行われます。いいなああ・・・・・）。
そして来週よりいよいよ全米公開。日本公開は来年だ。
あああ早く観てえ！！！！
http://www.inlandempirecinema.com/
http://www.youtube.com/watch?v=1Fhl4H08gGU
（噂の短編『Rabbits』。シュールなシットコム仕様）
http://www.filmlinc.com/wrt/wrt.html
（ニューヨーカー、リンチに会おう！当日券も出るよ）