【Bunnmei の一言】

 

LINE韓国法人2500人が雇用不安訴え 国際的なIT資本戦争の一例

 

LINE(ライン)は、スマートフォン、パソコン、タブレットなどで利用できる無料のコミュニケーションアプリケーションです。韓国の大手ITであるNAVER=ネイバーの日本の子会社が開発し日本でブレイクしたものです。いろいろ経過があり、後でも触れますが現在ではAホールディングス(ネイバー、ソフトバンクが半々の株式を持つ)がLINEヤフーの株式の大半を所有しています。(図参照)

 

■日本の総務省の介入、韓国企業から「日本企業」へ?

 

LINEヤフーの「資本関係見直し」問題は、日本の総務省がLINEヤフーに対して行った行政指導に起因しています。この行政指導は、LINEヤフーがユーザーの個人情報を含む情報漏洩を公表したことを受けて行われました。総務省は、LINEヤフーが韓国のIT大手、NAVERに「過度に依存している」と指摘し、「その結果として去年(2023年)などの情報漏洩が発生した」とかなり強引な主張をしました。公開はされていないものの「ソフトバンクに株式を譲れ」つまり、韓国の大手NAVERと手を切らせLINEヤフーの所有権を韓国から日本企業に転換させよ、と言うことです。韓国企業への技術依存をやめさせ、また株式取得で日本企業の傘下に入らせてLINEヤフーを日本発の世界的プラットフォーマーに育てたいのでしょう。そしてIT事業の拡大を目指そうとしていると推測されます。総務省はこのような意図をもってNAVERに対してLINEヤフーの「持分整理」を要求したと考えられます。

 

■LINEはビックデータの宝庫

 

NAVER資本によって作られたコミュニケーションアプリLINEを運営するLINEヤフーはAホールディングス株式会社(「AHD」)という新たな会社が所有することになります。ややっこしいのですがAHDは、ソフトバンクとNAVERがそれぞれ50%ずつ出資してソフトバンクとNAVERの共同出資による子会社となっています。(図参照)この経営統合により、ソフトバンクとNAVERは、LINE事業を生かしてAIを活用した事業領域に注力し、グローバルな事業展開を目指していました。LINEは、ユーザーの年齢、性別、地域、興味関心など、膨大な量の個人情報を保有しています。LINEヤフーはこのデータを活用し有利な形でAI開発(チャットボット)を推進してきました。

 

■LINE系列会社の韓国人従業員2500人の不安

 

 NAVERやLINE系列会社の従業員たちが、日本側にLINEヤフーの株式を売却してはならないとし、韓国政府に断固たる対応を求めました。NAVERネイバーらの労働組合は5月13日に共同声明を発表し、「LINE系列の構成員と彼らが蓄積した技術とノウハウに対する保護が最優先であり、彼らを守る最善の選択は株式を売却しないこと」だとし、「大韓民国の労働者が不当な待遇を受けないよう政府に積極的かつ断固たる措置を求める」と述べています(ハンギョレ新聞5/16)。

ネイバー労組は「セキュリティ事故の対策として持ち分を増やすという(日本の)ソフトバンクの要求は、常識とかけ離れているだけではなく不当だ」とし、「韓国企業が海外で不当な待遇を受け、技術を奪われ、韓国の労働者が仕事を失うことになりかねないと懸念される状況で、積極的かつ断固として対処し、不当な要求には声をあげてほしい」と韓国政府に要請しました(ハンギョレ新聞)。

 労組は持ち分の変動によりLINE系列会社の開発者をはじめとする従業員たちが雇用不安にさらされることを懸念しています。「50%の持ち分の一部でもソフトバンクに渡った場合は、2500人余りの大韓民国の労働者であるLINEの従業員たちがソフトバンクの子会社所属となり、雇用不安を懸念する状況が起きるかもしれない」(ハンギョレ新聞)と。

 

■AI企業の争奪戦

 

日本では誰もが使うLINEアプリですが、韓国の企業が生み育ててきたことを日本人は案外知りません。この有望なIT企業を日本政府の介入で「強奪」するような形はあってはなりません。すでに韓国では反日感情の高まりが懸念されています。もちろんNAVERやLINEヤフーの技術者、労働者が切り捨てられることは断固として反対です。

