阿部 治正

 

昨日は、千葉県当局に対して、来年の5月に千葉県の幕張メッセで開催が予定される国際武器見本市、DSEIジャパンに幕張メッセを貸し出すなという要請を行いました。

 

千葉県当局は、イスラエルのエルビット・システムをはじめとする国際的に名だたる軍需企業が出展し商談するこの武器見本市を、よりにもよって「福祉目的だ」「千葉県の産業振興に資する」など理由でこれまでも許可し、来年もまたそうしようとしています。

 

「福祉目的」などという理屈が完全に破綻していることは論をまちません。また「千葉県の産業振興に資する」という理屈も、「軍拡の不経済」という道理を知らない者のたわごとです。

 

軍需が産業の振興に寄与するという議論には、たいていは次のような理屈が用意されています。「軍需産業によって多くの雇用が生まれ、それに伴う消費や投資が経済全体を活性化させる」、あるいは「軍需産業は高度技術の開発や革新を促進し、それが民間産業にも波及して経済発展に寄与する」云々。

 

しかし、軍需そのために費やされる資本や国家財政=税は、実際には経済の活性化には貢献していません。それらの資本や財政はむしろ民生部門に投資されるべきであり、その方が消費や投資はもちろん技術革新への波及効果も大きく、経済全体の活性化に効果を持つことは言うまでもありません。大きな軍需産業を持つ米国やイスラエルなどの経済が強く見えるのは、軍需産業の貢献によるものではなく、軍需以外の民生や諸産業分野の経済規模やそこでの経済活動の効果です。

 

同じ理屈ですが、「特に経済が不況にあるときや需要が低迷しているときには、軍需支出が有効な経済政策の一環として機能する」という軍事ケインズ主義の理屈も用いられます。しかし、そこで刺激される需要とはいったいどういう内容かが重要です。兵器などが実際に使用された場合、それは人を殺傷し生産基盤を破壊する戦争です。また使用されなければただの滞貨物、経済と社会の巨大なお荷物となります。経済の表面上の「活性化」や「景気上昇」、つまり企業の帳簿上の売上げや株価の数値の上昇を一時的にはもたらすかもしれませんが、その裏では社会が本当に必要としている富の生産とその消費の停滞や衰退を生み出さざるをえないのです。

 

そもそも軍需部門が生み出す生産物、戦車やミサイルや空母や潜水艦は、企業の生産過程に入っていきません。そこで再生産を拡大していく役割を果たすことはないのです。逆に、その規模が大きくなればなるほど、本来の富の再生産活動を圧迫し、その重荷となり、それを委縮させることにならざるをえないのです。

 

熊谷県政は、4度も「死の商人」の血塗られたビジネスのお先棒を担ぐのか。私たち県民はそれを許すのか。国際武器見本市、DSEIジャパンの開催は、必ずストップさせなければなりません。