ネットだけの人気に限界 百田新党

 しかし軍事保守派の動きには警戒を
【ワーカーズ六月一日号】



 日本保守党は、去年作家・百田尚樹氏とジャーナリスト・有本香氏らによって設立された新興の政治団体です。「日本を豊かに、強く」をスローガンに掲げ、戦前の古風な家族観や勤勉さといった日本的な価値観の回帰とか、反面では日米同盟の強化による、外交・安全保障政策などを政策提言して日本の保守層の掘りおこしを狙っています。四月の衆議院東京15区補選に出馬したのが、日本保守党にとって初の国政選挙です。しかし、公認の飯山氏は4位で落選しました。
  
 日本保守党の理念は次のようです。
 伝統的な家族観や価値観を尊重し、少子高齢化対策や子育て支援などの政策を推進すると。またそれと矛盾していますが、規制緩和や減税などの新自由主義的政策を通じて、経済成長と雇用創出を目指すとしています。政策の整合性のないのが特徴と言えば特徴です。結局はアベノミクスのような新自由主義による労働者の無制限な搾取すなわち「世界で一番企業が活躍できる国」を目指しているのでしょう。

 さらに自衛隊の強化や日米同盟の深化など軍事力の底上げを目指しています。軍治派による国民の窮乏化しかイメージできませんね。
  
 政策の特色は教育基本法の改正や英語教育の強化など、教育保守的改革を推進する、憲法改正議論を積極的に進めるとか、産業界向けの原子力発電の活用をうたっています。これでは業界べったりも明らかです。民衆の期待する根本的改革――経済格差の根本是正など――が全く見えてきません。
  
 党設立当初から、安倍元首相の支持者や関係者を中心に多くの支持を集めていました。百田氏自身も安倍元首相と親交があり、党の綱領にも「安倍政権時代の政策を継承」していくことが明記されています。そうなのです、百田派とは要するに安倍派の中の保守反動派の結集を目指したものと考えられます。
  
 しかし、自民党はそもそも政策や理念に対する高い支持で長期政権を維持しているのではありません。彼らは業界利権とそのバラマキ利益誘導政治において(公明支持を得つつ小選挙区制の恩恵で)議会多数派を維持してきたのです。安倍政治はこのような自公体制のど真ん中に存在して来たのであったのです。ゆえに百田・有本などの文化人による「口先保守」では安倍派に取って代わることは不可能でしょう。
  
 とはいえ、日本政府が自ら招いた中国、ロシアなど隣国との対立路線、そして日本経済の衰退と労働者の生活苦は日々明らかなのです。時代の閉塞状況のなかで過激な保守反動の動きは警戒すべきでしょう。(A・B)