佐喜眞美術館で再認識した「沖縄戦の図」の力

 - アリの一言  (goo.ne.jp)

  

 

 オスプレイが飛来する普天間基地に文字通り隣接する佐喜眞美術館(沖縄県宜野湾市、写真中・右)を、15日訪れました。常設展示の「沖縄戦の図」(写真左の奥)(丸木位里・丸木俊、1984年、4×8・5㍍))を見るのはこれが3度目です。

 

 何度見ても大きな感動を受けるのは変わりません。「集団自決」(強制集団死)、スパイ容疑で日本兵に殺された朝鮮人、米軍の艦隊、血で染まった海、ガマ(以上、同美術館の案内しおりの解説より)…。この絵にはまさに沖縄戦の実相が詰まっています。

 

 そんな中、今回気になったのが、右上端に描かれている数個の「風車」です。これはいったい何を示しているのでしょうか?

 館のスタッフに聞きました。

 

「佐喜眞道夫館長が以前、丸木俊さんにお聞きしたところ、「犠牲になった子どもたちへの手向け」だと言われたそうです。それに、沖縄では97歳の「カジマヤー」を風車でお祝いします。次に生まれてくるときは「カジマヤー」を祝えるような平和な世の中になっていますように、という意味もあるのではないでしょうか」

 

 「沖縄戦の図」の横に、丸木夫妻が書いた沖縄戦の絵本が置いてありました。その「あとがき」で位里さんがこう書いています。

 

子どもたちにつたえたいこと せんそうというものがどんなにひどいもので、にんげんがにんげんをころしあうなんて、これほど世の中でいけないことはないということを、みんなにかんがえてもらうために(この絵本を書きました)」(『おきなわ 島のこえ ヌチドウ タカラ<いのちこそ たから>』小峰書店1984年)

 

 「沖縄戦の図」は、犠牲になった沖縄の人々への哀悼、そして帝国軍隊への怒りとともに、次の世の子どもたちへの愛と希望が詰まった作品なのです。

 

 そういえば、絵の中心には1人の少年が立っています。館の案内しおりには、「真実を見つめる少年」とあります。

 

 夫妻がこの絵を描いて40年。現下の情勢は、「おとな」こそが、「真実を見つめる」必要があり、位里さんが絵本の「あとがき」で書いた言葉を、世界の「おとな」こそ胸に刻まなければならないと、この絵は訴えているように見えました。