【Bunnmei の一言】

 

最近の報道によると、イスラエルとレバノンのヒズボラとの間で緊張が高まっています。

 

■経過と戦火拡大の可能性

 

2024年1月9日、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは、レバノン南部で司令官1人が殺害されたと発表しました。これはイスラエルによる空爆を受けたとみられています。

その後、ヒズボラはイスラエル北部に複数のロケット弾やミサイルを発射し、これは前日にイスラエルがヒズボラの高官を殺害したことへの報復措置だとしています。

ただし、イスラエル軍はガザ侵攻・対浜戦争を展開中なので、この時点では全面的な戦争が始めようとはしませんでした。

 

しかし、イスラエルのネタニヤフ首相は現在、パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスに対する「激しい戦闘の局面は間もなく終了する」と述べ、その後、部隊をイスラエル北部に展開すると指摘しました。これは、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラとの本格戦闘をにらみ部隊を再編する考えを示しています。

また、親イラン武装組織関係者らの話として、本格戦闘に発展した場合、中東各地の親イラン武装組織の戦闘員数千人がヒズボラ支援のためレバノンに向かう準備ができていると伝えられています。

 

■ネタニアフ政権の極右化

 

2024年6月にベニー・ガンツ前国防相とその盟友のガディ・アイゼンコット元参謀総長イスラエル戦時内閣から離脱しました。彼らは6人からなる戦時内閣を辞任し同内閣は崩壊しました。ガンツ前国防相は、ネタニヤフ首相が「(ガザ地区での)「真の勝利」の妨げになっている」と非難し、同首相が率いる戦時内閣からの離脱を表明しました。離脱派は、米国の路線での停戦協議とガザの今後の「国際的管理統治」を主張してきました。彼らの離脱は結果としてますますネタニヤフ政権を極右化するものといえます。すなわち「大イスラエル構想」という近隣諸国への侵攻もありうる事態なのです。ヒズボラや反米・反イスラエル組織との戦闘は拡大する可能性が大です。

 

イスラエル軍が、ガザ地区に対する壊滅的な攻撃を繰り返すばかりではなく、もう一つのパレスチナ「自治区」であるヨルダン川西岸地区でもシオニストたちの「入植食活動」が一層暴力的に展開されています。さらに頻繁に「イスラエル・レバノン国境で交戦激化」と報道されるようにイスラエル北部にあたるレバノンにもイスラエルの攻撃が飛び火しつつあります。こうしたことは、単に偶然に発生しているのではありません。背後には極右シオニストが支配するネタニアフ政権の一貫した思想と計画が存在するのです。それが「大イスラエル主義」あるいは修正シオニズムと呼ばれる思想・歴史観です。

■大イスラエル主義とは?

 大イスラエル主義とは、「聖書」によるユダヤ人の歴史的な故郷とされる地域全体をイスラエル国家の領土とすべきだという思想です。この地域には、現在のヨルダン川西岸・東岸の一部、ガザ地区、レバノン南部、シリアの一部が含まれます。ユダヤ教の教えに基づいて、ユダヤ人は聖書の約束によってこの土地を与えられたと主張します。
 ゆえに、ガザやヨルダン川西岸のパレスチナ人のわずかな自治区も認めるつもりはないのです。また、イスラエルは常に周辺国からの脅威にさらされているため、安全保障上も「大イスラエル」が必要だと主張し領土の拡大や侵略を正当化しています。
  
 このような修正主義シオニズムは、主に領土の最大化を目指すことにおいてシオニズム内の他の派閥以上に過激です。修正主義者は全領土を占領するというビジョンを持っていて、エレツ・イスラエル(約束の土地)の全領土に対する主権に対するユダヤ人の権利を主張してきました。

修正シオニズムはこのようにエレツ・イスラエル(旧約聖書に登場する古代ユダヤ=イスラエル王国の最大版図を指す言葉⇒約束の土地)全土に対するユダヤ人の主権を主張しています。その彼らがまさにイスラエル政権の中枢に陣取っていのです。これでは中東の戦争は収まることがありません。ところが米国が巨額の軍事支援を継続しいるので、このイスラエルの領土的野望は燃え盛るばかりです。

 

シオニズムの克服はイスラエル国民の使命です。イスラエル国民の新たな運動が力強く起きる必要があります。それは排他的でないパレスチナ人との共和、共生の道です。米国は手を引くべきです。それまでは、バレスチナ人やシリアやレバノンの民は強いられた武力闘争で生命と権利を守るほかはありません。(了)

 

親イラン数千人がヒズボラ支援か 本格戦闘構えるイスラエルに

 | 共同通信 (nordot.app)

 

イスラエルのネタニヤフ首相、ガザでの大規模作戦は近く終了と示唆

 - Bloomberg

 

中東紛争の本格拡大を懸念、「全面戦争のリスク高まる」=独外相

 | ロイター (reuters.com)