何でも紹介・・・ 「袴田再審裁判、静岡地裁前の支援者Kさん」
【ワーカーズ七月一日号】

 




昨年10月、57年もの長い闘いを経てようやく始まった再審公判は、今年5月22日の結審まで15回開かれた。全国から多くの支援者が駆けつけたものの、一般の人のための傍聴席はわずか26席のためほとんどの人が入ることができない。それでも多くの人は遠方から駆けつけた。毎回大阪発6時15分の新幹線で通い続けた女性、東京から高速バスで来た小学生、あるいはハワイからも。

その中の1人Kさん(74歳)はほぼ皆出席。群馬から在来線を乗り継いで片道7時間、地裁の傍聴受付の8時40分に間に合うよう静岡に前泊、裁判当日も夕方の記者会見終了を見届けその日も静岡泊まり、という。

Kさんは、事件の凶器のクリ小刀を販売したとされている沼津の刃物店の息子さん(事件当時は高校2年)。ご両親は、57年前の第一審で検察側証人として出廷し、母親は「(袴田さんが店にクリ小刀を買いに来た)見覚えがある」と証言。これによってクリ小刀が凶器とされた。後に結局死刑判決が出された。

群馬在住のKさんは、昨年2月に母親が97歳で亡くなるまで介護。その中で10年前、母のつらい告白を初めて聞く。「必死な思いで見覚えがないと言ったのに聞き入れてもらえず、見覚えがある、と証言させられた」と。母親は自分のこの証言で死刑判決になったと生涯気に病んでいたという。Kさん自身一審当時、裁判所から帰った母親が「証言の仕方って教えてくれるのね」と言っていたことをはっきりと覚えている。

こうしてねじ曲げられた母親の証言を、今回の再審でも検察は平然と持ち出し繰り返し有罪を主張した。Kさんは、心底やめて欲しいと憤る。
10年前に亡くなった父親もクリ小刀を熟知しており、生前「クリ小刀で殺人は無理だ。何カ所も切りつけたら刃はボロボロになる」と言っていたという。

静岡地裁前でいつも多くの支援者の集まる中、ひっそりと片隅で立ち続けるKさんは、毎回自責、贖罪の念から参加しているという。袴田ひで子さんに直接会い、母親のかつての証言を謝罪したところ「あなた方も大変だったでしょう」と、ねぎらいの言葉が返ってきたという。それでも無罪判決が出されるまで、Kさんの心は晴れることはないだろう。誤った裁判は、冤罪被害当事者だけでなく、その周囲にも多くの犠牲者を生み出す。

6月13日「再審法改正実現をめざす超党派の国会議員連盟」第5回総会の場で、自民党の参院議員が法務省の卑劣な行いを暴露した。すなわち5月22日静岡地裁結審での検察の論告要旨を一部の自民党議員に配布していたと。弁護側の要旨の方は無く「読んだ人は検察庁の言い分が正しいと思う蓋然性が高いのではないか」と問題視。6月の時点で議連の加入者は308人にのぼり、その半数が与党自民党所属という現実を前に法務省は慌てたか。「検察こそが正しく何ら法改正は必要ない」とのメッセージを送るため悪知恵を働かせたか、卑劣極まりない。自責・贖罪の念はひとかけらも見当たらない。(澄)

★6月30日(日)午後13時半~16時 清水テルサ6階
    「袴田巌さんに完全無罪判決を!清水集会」
   ※間光洋弁護士が「弁護団は再審公判で何を主張してきたか」を報告
★9月26日(木)午後2時より静岡地裁にて「判決」言い渡し(午前9時頃より傍聴受付開始)