追い出される米国、押し寄せるロシア…揺らぐアフリカ

 : 日本•国際 : hankyoreh japan (hani.co.kr)

 

[ハンギョレS]地政学の風景 
アフリカ角逐戦 
 
ニジェール軍事政権、米軍撤収を命令 
ロシア軍、力の空白を埋める準備 
旧フランス植民地のサヘル地域諸国 
文民独裁転覆で「反西側・親ロ」路線に

4月21日(現地時間)ニジェールのアガデスで市民が米軍撤収を要求するデモを行っている/EPA・聯合ニュース

 

 ウクライナ戦争とガザ戦争が既存の国際秩序に与えた波紋が、アフリカを揺るがしている。ウクライナ戦争に余念がないはずのロシアがアフリカで勢力を拡大し、ロシアを封じ込めようとする米国は守勢に追い込まれている。ブラックアフリカの入口であるサヘル地域(東西方向に帯状に区切るサハラ砂漠の南側の周辺地帯)がその舞台だ。

 

■ウクライナ戦争の状況下でも勢力拡大

 

 米国とニジェールは先月19日、ニジェールに駐留する米軍を9月15日までに撤収することで合意した声明を発表した。昨年クーデターで政権を取ったニジェール軍事政権はすでに、旧植民宗主国のフランス軍の撤収を命じ、ロシア側に接近していた。ロシア軍は首都ニアメの国際空港である101空軍基地に配置され、米軍とこの基地を共有する前代未聞の事態が生じている。米国のロイド・オースティン国防長官は「ロシア軍は別の兵営におり、米軍もその施設に接近できない」とし、ロシア軍は米軍に「危険」を及ぼすことはないと言いつつ、当惑している状況を説明した。

 

 今年初めのロイターの報道によると、ここには60人ほどのロシアの軍事訓練要員が配置されている。最近はその数がさらに増えたと推定される。ロシア正規軍に先立ち、ロシアの傭兵であるワグネルの隊員は、ニジェールだけでなくマリなどの各地に1000人あまりも配置され、対テロ戦を遂行している。

 

 中東のシリアやイラクなどの東地中海沿岸地域で敗退したイスラム国(IS)やアルカイダなどのイスラム主義武装勢力にとって、サヘル地域は新たな中心地として浮上した。イスラム教徒が多いうえに、政府の統制力が及ばない地域が広大なためだ。ここでフランスと協力して対テロ戦争を遂行する米国にとって、ニジェールは最も重要な国だ。ニジェールはイスラム主義武装勢力の根源であるリビアと北に国境を接し、西アフリカの中心国家であり豊富な資源を持つナイジェリアと南に国境を接するためだ。

 

 ニジェールで米軍の大半は首都ニアメから北東に750キロメートル離れた中部都市アガデスのドローン基地に駐留している。米軍の駐留規模は1000人ほどだといわれている。米軍は駐留を続けようとしたが、ニジェール軍事政権は3月、すべての米軍の撤収を命じた。軍事政権のアマドゥ・アブドラマン報道官は、ニジェールが選択した同盟に米国が反対を提起したとして非難した。昨年7月にニジェールでクーデターが起きた後、軍事政権はフランス軍に撤収を命じ、ロシアと密着するようになった。米国がニジェールとロシアの密着に反対したことで、ニジェール軍事政権が米軍の撤収を命じたのだ。

 

 米国としては当惑させられる事態の展開に違いない。イスラム主義武装勢力の拡大を阻止する米軍の撤収によって起こる力の空白を、ウクライナ戦争における米国の敵性国であるロシアが埋めているからだ。米アフリカ司令部のマイケル・ラングレー司令官は、米国はニジェールやチャドなど最近軍事クーデターが起きた国々への関与を強く維持したいと明らかにした。ラングレー司令官は、米国の「究極の目標」は、軍事政権国との対話を維持し、彼らを「民主主義に復帰するロードマップ」に載せることだと述べた。

 

■腐敗政権を容認した米国…「因果応報」

 

 サヘル地域から米国などの西側諸国が追いやられてロシアが進出する状況は、2020年のマリをはじめ、この地域の西アフリカ諸国で相次いだ軍部クーデターによって引き起こされた。2020年8月と2021年5月にマリ、2021年9月にギニア、10月にはスーダン、2022年1月と9月にブルキナファソ、2023年7月にニジェールでクーデターが起きた。クーデターの波紋は、フランスなどの西側諸国と深く関係するこの地域の国々の文民エリート支配による独裁と腐敗に象徴されるフランス植民地主義の残滓に、対テロ戦の混乱まで重なって生じた。

 

 フランスの植民地だった西アフリカの9カ国のうち7カ国が、かつてのフランスの通貨であるフランと価値が連動したCFAフランを今でも使っており、地域エリートはフランスと利権で結びついている。このため、西部アフリカはフランスの勢力圏である「フランサフリック」とも呼ばれる。ニジェールでは、クーデター発生前から「M62」などの市民団体が反フランスデモを行い、当局の弾圧を受けていた。マリやニジェールなどでは、クーデターの後、フランス勢力の追放を主張してロシア国旗を振るデモが広がった。

 

 米国などの西側諸国は、この地域の国々でのクーデターが文民統治と民主主義を転覆したと主張するが、偽善的なダブルスタンダードだという批判を受けている。米国などは、自分たちが擁護する文民政権が権力を維持・延長するために「憲法クーデター」を繰り広げたときは知らないふりをした。2019年にトーゴでは、フォール・ニャシンベ大統領が任期を2回延長する改憲を行い、2020年にはギニアでも大統領の任期延長のための憲法と関連法の改悪がなされた。ベナンでは、2021年に野党が議会選挙から排除され、野党指導者2人が選挙前に拘束されたうえ長期の懲役刑を宣告された。

 

 昨年ニジェールでクーデターが発生した後、西側諸国が支援する西アフリカ15カ国の地域機構「西アフリカ諸国経済共同体」(ECOWAS)は、ニジェール軍部が憲政秩序を復旧しなければ武力介入すると警告した。しかし、ニジェール軍部はこれを一蹴し、むしろワグネルの傭兵を呼び入れるなどしてロシアに接近する逆風が吹いた。ECOWASの脅しに対し、軍事政権が成立したマリ、ブルキナファソ、ニジェールは昨年9月16日に同盟を結成し、反西側に歩み始めた。

 

 米国は西アフリカのサヘルでロシアの進出に対して防衛ラインを張るなどして、周辺の取り締まりに乗り出している。米国のジョー・バイデン大統領は先月23日、東アフリカの中心国家ケニアのウィリアム・ルト大統領をホワイトハウスに招き、ケニアをブラックアフリカ諸国では初めて「主要な非NATO同盟国」に指定した。アフリカ諸国の指導者が米国を国賓訪問したのは、15年ぶりのことだ。ルト大統領は、2007年の大統領選挙での暴力事態をめぐる人道的犯罪の容疑で国際刑事裁判所(ICC)に起訴された人物であるにもかかわらず、米国が国賓として招待したのだ。米国が追い詰められている状況を示す光景だ。ウクライナ戦争に続くガザ戦争は、各地で米国が主導する国際秩序と中ロが意図する多極化秩序が衝突と対決を繰り広げる「グレート・ゲーム」を目撃させている。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/international/arabafrica/1142996.html韓国語原文入力:2024-06-01 21:40