<東海第2原発 再考再稼働>(65)避難不可能、能登で白日に 

東海第2差し止め訴訟弁護団弁護士・大河陽子さん(41)

 (msn.com)

<東海第2原発 再考再稼働>(65)避難不可能、能登で白日に 東海第2差し止め訴訟弁護団弁護士・大河陽子さん(41)

<東海第2原発 再考再稼働>(65)避難不可能、能登で白日に 東海第2差し止め訴訟弁護団弁護士・大河陽子さん(41)© 東京新聞 提供

 

 1月1日に能登半島地震が起き、住民の家屋倒壊と道路寸断が報じられ、大変なことが起きていると驚いた。

 日本原子力発電が再稼働を目指している東海第2原発(茨城県東海村)の運転差し止め訴訟で、水戸地裁の一審に続き、東京高裁での控訴審でも住民側弁護団の一員を務めている。

 

 弁護団の中での担当としては、東海第2で重大事故が起きた場合に備えて、東海村はじめ30キロ圏内の14市町村に策定が義務付けられている広域避難計画と、それを支援するため県が策定した避難計画を検証している。

 

 避難計画の大きな構造は、放射能の被ばくリスクを低減するための屋内退避と広域避難からなる。原発事故と地震や津波が重なる複合災害で家屋倒壊や道路寸断などが発生し、屋内退避も広域避難もどちらもできないのでは、住民は被ばくしてしまう。

 

 東海第2の差し止め訴訟では、2021年3月の水戸地裁判決が避難計画の不備を理由に差し止めを認めた。それもあって、ことし2月20日の控訴審第2回口頭弁論では急きょ予定を変更し、能登半島地震の影響を取り上げて主張した。

 

 第2回弁論には、能登半島地震による各地の家屋や道路の損壊状況のほか、原子力規制委員会の山中伸介委員長が1月10日の記者会見で「屋内退避ができないような状況が発生したのは事実」と述べた記録など46件の証拠を提出。原発事故との複合災害では、屋内退避や避難が不可能であることが明らかになったと指摘した。

 

 同様の理由から、東海第2原発の県などの避難計画には、実現可能性も実効性もないと主張した。能登半島地震は、地震大国の日本で大地震にともなう原発事故時に避難計画が機能しないことを、白日のもとにさらした。そのことを記憶が鮮明なうちに、高裁の裁判官に訴えたかった。

 

 東海第2原発は、山がちな地形の能登半島と違って平野部にあるから状況が異なるという声がある。しかし、例えば常陸太田市の避難計画では、山間部を北上して福島県に避難する経路が設定されている。

 経路となる国道118号などは、県の地震被害想定調査報告書で想定する「棚倉破砕帯東縁断層、同西縁断層の連動による地震(棚倉破砕帯)」によって東海第2で事故が起きた場合、まさに震源地方向に向かって避難することになる。国道118号は複数箇所が土砂災害危険区域などに指定されてもいる。

 

 東海第2の30キロ圏内14市町村のうち、これまで7市町村が避難計画を公表したが、未策定の自治体を含めて計画を実効性のあるものにするよう求めたい。能登半島地震を受けて避難計画を抜本的に見直さなければ、原発が安全とは言えない。再稼働してはならないと考える。

 

 抜本的見直しは容易ではないが、避難計画は規制委がまとめた原子力災害対策指針の1ページ目にあるように「住民の視点に立つ」ものであるべきだ。どのような被害が降りかかってくるかを徹底的に検討し、対策する必要がある。(聞き手・竹島勇)