【Bunnmei blog】

 

ゼレンスキー・サミット

 平和を語りつつ戦争継続支援の意図が見える

 

■偽りの平和サミット

 

ロシアと中国を事実上排除して六月の「平和サミット」は開催され、「共同声明」を出して閉幕しました。ウクライナの大統領府長官は、「大きな成功を収めた」と述べ、サミットで採択された共同声明に「多くの国が支持を表明した」と語り、ウクライナ戦争の正当性について理解を得たと成果を強調しました。当然、ロシアの侵略は糾弾されるべき蛮行です。

 

今回のスイスで開催された平和サミットを推進したのは、主にウクライナのゼレンスキー政権でした。ゼレンスキー政権は、ロシアの侵攻に対抗するための具体的な計画を提示する場として、このサミットを積極的に推進しました。ゆえにこの「平和サミット」は初めから平和ではなく戦争支援の拡大が目的でした。ウクライナ政府は、多くの国々や国際機関に呼びかけ、広範な参加を求めました。

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​そもそも「平和サミット」と言うのであれば、戦争や紛争の双方のトップが最低でも出席し話し合う必要があります。もちろんロシアや中国を招き入れても、現段階では「平和」を大きく前進させることは困難でしょう。ところがロシアは最初から排除され、それを見て中国は参加しなかったため、このサミットがウクライナ平和を少しでも前進させる可能性は最初からゼロです。

すでに述べたように、中露抜きの「平和サミット」は、ゼレンスキー政権の戦争の正当性を認めさせ支援の拡大を図ることです。さらに米国を中心とするG7グループは、中露に対するデカップリング=封じ込め、すなわち戦争の継続と新冷戦の枠組み形成として「平和サミット」を利用しようとしたのです。緑

 

■「共同声明」をグローバルサウスは警戒した

 

サミットの共同声明では、ウクライナを含む全ての国家の主権や領土保全の原則を再確認し、核兵器による威嚇は許されないことし。

❶ウクライナの原発を同国の管理下に置く

➋ロシアによる核兵器使用やその威嚇を禁止する

❸不法に連れ去られたウクライナの子どもたちや民間人を帰還させる、などの項目が盛り込まれました。

当初のウクライナの十項目では到底受け入れられないので、サミットは賛同国を増やそうと三点に絞りましたが、事態の改善にはつながりませんでした。

主催国スイスを含めて「共同声明」は77カ国にとどまりました。なお主催国スイス政府は、四つの欧州地域機構のみならず、コンスタンティノープル総主教庁までも賛同国リストに含める「強引さ」で水増しさせています。

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三項目の共同声明に名を連ねた諸国はG7・欧州諸国であり、他方ではASEAN諸国、アフリカや中東、南アメリカなどのグローバルサウスの主要国(インド、インドネシア、ブラジル、サウジアラビア等)は共同声明から外れました。

 グローバルサウスが共同声明に躊躇した理由は勿論、戦争継続を望んだり無関心であったからではなく、あるいは中露への配慮と言ったものだけではありえません。今回の「平和サミット」が、G7諸国による「中露包囲網」の一環であり冷戦体制を形成するサイド・シナリオがありそれを警戒して賛同できなかったのです。

「平和サミット」が平和への前進が全くなかったのは当然としても、G7諸国の狙いである中露デカップリングと言う点でも成果の乏しいものでした。結局のところゼレンスキーとG7諸国の推進する「対ロシア戦争」が国際的には納得できるものでないことがはからずも明るみに出されてしまったのです。

 

■ゼレンスキー政権の腐敗と堕落、労働者は彼らの戦争を支持できない

 

日本ではほとんど報道されることはありませんが、ゼレンスキー政権がロシア侵略戦争以後、腐敗を深め労組や労働者の権利や市民的自由を抑圧していることに対する不満や批判が国内に存在します。この批判はウクライナ国内ばかりではなく、欧州の一部の市民や労働者の共有するところであり、欧州政府もこれらの批判におされた形で「ウクライナの腐敗政治」に不平を言うことになります。こうしたケースで初めて日本でも少し報道されます。

