反戦デモに校名入った旗使用 退学処分の学生「不当」 愛知大提訴 

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愛知大豊橋キャンパス=愛知県豊橋市で2024年6月18日午後3時37分、川瀬慎一朗撮影

愛知大豊橋キャンパス=愛知県豊橋市で2024年6月18日午後3時37分、川瀬慎一朗撮影© 毎日新聞 提供

 

 「愛知大学学生自治会」ののぼり旗を掲げてウクライナ反戦デモに参加したことなどを理由に昨年9月、退学処分となった元学生3人が18日、同大を相手取り、学生の地位確認と1人あたり1100万円の損害賠償を求める訴えを、名古屋地裁豊橋支部に起こした。学生側は地位保全の仮処分を申し立てていたが、名古屋地裁による処分取り消しを含む和解案を大学側が拒否した。

 

 訴えたのは、愛知大豊橋キャンパス(愛知県豊橋市)学生らで組織する「同大豊橋校舎学生自治会」の委員長や役員の3人。3人は2023年2月、名古屋市内であったウクライナ反戦デモに「愛知大学学生自治会」ののぼり旗を掲げて参加。また、22年7月に学費値上げ反対を訴える立て看板を学内に設置するなどしたとして昨年9月に大学側から退学処分を受けた。

 

 退学理由について、大学側は「大学の秩序を乱し、学生の本分に反した」と通知。ウクライナ反戦デモについて「事前に求められている行事届・学外名称使用許可願を提出せず、無断でのぼり旗を掲げて反戦デモに参加したことは大学公認の活動であるかのような外観を作りだした」とし、学費値上げの看板設置について「学費値上げをすることはないと明言しているにもかかわらず不安をあおり、学生や保護者を混乱させた」と説明している。

 

 自治会は、大学を相手に学生会館などの管理運営権が自治会側にあることの確認を求め名古屋地裁で係争中で、3人は訴訟の中心的役割を務めていた。18日に記者会見した原告の元学生は「自治会役員を退学に追い込むことで自治会をつぶそうとする弾圧的行為だ」と批判。原告代理人の西澤圭助弁護士は「退学の不当性を公開の法廷で明らかにしたい」と語った。

教員宛ての手紙「無断で回収された」

 一方、原告の元学生は会見の中で、学生自治会が昨年7月~11月、退学処分の不当性などを訴えるチラシなど計529通の郵便物を約60人の同大教員に郵送していたにもかかわらず大学側が無断で回収していたと主張した。

 原告側によると、23年12月、学生自治会に所属する学生が、同大学生課の職員から段ボール2箱を受け取った。箱の中身を確認すると、教員宛てに送ったはずの郵便物があったという。

 学生自治会が経緯の説明を求めると、大学側は「各教員に周知し、受領意思を示さなかった教員分について返却した」と回答。しかし、原告の元学生は「複数の教員に聞いた結果、手紙が届いていたことを知っていた教員は誰もいなかった」と話している。

 

 会見で元学生は「不都合な真実には強権をふるって口封じするのが学問の府がやることなのか。許しがたい言論弾圧」と憤った。西澤弁護士は「個人宛ての郵便物に大学事務側が手を加えることは郵便システムの信頼性を破壊する行為。検閲であり、憲法で保障された表現の自由を奪うものだ」と説明。刑法263条の信書隠匿罪などに当たるとして、刑事告訴を検討しているという。

 愛知大は提訴について「訴状が届いておらずコメントできない」、郵便物の回収については「コメントは差し控えたい」としている