【Bunnmei ブログ】

 

日本保守党は、去年作家・百田尚樹氏とジャーナリスト・有本香氏によって設立された新興の政治団体です。「日本を豊かに、強く。」をスローガンに掲げ、戦前の古風な家族観や勤勉さといった日本的な価値観の回帰とか、反面では日米同盟の強化による、外交・安全保障政策などを政策提言して日本の保守層の掘りおこしを狙っています。今回の衆議院補選に出馬しています。

 

日本保守党の理念は以下のようです。

伝統的な家族観や価値観を尊重し、少子高齢化対策や子育て支援などの政策を推進すると。またそれと矛盾していますが、規制緩和や減税などの政策を通じて、経済成長と雇用創出を目指すとしています。政策の整合性のないのが特徴と言えば特徴。結局はアベノミクスのような新自由主義による労働者の無制限な搾取すなわち「世界で一番企業が活躍できる国」を目指しているのでしょう。

さらに自衛隊の強化や日米同盟の深化など軍事力の底上げを目指しています。軍治派による国民の窮乏化しかイメージできませんね。

 

政策の特色は教育基本法の改正や英語教育の強化など、教育保守的改革を推進する。 憲法改正議論を積極的に進めるとか。産業界向けの原子力発電の活用をうたっています。業界べったりも明らかです。民衆の期待する根本的改革――経済格差の根本是正など――が見えてきません。

 

党設立当初から、安倍元首相の支持者や関係者を中心に多くの支持を集めていました。百田氏自身も安倍元首相と親交があり、党の綱領にも安倍政権時代の政策を継承していくことが明記されています。そうなのです、百田派とは要するに安倍派の中の保守反動派の結集を目指したものと考えられます。下添付記事は、初めての国政選挙(東京十五区)の分析をしているので貼り付けさせていただきました。(了)

 

 

ネットだけの人気に限界も…

一枚岩ではない日本保守党の将来-岩盤保守の内情【衆院東京15区補選】

(古谷経衡) - エキスパート - Yahoo!ニュース

 

 

日本保守党にとって初の国政選挙である東京15区補選。公認の飯山氏は4位で落選した(写真:アフロ)

 東京15区補選は、我々にあまりに多くの示唆を与えてくれた。自民党と公明党が公認・推薦・支持する候補が存在しない場合、有権者の投票行動はどうなるのか―。従来「思考実験」でしかなかったものが、実際の小選挙区で実証されたのだ。

 結果は既報の通りで、立憲民主党の酒井菜摘氏が当選した。落選したものの、2位につけたのは参議院議員を辞職して臨んだ須藤元気氏であった選挙は当選した人の票分析をしていればそれで終わりというものではない。

 重要なのは負け方である。須藤氏が2位につけたのは氏への依然として大きな期待感の表れであり、強い組織票もなく選挙区を電飾自転車で回りどぶ板を展開した須藤氏の健闘は、確実に次につながる結果になった。或る意味東京15区補選の真の勝利者は須藤元気氏かもしれない。

・日本保守党公認、飯山あかり氏の得票は4位

 さて私が従前からきわめて注目していたのは、2023年9月に結成された日本保守党の公認を受けた飯山陽(あかり)氏の得票動向である。結果、同党公認の飯山氏の得票は24,264票で4位に終わった。

 日本保守党は岸田政権におけるLGBT理解増進法に反発する形で、作家の百田尚樹氏を代表として設立され、当初は「百田新党」などと呼ばれた。同党は有権者の約2%と推計される、いわゆる「岩盤保守」の一部から絶大な支持を得る形で、今次東京15区補選で初めての国政選挙を戦うことになった。

 ネットでは主にX(旧ツイッター)で #日本保守党 #飯山あかり が連日トレンド入りし、その盛り上がりは公示前からすでに最高潮にあったといってよい。また同党支持を明確にする『HANADA』などの保守系論壇誌も、毎号日本保守党への全面支援を明確にする紙面構成で、雑誌媒体もこれに加勢した。

 日本保守党が結党して約8か月。乾坤一擲の大勝負に、日本保守党は岩盤保守を巻き込みながら臨んだのである。その結果として飯山氏の4位落選をどうとらえるのかが、本稿の主目的である。

・日本保守党結党に至る前史をふりかえる

 東京15区の岩盤保守の動向を分析する前に、日本保守党が今次選挙に至る前史を簡単に紐解きたい。

 第二次安倍政権ののち、菅政権、岸田政権となったが、岩盤保守層はおおむね自民党を支持してきた。2021年9月、自民党総裁選では安倍氏の理念を引き継ぐとされる高市早苗氏を岩盤保守は猛烈に支持するキャンペーンを張った。総裁選で投票資格のない非自民党員もが一丸となって、ネットや保守系論壇誌でキャンペーンを行った。と同時に、河野太郎氏への批判を強めた。