 つまり、現在のゼレンスキー政権による「対ロシア戦争」は、ウクライナ国民の納得するものではなく、欧米資本とウクライナのゼレンスキー政権、「与党人民のしもべ」がタッグを組んだ戦争なのです。彼らはウクライナの「対ロシア戦争」を積極活用し、新自由主義的資本体制への移行として位置づけています。(了)

参照・欺瞞に満ちたゼレンスキー・サミット 平和を語りつつ戦争継続支援の意図が見える | ワーカーズ ブログ

ロシア非難決議への賛同国数が「激減」する…ここへきて「ウクライナ」の求心力が「急低下」している「3つのワケ」 

(msn.com)

数をめぐる「平和サミット」の国際政治

ウクライナ「平和サミット」が終了した。主催者によれば、92カ国が参加したという。ただし、会議を締めくくる「共同宣言」に賛同したのは、主催国スイスを含めて77カ国にとどまった(スイス政府公式ウェブサイトにおける賛同国の数)。

 

なおスイス政府は、四つの欧州地域機構のみならず、コンスタンティノープル総主教庁までも賛同国リストに含めて、参加国・機関の総数を多く見せることに、こだわりを持っていることをうかがわせている。実際のところ、「平和サミット」の目的の一つは、ウクライナの立場に対する賛同者をなるべく多く参集させることだったのだろう。参加国を増やすために、2022年11月のG20会議の際に披露した「平和の公式」10項目から、3項目だけを議題にするという措置をとった。ただ、160の招待先の約半数しか参加せず、共同宣言に調印してくれたのは、さらに少ない77カ国となった。欧州全域で参加・署名が集まったのとは対照的に、アジア・中東では、東アジア・オセアニアのアメリカの同盟国以外には、政権交代後に中国との関係を悪化させたフィリピンなど数カ国だけで、アフリカでも9か国ほどであった。

 

(「平和サミット」共同声明賛同国の分布:筆者作成)

(「平和サミット」共同声明賛同国の分布:筆者作成)© 現代ビジネス

 

上記の筆者作成の「平和サミット」共同声明賛同国の分布を見れば一目瞭然であるとおり、島嶼国と沿岸国に張られたアメリカの同盟国網が、「平和サミット」賛同国のネットワークである。このネットワークは、ユーラシア大陸やアフリカ大陸の内奥には、入り込めていない。つまり「ランドパワー」の領域には、全く食い込めていない。これは地政学理論における「シーパワー」の領域と、「ランドパワー」の領域が対峙する、典型例の構図である。ロシア・ウクライナ戦争が、二つの領域がせめぎあう地点で発生していることも、よくわかるだろう。

 

このような明白な構図ができあがってしまっている以上、今後「平和サミット」に集った「シーパワー」の領域が急拡大していくことは、期待できないと言わざるを得ない。むしろアフリカでわずかにアメリカの影響が及ぶアフリカの角の2国、旧宗主国イギリスとフランスの影響がわずかに残存する西アフリカのギニア湾岸の数カ国を、「平和サミット」側で死守するのがやっとだろう。そしてこれらの諸国だけでは、国際社会の多数派を占めることはできない。

国連の回避に突破口はあったか

国連総会では、2022年3月、23年2月と、ロシアの侵略を非難する決議に、141カ国が賛同した。しかし24年の同時期には、同じような決議案が提出されなかった。ウクライナとその支援国が、提出を見送ったからだ。賛同国の数が、大幅に減ることが必至の情勢であった。賛成国の数が141カ国から大幅に減るようであれば、ウクライナにとっては大きな痛手となる。万が一、過半数をとれないようなことにでもなったら、大変な事態となってしまう。

 

そこで開催された「平和サミット」は、国連総会から離れて、多数の諸国がウクライナを指示していることを見せるための場であったと言ってよい。国連加盟国数は193なので、過半数は97である。結果として、最終共同宣言に調印したのが77カ国だったことを考えると、同じ内容の決議文が、国連総会で採択されるかは不明だ、ということになる。この数では、そもそも今後、ウクライナとその支援国の主導で決議文が提出された際、国連加盟国の過半数の賛成をもって、国連総会がそれを採択するかどうかも、不明だと言わざるを得ない。

