共同通信「天皇制世論調査」にみる偏向とタブー 

- アリの一言  (goo.ne.jp)

 

 

 

 全国の地方紙は28日朝刊で一斉に共同通信社の「皇室に関する世論調査」結果を大きく報じました。同日の各紙には「春の褒章」も発表されており、ダブルで天皇制を後押しする紙面になっています。

 

 世論調査は、全国250地点から男女3千人を無作為抽出し郵送で実施。4月15日までに届いた有効回答は1966。ここでは回答結果より、質問項目に着目します。質問は次の20項目です。

 

 ①皇室にどの程度関心があるか②天皇が果たしている役割のうち最も大きいのは(4つ例示の中から選択)③日本に天皇制があった方がよいか④皇位継承の安定性に危機感を感じるか⑤有識者会議の議論先送りを支持するか⑥皇位継承の議論をどうすべきか⑦「女性天皇」に賛成か⑧「賛成」の理由⑨「反対」の理由⑩「女系天皇」に賛成か⑪旧宮家の男性子孫を皇族とすることに賛成か⑫「賛成」の理由⑬「反対」の理由⑭「女性宮家」の創設に賛成か⑮即位して5年の天皇の活動で評価するものを2つ(10の例示の中から選択)⑯天皇・皇后のオンライン行事参加について⑰上皇の退位はよかったか⑱退位に関する法整備は必要か⑲皇族の人格が侵害されていると思うか⑳皇室の情報発信に何が必要か。

 

 最大の特徴は、当然質問すべきことが欠落していることです。

 

 第3項「天皇制があった方がよいか」の回答は、「あった方がよい」44%、「どちらかといえばあった方がよい」44%、「どちらかといえばない方がよい」7%、「ない方がよい」3%でした。大別して88%が存続派、10%が廃止派といえるでしょう。

 

 そこで次の質問は当然、「あった方がいいと思う理由」「ない方がいいと思う理由か」であるべきです。しかし、共同通信の質問にはこの項目がありません。

 

 しかし質問は、「天皇の果たしている役割」「5年間で評価できる活動」「皇位継承の安定性」「女性天皇の是非」などなど、実質的に「あった方がいい」ことを前提に展開されています。

 

 すなわち、実際に欠落しているのは「ない方がいいと思う理由」だけです。これはきわめて重大な偏向です。

 

 存続支持88%と廃止支持10%は大差があるように思えますが、日本の皇民化教育の歴史と今日の政治社会体制を考えれば、10%は決して過小評価できません。また存続派の半分は「どちらかといえば」という消極的存続です。廃止すべきという理由を聞くことは議論を深める上で不可欠です。

 

 なぜこの項目を欠落させたのか。共同通信がそもそも「天皇制存続」の立場に立っているからです。自社の立場から質問項目を選択するのはジャーナリズムとは無縁の偏向にほかなりません。

 

 もう1つ理由が考えられます。それは質問②⑮で挙げたように、「天皇制がないほうがいい理由」を例示することが憚れたからではないでしょうか。ない方がいい理由は口にすることもできない。そこにメディアの「天皇制タブー」が厳然と表れているのではないでしょうか。

 

 たとえば、「天皇制がないほうがいいと思う理由を次から2つ選んでください」として次を例示したらどうでしょう。

 

・そもそも天皇制は身分差別の根源であり、全ての人の平等と人権尊重に真っ向から反する。

・「男系男子」の世襲制である天皇制はジェンダー差別の元凶である。

・天皇制は皇室神道に立脚した制度であり、憲法の政教分離違反である。

・現在の象徴天皇制は天皇裕仁の戦争責任を棚上げにして天皇制を継続させたものである。

・自衛隊が天皇への敬慕を公言しているように、新たな戦争国家化に利用される可能性が大きい。

・「皇室外交」は時の政権の外交政策に好都合な政治利用である。

・天皇の国会開会式出席はじめ、天皇制は今日の翼賛議会化のシンボルになっている。

・「被災地訪問」などによる慰撫は、市民の「自助」「共助」を促し政府の責任追及を抑える役割を果たしている。

・天皇はじめ皇族の諸権利が制限されていることは彼らへの人権侵害である。

・予算で明文化されている皇室費(内廷費、皇族費、宮廷費)だけでも101億円(2024年度)、その他「国事行為」とされている宗教儀式、邸宅維持費など膨大な費用は、市民の税金の大変な無駄遣いである。

 

 以上は私が天皇制を即時廃止すべきだと考える主な理由です。こうした例示が行われれば、天皇制の是非を議論するたたき台になりうるのではないでしょうか。