色鉛筆・・・

 袴田巌さんに完全無罪判決を!検察は何一つ有罪立証が出来ていない
【ワーカーズ五月一日号】

 


4月24日(水)第14回再審公判が行われる小雨の朝、静岡地裁に70人ほどの傍聴希望者が訪れた。毎回抽選が行われ、当選の確率ほぼ3~5人に1人、14回目にして初めてという人もいる。私は当たり、傍聴(3度目)に入る。

 この日11時から、昼の休憩をはさみ14時45分まで、検察側はDNA型鑑定について弁護側に反論するため、意見書や過去の捜査報告書などの証拠をただただ延々と読み上げ続け、「犯行着衣の血痕と袴田さんのDNA型は一致しない」との本田鑑定は、信頼できないことを証明しようとした。淡々と文書を読み上げる声が続く中、いつもはメモを取る傍聴席の記者も傍聴人も、この日ほとんどメモを取らない、それほど空虚な内容だった。

3月25・26・27日と3日連続行われた公判での証人尋問の際も、着衣の血痕に赤味が残るか否かをめぐる相方の攻防が「最大の山場」と言われたものの、結局昨年の東京高裁の決定どうり、赤味は残らないつまり「捏造されたの証拠」であることが明らかとなった。弁護側証人の旭川医科大の清水恵子教授らは実証実験を繰り返し、赤味が残らない確証を得ているのに対し、検察側証人の法医学者、久留米大の神田芳郎教授らは、実験をすること無く7人で、3回のWeb会議の末に作った共同鑑定書を提出し、うち2人が公判に出席。法廷では延々と専門用語を並べ立てる他は、清水教授らの実験へのまるで重箱の隅をつつくような発言を繰り返した。有罪立証を支えるはずの証人尋問が、的外れでむしろ逆効果を招いた印象で、お粗末としか言い様がない。終了後の記者会見で角替清美弁護士の「料理しない人間が文句言ってるに等しい」との怒りの発言は言い得て妙、痛快。検察組織として、袴田さんの有罪を立証しようとしているが、立証とはほど遠いお粗末な内容だ。

1966年清水の一家4人が殺害された事件で、袴田さんは逮捕・拷問の末「死刑囚」とされてしまったが、無実の訴えを叫び続け58年、今ようやくその声が届きそうな所にたどり着こうとしている。2014年3月静岡地裁(村山浩昭裁判長)が、そして2023年3月には東京高裁(大善文男裁判長)がともに再審開始決定、つまり「間違った裁判をやり直す」との決定をすでに出している。2度ともに捜査機関による証拠の捏造の可能性が指摘された。

無罪は明らかにもかかわらず、なぜ今だにそこにたどり着けないのか?原因は10年前の検察の抗告(不服申し立て)であり、さらに昨年3月の決定時には抗告こそしなかったものの(出来なかった?)、「立証方針を決めるために」と3ヶ月間もの猶予期間を求め、あげく7月には「有罪立証」の方針を発表した検察にある。その後ようやく10月から始まった再審公判は、今年5月22日の結審までの間15回も、毎回11時~17時まで行われている。

そこでの検察は、今回の再審公判のために新しく準備したものはほとんど何も無く、今まで(確定審)と全く同じ主張、根拠を繰り返しているのみということに驚く。検察の面子を守るためなのか、異常なまでの裁判の引き延ばし、膨大な時間の浪費だとーーー傍聴のたびに痛感する。これは犯罪的行為であるとさえ思う。かつて証拠の捏造に手を染め、それを正すどころか加担した検察が今取り組むべき事は、その誤りを正すこと以外ないはずではないのか?。

4月24日、私は法廷の入り口の扉の『住居侵入・強盗殺人・現住建造物等放火(再審)被告事件ーー被告人袴田巌』と書かれた張り紙が初めて目に入り心が凍る思いをした。今回の公判での一般傍聴人に対する過剰とも言える警備のため、法廷のある二階の廊下では自由に行動することができず今まで見落としていたものだ。一刻も早い無罪判決を勝ち取らねばならない。この事件の犯人は、袴田さんではないことは明らかなのだから 。

5月22日に結審、判決はほぼ3ヶ月後の予定だという。(澄)

 ★集会案内
 ・日 時  5月11日(土)13時半~16時
  ・会 場  静岡労政会館ホール
  ・集会名 「袴田さん完全無罪へ、死刑求刑を許さない 逆転のクロスカウンターで KO 勝利を!」
  ・主 催   袴田巌さんの再審無罪を求める実行委員会
★集会案内
  ・日 時  6月30日(日) 13時半~16時
  ・会 場  清水テルサ6F 研修室
・集会名 「袴田巌さんに完全無罪判決を!」清水集会
・主 催   袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会