「平和サミット」の第2回目が、数か月内に開かれる見込みだという。ロシアの「行動計画」なるものを作成し、それをロシアに提示するのだという。おそらくは欧州全域の諸国と、欧米諸国の同盟国あるいは友好国は、その試みに賛同することになるのだろう。だが反対陣営に食い込んでいくことは難しいだろう。

 

ロシアは、併合を宣言しているウクライナ4州からのウクライナ軍の撤退やNATO非加盟などを要求する停戦の条件を、「平和サミット」の直前に表明した。ウクライナが、少なくともすぐには受け入れるはずのない内容である。形式的に和平案を提示するイニシアチブをとってみることによって、「平和サミット」の前に、ロシアの不在を強調しようとする試みであったと言える。実際のところ、不参加の諸国の多くが、ロシアの不在に不満を表明していた。参加国の中ですら、同じ不満を表明したサウジアラビアのような国があった。参加しながら共同宣言に署名をしなかったアルメニア、ブラジル、メキシコ、インド、インドネシア、サウジアラビア、南アフリカ、タイ、UAEなどの有力な諸国は、いずれも同じような立場をとっていると考えてよいだろう。これらの諸国は「交渉の不在」に不満を持っている。

 

理論的には、ロシアの停戦条件と、ウクライナの「平和の公式」を突き合わせる「交渉」は、実施可能なはずだ。だが双方が嫌っている。「交渉」を公然と拒絶しているのが、ウクライナ側である。したがって「平和サミット」は、「交渉」を通じた和平を模索するものではなかった。戦争の早期終結を求めてきている諸国が、共同宣言への署名を避けたのは、予測された態度であったと言える。

ウクライナとしては、停戦を求める諸国の翻意を狙って「平和サミット」を開催したのだが、それはほとんどかなわなかった。「平和サミット」を通じた「行動計画」への賛同は、「交渉」を通じた早期和平とは逆の方向を向いているという印象を持たれる可能性が高い。今後の「平和サミット」の成果も、77カ国以上の賛同は、なかなか得られないだろう。

なぜウクライナへの支持は減っているのか

2022年と2023年の国連総会におけるロシア非難決議では、141カ国の賛同があった。それなのになぜ、2024年の今では、77カ国以上のウクライナへの賛同が集まるかは不明な状態になってしまっているのだろうか。

戦争の長期化を忌避する心情、欧米諸国に対する不信、そして反欧米陣営の求心力、という三つの要素を、とりあえず指摘しておくことができるだろう。

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PHOTO by iStock© 現代ビジネス

戦争長期化を嫌う心情

まず戦争の長期化を嫌う心情が、世界各国に広がっていることは、否めない。それがロシアとの交渉を拒否するウクライナに対する不満につながっている。

2023年の5月頃から、ウクライナは、いわゆる「反転攻勢」と呼ばれた軍事攻勢を仕掛けた。これは目立った成果をあげることがないまま、冬になり、戦線は膠着した。これまでの軍事的手段だけでは、劇的な戦場の変化が訪れる様子がない。そのため戦争がいたずらに長期化して世界経済などにも悪影響を及ぼし、さらには双方が使用する軍事手段を高めて戦争の被害がいっそう甚大になっていく恐れもある。NATO構成諸国が、直接参戦する可能性も、ゼロとは言えない。戦争を終わりにさせてほしい、というのが、諸国の本音だろう。そのため交渉による戦争の終結の可能性を拒絶しているウクライナの態度に、不満が集まることになる。

 

2023年の世界各国のウクライナ向けODA(政府開発援助)の総額は、アフリカ大陸全域に対するODAの総額を大きく上回った。欧州域外の諸国にとって、これ以上ウクライナを国際的な注目の的にしておきたい理由はない。

もちろんウクライナは、領土が回復されない限り、最終的な平和は訪れない、という立場だ。だが世界各地で、領土紛争は多々ある。それら全ての地域で、戦争継続しか方法はない、という結論が取られ始めたら、大変なことになる。世界の大多数の諸国にとって、領土問題の継続審議と、停戦の促進とは、両立しうる議題でしかない。

