折口晴夫

 

ー「祖国のために命を捨てるのは道徳的行為」だって?ー

自衛隊に若者を追いやってはいけない

 

 河村名古屋市長が戦争の風化を防ぐために制定された「*なごや平和の日」の会見の中で次のように発言しました。

「軍人として命を失っていくというのは、祖国のために命を捨てるというのは、相当高度な道徳的行為であるということは間違いないのね、実は。右翼ではないですよ。世界の常識ですよ、そんなこと」

 

*名古屋空襲により市街地に大きな被害が及んだ5月14日を「なごや平和の日」と定め、その日を中心に年間を通して、名古屋空襲により犠牲になられた方々を悼むとともに、悲惨な戦争の体験・記憶を後世に語り継ぐ取り組みを推進・・・

 

  自治体の首長・政治家が〝若者が国のために死ぬこと〟を美化しだしたら危ない、戦争準備を始めたと捉えるべきでしょう。軍事費を倍増し、戦闘機輸出を目論み、自衛隊員戦死を想定して自衛隊が公然と靖国参拝を行い、市民に情報を閉ざしたら何をするか分かりません。

 

 なのに、多くの自治体が自衛隊に提供を求められた高校・大学卒業生名簿を提供し、自衛隊員募集に協力しています。日米軍事同盟を強固にし、集団的自衛権を公然と主張し、中国を敵視して緊張を煽るなか、自衛隊員が戦死する可能性がないとは言えないのに、名簿をCD‐Rで、宛名を記載したものなどを提供しているのです。

 

 法的には、自衛隊員が住民基本台帳を閲覧して書き写すことは可能ですが、その手間を省いて卒業生を抽出した名簿を提供する義務はありません。こんな風に個人情報を扱うことは、自己情報コントロール権を無視するものです。その闘いを18歳の若者が、私の情報を違憲の自衛隊に提供したことは違憲だ、と裁判をはじめました。その勇気に敬意を表し、支持しましょう。

 

若者の個人情報を本人の知らないところで

名簿にして自衛隊に渡すのはやめて下さい

         署名の発信者  私の個人情報を 守って

 奈良市長 仲川げん 様

 奈良市はこれまで自衛隊に、「隊員に採用する適齢者(18歳、22歳)」の個人情報(住所・氏名・生年月日・性別)を、本人にも知らせず提供してきました。しかも、これまで自衛隊が市役所で住民基本台帳を閲覧して転記していたものを、今年から紙に印刷した名簿を、自衛隊に渡していることが、議会質問や、私たちの情報公開でわかりました。

 市長は「個人情報を提供されたくない人は、申し出てくれたら除外する」と言いますが、これも知らない人がほとんどで、許されないことです。

 市長はこの情報提供について、住民基本台帳法や自衛隊法に基づいていると言いますが、これらの法律は「提供を求めることができる」というだけで、義務付けられたものではありません。それは、全国の約4割の自治体が、今でも情報提供を拒否していることを見ればわかる話です。

 日本は今、「戦争する国」に向かって突きすすんでいます。こんなことを続けていると、奈良市の若者を戦場に送り出すことになりかねません。情報提供は一切やめて下さい。             

阪神間7市の情報提供調査結果(市民オンブズ西宮「通信65号」2021・3・11)

西宮市の事例 提供情報 ①氏名 ②出生年月日

            ③男女の別 ④住所(住基4情報)

対象者

(日本国籍を有しない者及びDV等支援措置対象者を除く)

 1998年4月2日から99年4月1日生まれの5153件

 2002年4月2日から03年4月1日生まれの5028件

*神戸市は提供しています。

宝塚市・川西市は提供していません。

芦屋市

 兵庫地方協力本部長から情報の提出について「依頼」 を受け、「覚書」を締結し、2002年4月2日~03年4 月1日生まれに男女(日本人住民に限る)約800件、及び1998年4月2日~99年4月1日生まれ約800件を2020年に(自衛隊)西宮地域事務所に提供。

尼崎市

 兵庫地方協力本部長から「資料の提出請求書」を受け、「覚書」を締結し、2001年4月2日~02年4月1日生まれの男女(日本人住民に限る・DV等支援措置対象者除く)約5000件、及び1998年4月2日~99年4月1日生まれ約5000件を2019年度に提供。同2002年4月2日~03年4月1日生まれの約5000件、及び1999年4月2日~2000年4月1日生まれの約5000件を2020年度に提供。

伊丹市

 兵庫地方協力隊本部長から情報の提供「依頼」を受け、提出について「回答」を行い、1998年4月2日~99年4月1日生まれの者(日本人住民に限る)、2002年4月2日~03年4月1日生まれの者の名簿を2019年度に伊丹地域事務所に提供。同1999年4月 2日~2000年4月1日生まれの者の名簿を2020年度に提供。