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この問題は、日本製鉄による米国のUSスチールの買収問題と類似しています。仮に株主や経営陣が企業買収に同意したとしても、傘下の労働者たちの運命がもてあそばれてはなりません。USスチールの買収は、少なくとも米国の労働者の不安を増大させ労組は買収に反対を表明しています。LINEのようなIT企業では不安はより大きいでしょう。

 

USスチールの日本製鉄の買収額が約2兆円ですが、LINEヤフーの現在の時価総額は約6兆4千億円なので、仮に完全子会社にするためには約4兆6千億円と推定されます。あるいはNAVERの資本関係を清算するには約2兆円と推定できます。総務省の「指導」である「資本関係の見直し」はそのレベルを想定していませんがAI企業への転身を目指しているのでかなり高額かもしれません。つまり、日本政府を巻き込んだ今回の株式の「持ち分整理=株式譲渡」の押し合いは、国際的なAI資本戦争の一部であることは確かです。労働者は身を護るためにも企業の勝手を許してはなりません。

 

「日本に技術を奪われる」「雇用不安」

…ネイバーLINE問題の「バタフライ効果」 

: 経済 : ハンギョレ新聞 (hani.co.kr)

 

25日にソウル市汝矣島の国会で開かれた緊急討論会「LINE外交惨事のバタフライ効果」の様子。ネイバーのチェ・スヨン代表の席が空いている=写真:チョン・ユギョン記者//ハンギョレ新聞社

 

 「今後グローバル市場に進出する際、はたして生き残るサービスになれるのか、疑問を感じる」

 25日、ソウル市汝矣島(ヨイド)の国会で開かれた緊急討論会「LINE外交惨事のバタフライ効果」で出てきたネイバー従業員の本音だ。イ・ヘミン議員、キム・ジュンヒョン議員(祖国革新党)とキム・ヨンマン議員、イ・ヨンウ議員(共に民主党)らが主催したこの日の討論会には、ネイバー労働組合が参加し、国際的に普及しているメッセンジャーアプリ「LINE」を開発したにもかかわらず、雇用に対する不安に苦しめられている従業員の状況を伝えた。

 

 民主労総化繊食品労組ネイバー支会のオ・セユン支会長は、チェ・スヨン代表らネイバー経営陣がLINEヤフーの株式売却の決定を下した場合、「ネイバーの未来を失うことになる」として、株式売却に反対する立場を繰り返し表明した。オ支会長は「直近の政治的圧力と目前の経営的損失だけを考えてはならない」として「韓国の開発者が10年以上にわたり蓄積した技術とサービスが日本に渡るのではないかと懸念している」と述べた。

 

 また、子会社であるLINEプラスなどのLINE関連の韓国法人の従業員2500人あまりが、雇用に対する不安に苦しめられている状況について、政府が関心を持ってほしいと訴えた。オ支会長は「実際に現場では、すでにメッセンジャーのLINEのサービスとネイバー間の断絶が進められており、協業中止や情報のアクセス制限などで実際の業務に支障が生じている」として、「会社の未来も国の未来も前向きに期待できないことが、さらに大きな危機の前触れになるのではないかと恐れている」と述べた。

 

 この日の討論会に発表者として参加したユン・デギュン教授(亜洲大学)は、「LINEヤフーの(ネイバー側への)技術依存度は高いほうなので、完全な技術移転のためにLINEプラスのコアテクノロジー人材をLINEヤフーに配置して技術が奪われる可能性を排除できない」と懸念した。

 

 この日、チェ・スヨン代表は討論会に招かれたが参加しなかった。チェ代表は同日、国会の科学技術情報放送通信委員会常任委員会(科放委)にも参考人として採択されていたが、出席しなかった。この日の科放委に出席した科学技術情報通信部のカン・ドヒョン第2次官は、ネイバー従業員の雇用不安の訴えに「懸念はある」としながらも、「政府としては、ネイバーが自律的に判断できる環境を作ることが重要だ」として線引きした。

 

チョン・ユギョン記者、パク・ジヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/economy/it/1146415.html韓国語原文入力;2024-06-25 20:43