昨年の春先からウクライナの「反転攻勢」が強行されたのは、アメリカの大統領選挙の選挙戦が本格化する前に、目に見えた戦果をあげて、アメリカの選挙民にアピールしておかなければならなかったからだろう。少なくともバイデン政権関係者は、それを強く望んでいたはずだ。だが戦果は出なかった。今年2024年は、もはや2023年ではない。アメリカの議会は予算案をめぐる空転を経験した。世論調査では、トランプ前大統領がバイデン大統領をリードしている。その前トランプ大統領は、自分が当選したら、ウクライナへの巨額支援は止める、と公言している。この流れを見て、ウクライナの戦争継続努力への支援を呼び掛ける欧米諸国に相乗りしたいと思う諸国が少なくなるのは、どうしようもない。

欧米諸国に対する不信感

第二に、ウクライナを強力に支援する欧米諸国に対して、世界各国の根深い不信が高まっている。たとえば国際法において、イスラエルのガザと西岸の占領政策が違法であることについては、広範な了解がある。世界の大多数の諸国は、パレスチナを国家承認している。それにもかかわらず、米国を中心とする欧米諸国は、イスラエルに武器支援をし続けている。これは二重基準以外のなにものでもない。欧米諸国は、パレスチナの占領を通じた入植政策を、イスラエルに武器を提供して実態として支援してしまっている。ところがその同じ欧米諸国が、ウクライナの占領については、ウクライナに武器を提供して抵抗を支援しなければならない、と主張している。残念ながら、世界の大多数の諸国にとっては、容易に納得できる話ではない。世界の大多数の諸国が、欧米諸国に追随することに警戒的になるのは、やむをえない。

 

今回の「平和サミット」に参加し、共同宣言に署名をしたアフリカ諸国の中の筆頭格は、ケニアだ。ケニアのルト大統領は、今年5月にアメリカを訪問した際、バイデン大統領に、「ケニアはアフリカ大陸で最初のアメリカの同盟国だ」と言わしめた。しかし、そのケニアですら、「平和サミット」会議中の演説において、「ロシアの侵略も違法だが、欧米諸国によるロシア資産の収奪も違法だ」と指摘した。

欧米諸国が中心になって、強くウクライナ支援を訴えれば訴えるほど、世界の大多数の諸国は、その政治的構図に不用意に巻き込まれることに警戒的になる。欧米諸国が誘えば誘うほど、他国は欧米諸国から距離を置こうとする、という流れが顕著になっている。

ゼレンスキー大統領は、昨年10月7日のハマスの攻撃の後、熱烈なイスラエル支援の心情を吐露した。ユダヤ人としての出自から、親イスラエルのイメージが強い。当初と比せば、だいぶイスラエル一辺倒の姿勢を和らげようとしているとも評される。だが最初に作られたイメージが強すぎて、その後の微妙で穏健な言い回しでは、印象を変えることができない。実際のところ、ウクライナのガザ危機への態度は、微妙である。停戦要請決議やパレスチナ加盟決議など、大多数の諸国が賛成票を投じた国連総会における投票行動の機会において、ウクライナは棄権を繰り返している。ウクライナは、公式にはパレスチナを国家承認している国に入っているが、承認したのはまだソ連の一部の共和国だった時代の1988年のことだ。現在のゼレンスキー政権は、アメリカに気を遣うあまり、中東における違法な占領の問題を語ることができないなっており、二重基準に加担している、という印象が広範に共有されてしまっている。

ガザ危機でイスラエルへの非難が高まると、ウクライナへの支持は減っていく、という構図が顕著になっている。ガザ危機後の国際世論の動向は、ウクライナにとっては、容易に克服できない大きな制約となっている。

