【Bunnmei ブログ】

 

ウクライナの汚職問題は深刻で、その背景には長い歴史があります。ソビエト連邦の崩壊後、旧ソ連圏諸国では企業と政治家の不正な関係が根付き、ウクライナも例外ではありません。バウチャー(私有化小切手)をめぐる乱用や国有資産の不正な取得など、高官や企業幹部による不正行為が横行しました。これがウクライナ版オリガルヒ(財閥資本)の誕生です。その時立ち現れた体制が別名クローニー資本主義とされるものです。それを打破するのが民衆の課題です。ロシアのプーチン政権からの侵略や支配と戦うと同時に、国内の資本家の支配とも戦いましょう。

 

ウクライナ人民はクローニー資本主義を克服しなければなりません。クローニー資本主義は、政府や政治権力が特定の財閥や企業グループに有利な条件を提供し、その結果としてその企業や財閥が国家資源や政治的権力を利用して利益を追求する経済体制のことを指します。彼らの排除がなければ、汚職の蔓延ばかりではなくロシア型の資本主義や権威主義的な政治体制から脱却することは難しいでしょう。

 

歴史をソ連解体の時期までさかのぼれば、ウクライナの市場経済化はロシアとは異なり、比較的緩やかに進行しました。しかし、それでも不正行為や財政の乱れが常態化し、オリガルヒや高官たちの癒着が国の政治を形作ってきました。歴代の大統領もオリガルヒ出身(ゼレンスキー除く)であり、国民は彼らとの対立を通じて目覚めてきました。

 

ウクライナのオリガルヒ・財閥は、複数の巨大事業やマスメディアを支配し、政治的な影響力も持っています。彼らは政党を「所有」し、議員を国会に送り込み自らの利益のために政府の政策を操作してきました。マイダン革命も、オリガルヒ同士の政治的な争いから発端しましたが、予想を超えて大衆が覚醒し大運動に至った出来事でした。支配者たちの思惑を超えて大衆が政治を動かす表舞台に初めて立ったのです。

 

このように、ウクライナの大資本家と政治家の関係は常に汚いものであり、汚職が横行しています。ゼレンスキーはオルガルヒ出身ではないものの、彼らの勢力と妥協し、他方では西側の新自由主義的路線を労働者の抵抗を抑えつつ突き進んできました。そのため、現在の政権も汚職に対する取り組みを行っていますが、その背景には権力闘争や階級闘争があります。ゼレンスキー政権はオリガルヒや腐敗政治家の追放と妥協を繰り返しつつ、妥協しながら国家運営を図っています。

 

現在のウクライナ戦争は、階級的かつ歴史的な見方をすれば、ロシアのオルガルヒや官僚などのプーチン政権が、ウクライナの民衆を支配収奪するのか、それともゼレンスキーらのオルガルヒや官僚やそして欧米諸国の新自由主義資本がウクライナ民衆を収奪するかの戦いにほかなりません。戦争とは外観では「国家対国家」ですが、本質的には双方の階級的矛盾と対立の一部なのです。

参照ウクライナ人民はそれでも戦う 腐敗堕落したゼ政権を乗り越えよう | ワーカーズ ブログ

 

また、ウクライナは新自由主義の影響が強まっています。いまでは欧米の金融資本から産業資本まで、「ウクライナの勝利」を支援しつつ戦後の資本進出を準備しています。ウクライナ政府は財閥と外国資本そして中産階級を中心として欧米の新自由主義への転換を目指しています。ゼ政権の汚職撲滅の取り組みは、オリガルヒの影響力排除と規制を意味しますが、彼らとも妥協し協力を得ているので、中途半端に終始するほかありません。

 

ゼレンスキーの政治行動にはポピュリズムに依拠し、「ロシア侵略に抗う指導者」「侵略ロシアの抵抗のシンボル」として労働者や小農民を支持基盤としてきました。しかし、彼の行動は、権力の再集中や国家再建の試みと結びついており、かつての「開発独裁」のような志向性も見えます。すなわち強権的な自由資本主義の導入です。

 

伝統的な汚職ばかりではなく、ゼレンスキーの政権に対する西側資本や支援の導入などが呼び起こす新たな汚職政治も増大しています。仮にゼ政権が西側諸国の資本や援助で対ロシア戦争に「勝利」を得たとしても、つぎに待ち構えているのが新自由主義的資本支配です。それらに対して市民・兵士・労働者が階級的視点からゼ政権を暴露して闘うことがますます重要です。(了)

 

ウクライナ農業相を一時勾留 11億円相当の国有地不正取得に関与か

 (msn.com)

 

700万ドル(約11億円)相当の国有地の不正取得に関与したとして摘発された、ウクライナのソリスキー農業食料相=キーウで2023年6月、ロイター

700万ドル(約11億円)相当の国有地の不正取得に関与したとして摘発された、ウクライナのソリスキー農業食料相=キーウで2023年6月、ロイター© 毎日新聞 提供

 

 ウクライナの高等反汚職裁判所は26日、700万ドル(約11億円)相当の国有地の不正取得に関与したとして、ソリスキー農業食料相の勾留を命じた。ソリスキー氏は勾留後、保釈された。ウクライナは欧州連合(EU)加盟を目指し、その条件を満たすため汚職防止に力を入れているが、現職大臣が摘発されたのは初めてという。

 ロイター通信によると、ソリスキー氏は弁護士として活動していた2017~21年、仲間と共に、国営企業の所有地を第三者へ譲渡させるなどの手法で利益を得た疑いがある。国家汚職対策局が捜査していた。ソリスキー氏は容疑を否認しているが、25日に辞任の意向を示した。

 報道によると、ソリスキー氏は複数の農業関連ビジネスを営み、22年に農業食料相に就任した。黒海経由でのウクライナ産穀物輸出を巡る交渉などで中心的な役割を果たした。

 ウクライナでは、昨年、当時のレズニコフ国防相が国防省の汚職疑惑の監督責任を取る形で更迭された