 結果、高市氏は3位となり、決選投票に進めなかった。岩盤保守は岸田新内閣で高市氏の「官房長官」ないし「防衛大臣」などへの重要閣僚起用を期待したが、実際の人事は政調会長であり、その期待は裏切られたと映った(とはいえ、党三役たる政調会長への抜擢は厚遇なのであるが)。

 2022年8月の内閣改造では、高市氏は内閣府特命担当大臣(経済安保など)として入閣したが、またしても官房長官などではなかったため、このあたりから岩盤保守の「岸田離れ」が加速していく。それと相前後して安倍元総理銃撃事件があり、岩盤保守は精神的支柱であった安倍氏を失ったことにより一時的混乱状態に陥った。

 同年11月には、岩盤保守のプラットフォーム的存在であったネット番組『真相深入り!虎ノ門ニュース』が突然終了となる。背景には運営会社であったDHCがオリックスに買収されたことで、オ社側のブランドイメージへの配慮があったと思われる。

 このとき、同番組の二大看板であった作家の百田尚樹氏とジャーナリストの有本香氏はすぐさま『ニュースあさ8時!』(略称・あさ8)の配信を開始する。一方、『真相深入り!虎ノ門ニュース』の旧スタッフらが中心となって、翌2023年3月には『帰ってきた 虎ノ門ニュース』が事実上の後継番組としてネット配信がスタートした。

・日本保守党は「岩盤保守層」を固めきれていない~岩盤保守の内部分裂

image-1714399349740.jpeg
筆者制作

 私が何が言いたいのかといえば、おおよそ2022年末まで岩盤保守の中心的存在であった旧虎ノ門ニュースの人々は、翌年までに「あさ8」と「帰ってきた」に分裂したということである。事実、「帰ってきた」の方には原則的に元看板コメンテーターであった百田氏や有本氏の出演はない。

 この分裂のまま、「あさ8」側の中心人物である百田氏、有本氏らが岸田政権におけるLGBT理解増進法を契機として2023年9月に「日本保守党」を結成する流れになる。LGBT法は表面上結党の理由ではあったが、それ以前から岩盤保守界隈では、岸田政権下による高市氏の冷遇(と彼らには見える)という状況が、「反岸田」「反岸田自民」となってふつふつと蠢(うごめ)いていたのである。

 実は現在、岩盤保守界隈には百田氏らが代表を務める日本保守党と、それに反目するグループが存在する。便宜上、前者を百田派、後者を反百田派とする。現在、反百田派の中心的存在とみなされているのは、経済評論家の上念司氏、政治アナリストの渡瀬裕哉氏、元早稲田大学教授の有馬哲夫氏、経済評論家の渡邉哲也氏、ほかに一部の政治系ユーチューバーなどであり、これに最近ではの発言がヘイトスピーチとされ、訴訟になっている大阪府泉南市議会議員の添田詩織氏などが加わっているとされる。さらに中堅から比較的新人の保守系言論人や文化人などの一部も反百田派に親和的な姿勢を見せており、反百田派は決して小さいグループではない。

 また2020年に設立された政治団体『新党くにもり』は、反グローバリズムと反自民党を鮮明にし、日本保守党関係者と緊張状態にある。従来「くにもり」は岩盤保守の中でも少数勢力とされていたが、近年では政治的進歩派(れいわ新選組など一部の野党)の支持層の一部に食い込んでいることから、こちらも無視できる数ではなく、巨視的に言えば反百田派に分類されてよい。

 ちなみに今次の補選では参政党から吉川候補が出馬し約8,600票を獲得したが、私の過去分析にあるように、参政党は岩盤保守と一部分で重なるものの、その多くは「オーガニック推進」「反ワクチン」「スピリチュアル(精神世界)」の傾倒者で占められているので、本稿では分析の対象からは除外している。

 反百田派とされる彼らは日本保守党への応援を一切行っていないばかりか、それぞれのSNSや動画チャンネルなどで日本保守党への批判を繰り返しており、またそれに応酬する形で、百田派と反百田派に属するとされるネットユーザー双方による喧騒が続いているというのが現在の状態である。

 本稿冒頭に、「(日本保守党は)有権者の約2%と推計される、いわゆる「岩盤保守」の一部から絶大な支持を得る」と書いたが、あえて”一部”と留保したのは、日本保守党を巡ってすでに岩盤保守内部で分裂が起こっているからだ(参考として概略図を上記のとおり制作した)。

 つまり日本保守党は岩盤保守の全部を代表するものではない。当然岩盤保守の圧倒的大多数が日本保守党を支持しているわけでもない。

 

・・・略