反欧米陣営の求心力

欧米諸国の威信が低下している一方で、反欧米諸国の陣営が、顕著な存在感を見せている。これはウクライナにとって大きな不安材料のはずだ。残念ながら、そのウクライナの不安感は、今のところ裏目に出ているように見える。シンガポールで開催されたシャングリラ会議に現れたゼレンスキー大統領は、公然と中国を名指しで批判した。中国のロシア支援と、平和サミット出席予定国に対する妨害を、非難したのであった。しかもゼレンスキー大統領は、シャングリラ会議後に、顕著に反中国の姿勢をとるようになっているフィリピンだけをあえて訪問した。

 

自国を支援していない、という理由で、人口4千万人のウクライナの大統領が、超大国・中国に敵対的な姿勢をとる光景は、狙いとは逆の効果を放つ恐れがある。東南アジアで人口・経済規模で1位なのは、インドネシアだ。当時G20の議長国であったインドネシアのジョコ大統領は、22年6月にキーウを訪問してくれた人物である。そのおかげもあってゼレンスキー大統領は、G20で演説をして、「平和の公式」を発表することができた。ところがゼレンスキー大統領には、ASEANの雄であるインドネシアに気遣いをしている様子が全くない。インドネシアは、「平和サミット」に形式的に参加したが、共同宣言に署名しなかった。

 

ASEAN第二位の経済力を持つタイも、同じように会議に形式参加しただけで、署名はしなかった。そのタイに続いて、ASEAN原加盟国の一つであるマレーシアが、BRICSへの参加申請を行った、という報道が流れている。ゼレンスキー大統領の反中国・親米国重視の姿勢は、ASEANの分断の構図にそったものであり、結果的に反対側のBRICS陣営の充実の流れにも強めてしまっている。

 

BRICSで圧倒的な存在感を見せる中国は、ロシア寄りの姿勢を明確にとり始めている。BRICS陣営の第二の大国であるインドも、長年の紐帯を持つBRICSの盟友ロシアと従来からの関係を維持し続けている。他のBRICS原構成国であるブラジルや南アフリカの立ち位置も同じようなものだ。これが昨年末のBRICS加盟国の拡大と、今年以降に予測されるさらなる拡大と、どう結びついてくるのかは、まだ予断を許さないところがある。ただ、BRICS諸国に勢いがあることは、事実だ。しかも金融制裁を乱発するアメリカなどに不満が大きく、明確に反欧米的な姿勢を取り始めている。

 

ケニアのルト大統領が、「平和サミット」において、あえてアメリカなどによるロシアの資産の没収を批判したことには、理由があるだろう。東アフリカにおけるケニアのライバル的な存在であるエチオピアは、昨年にUAE、サウジアラビア、イラン、エジプトという中東四か国とともに、BRICS入りを果たしてしまった。エチオピアは、UAEを中心とする中東諸国と太い結びつきを持つ。ケニアは、BRICSの動きを気にせざるを得ない。そのBRICSは現在、ドル基軸通貨体制を前提としている国際的な金融貿易慣行を刷新するための努力を本格化させようとしている。当面の焦点は、BRICSが切り崩そうとしている中東におけるドル決済の行方だ。ドル基軸体制の趨勢に影響を与えかねない欧米諸国による一方的な他国のドル建て資産の凍結・没収の問題は、ケニアにとっては、ウクライナだけの話として済ませられるものではない。

日本はどうなる

日本の岸田首相は、多額の財政支援を約束するなど、ウクライナ支援の充実を目玉の政策の一つと捉えている。狙いは、低迷する支持率の改善だと報道されている。外交で目立つことをして、国内世論を好転させたいという思いから、ウクライナ支援に力を入れている、というわけである。

ただ首相就任直後に発生したロシアのウクライナ全面侵攻に、明確な反ロシア・親ウクライナの姿勢で臨んで喝さいを浴びた岸田首相は、二年前の成功体験にとらわれすぎているように見える。株式市場の動向を見るのと同じ思いで、支持率の低迷を示すグラフを見ながら、追加投資に奔走する姿は、果たして11月のアメリカの大統領選挙後には、どうなるのか。

もちろん本人としては、まずは9月の自民党総裁選を乗り切ってから考えるべきことだ、という理解ではあるだろう。いずれにせよ先行きは不透明だ。