【Bunnmei blog】

 

ドルの動揺とバブル化する金

 

世界的なインフレの定着がみられる現代の世界経済では、金もまた騰貴しています。

まず金は歴史的な ブレトン・ウッズ体制の崩壊によるドル減価の影響で「価格」が上昇します。1971年8月15日のニクソン米大統領が金・ドルの交換停止は、ドルの大量発行と海外流出に伴いドル減価と金高騰を準備しました。さらに引き続く米国(ドル)の国際的地位の的低下のなかで、新興国中央銀行による(インドや中国、ロシアなど)金買いが行われて近年相場が上昇しました。とりわけコロナバブルの形成後インフレの国際的な昂進により、債権の実質利回りは低下し他方では「何も生まない金」が高騰するということでの売買益、つまりキャピタルゲインによる利益が美味しくなり、金買いに資金が集まりバブルの様相を生んでいるのが現時点とみられます。

 

■今や金は「不変の価値」を表さない

 

金が重宝されるのは、インフレなどの時代に「価値の保全」「価値の蓄蔵」機能があるからだとされます。それは、正しいのですが現代では十分ではありません。米国において2001年から2024年までのインフレは1.4倍に物価騰貴しています。2001年平均: CPI 89.1、2024年3月: CPI 232.9です。

すなわち2001年に1ドルで買えたものは、2024年3月には約1.4ドル必要となります。

ところが【下グラフ】を見てください。金価格は同じ間に約8倍になりました。

 

 

金価格も、土地や株のようにあたかも架空資本化していることが分かるでしょう。

「価値を保持する」のであれば金価格の上昇も全般的な物価上昇と同じく1.4倍のはずですが、それをはるかに超えています。これは、価値と価格の問題を超えたバブルであると言わざるを得ません。そしてバブルであるかぎり少々長く続いても終わりが来ることを意味しています。現代における金は、消費財など以上に価値の保存能力を失いつつあるのです。

 

 

■金バブルは1976年~1980年にも発生

 

金のバブル化は今回が初めてではありません。【下の表】のように、やはり当時のオイルショックや金ドル交換停止の影響で過剰貨幣の奔流が金市場にも流れ込み、金価格が四年間で8.5倍にも達したのでした。これもまた当時のインフレと価格投棄の水準を超えた金バブルの発生でした。

金価格(ドル/オンス)

1976

100

1977

140

1978

200

1979

500

1980

850

 

ちなみに、1976年の金価格すなわち1オンス=100ドル、を基準に採れば、2024年は1オンス約2330ドルなので23倍以上の価格上昇でした。もちろん米国の消費者物価指数(CPI)によると、1976年と2024年では約5.36倍になっています。1976年のCPI: 56.9、2024年のCPI: 305.2(仮定値)。

この計算により、物価は約48年間で5.36倍に上昇したことが示されています。つまり、ここで長期的に見ても金価格は、インフレ率をはるかに超えて高騰していることが見て取れます。

 

■金バブルの仕組み

 

債権ではなく、利子や配当を生まない金は「インフレ時の価値保全」程度の意味しかなく、投機の対象になる「はずはない」ものでした。しかし、それを変えたのが世界的低金利と長期のインフレ傾向です。さらには、米国の国際的な地位の低下がドルへの信頼の低下につながり、冒頭にも触れたような新興国中銀による金の買い付けが発生しました。金はこのようにして価格高騰が生じ、さらに投機先を絶えず物色してきた過剰貨幣資本による値上がり益狙いの投棄の発生となっています。こうして金もまた、土地やビットコインのようにバブル化してしまったのです。

 

しかし、あらためて指摘すれば、金の騰貴は他の債券類の魅力の低下を意味しています。「米国の金利が高い」と言われますがインフレが2%超えなので実質金利は2%程度です。日本などは「緩和政策からの転換」などと植田日銀が主張していますが、インフレがやはり2%以上あるので実質短期金利はマイナス2%程度に落ち込んでいるにすぎません。利子に配当にしろあるいは債券類の売買益すら労働者の剰余価値の転化したものです。金融資本は配当類の上昇を目指して❶労働分配率の切り下げ➋不採算部門の整理解体❸搾取の強化です。これらを金融資本は株主総会などで個々の企業に要求し、個々の企業は労働者にその犠牲を転化し続けるという悪無限事態が現れています。これこそが民衆の窮乏化の根底であるし、階級矛盾の高まりを必然化するはずです。

 

さらに、金すらバブル化するという事態は過剰貨幣資本の巨大さを示すものでもあります。しかし、繰り返しますがバブルはバブル。崩落はいつ開始されるか不明でも必ず発生します。(了)

 

 

金価格の上昇は今後も確実に続く

…各国の中央銀行が「金売り」から「金買い」に転じた納得の理由

 (msn.com)