【Bunnmei ブログ】

 

今回の日米共同声明では、5月末の日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)で「突っ込んだ議論」を行うことで一致したが、今後自衛隊がますます米国の軍事戦略と一体化していくのは間違いないところです。こうして、政府と自衛隊は完全に「専守防衛」を投げ捨て、米国のグローバーパートナーとして、具体的には対中国(対ロシア)軍事包囲網の形成のために、米軍を補完しつつ米軍の指揮の中に深く組み込まれることになります。下添付『日刊ゲンダイ』記事のよう憂慮するのは当然です。

 

ただし、これが『日刊ゲンダイ』の記事のような単純な「対米従属」かといえば、そうではないのです。この点が大変重要です。日本の軍拡勢力、すなわち、政府、自民党国防族、防衛省、自衛隊、経団連そして極右反動派などが米国の軍事力との深い同盟関係を使って、アジアそして世界の軍事大国として台頭する意志を示したのです。そのように理解すべきです。

 

例えば中国やロシアは反米や非米国家の前提の上で軍事力を増強しています。ゆえに、米国からの激しい圧力を受けています。それに対して日本は、「米国と共に」そして米国の相対的な国力低下の中で、その足らざる点を補う形で軍事力の増強とその世界展開を目指しているのです。極めて狡猾な策略だと言えます。つまり、政府、財界、自衛隊にとっての目論見は、このような道筋を経つつアジアの軍事大国として復活を遂げることなのです。米国を国際パートナーとして中国あるいはロシアと対峙することを選択したのです。

 

次に米国側の思惑に沿ってみてみましょう。米国の戦略家たちは中東など他の地域に対する介入を減らし、中国けん制に力を集中させるとともに、同盟国により多くの役割と費用を負わせる戦略を構想してきました。米国の近年採用したミニラテラル同盟構造とは、米国を中心とした従来の二国間同盟(ハブ・アンド・スポーク型)から、米国と日本、インド、オーストラリアなどの主要同盟国が中心となり、複数の小規模な「多国間同盟」を組み合わせたネットワーク型安全保障体制を指します。

 

例えばQUAD: 米国、日本、インド、オーストラリアによる四カ国安全保障協力枠組み、AUKUS: 米国、英国、オーストラリアによる潜水艦技術協力枠組み、米日印: 米国、日本、インドによる三カ国安全保障協力・・等々に体現されているとされます。このような構造において、米国は軍や財政の負担を軽減しつつも、米国の主導権と国益を貫くとことができると皮算用にふけっています。

 

日本は、このような米国の世界戦略の変化にもうまく乗り、とくに安倍政権以来かなり強引なペースで軍拡と米国との「同盟強化」と「多国間同盟」の拡大を図ってきました。その背景には、日本資本主義の対外投資が「純資産」としては世界一位であり、守るべき権益があらゆる大陸に及んでいるという現実です。日本は一時代昔には「貿易立国」と言われてきましたが、現在では――もちろん貿易は依然として重要ですが――資本の海外投資が飛躍的に進んだのです。

岸田首相の米議会演説 米軍と共に自衛隊の世界展開を公約! 日本帝国主義の復活を許すな! | ワーカーズ ブログ

 

ゆえに米国が「世界の警察官」としての立場をもはや維持できないのであれば、その空隙を日本が軍事力を飛躍的に高めて埋めてゆくということです。民衆にとっては負担増にしか過ぎなくとも、日本国家の支配層にとって軍拡はある種の必然性・必要性が存在するのです。裏返して言えば、日本単独では不可能な日本の持つ世界的権益の保護を、「米国との世界的同盟」で実現しようとしている考えられます。日本の軍拡の動機は、米国からの「強要」ではなく日本資本主義の内部にこそ存在するのです。日本においての反戦・反軍拡の戦いは、「反米」や「対米従属論」では戦えないのです。(了)

 

 

米国に差し出す自衛隊 国民には詐欺のような負担増と地獄の円安

|日刊ゲンダイDIGITAL (nikkan-gendai.com)

 

 

浮かれっぱなし(米公式夕食会で、バイデン大統領と乾杯する岸田首相)/(C)ロイター

 

裏金首相がいい気なものだ。訪米中の岸田首相は浮かれっぱなし。現地時間10日夜にはホワイトハウスで公式晩餐会が開かれ、岸田のウキウキ気分も最高潮に。やれ、英語でジョーク連発とか、バイデン大統領夫妻に何を贈ったとか、誰それがゲストに招かれ、どんな料理が出たとか、大メディアもバカげた話題で持ちきりだ。

 

すっかり裏金報道は後退し、崖っぷち首相はしてやったり。国賓訪米に政権浮揚をかけたかいがあったとウハウハだろうが、その代償を払うのは国民だ。岸田の破顔一笑に隠れて、この国が米国の戦争に巻き込まれるリスクは、また大きく跳ね上がってしまった。「未来のためのグローバル・パートナー」──。日米首脳会談後の共同声明にその答えがある。

 

防衛費のGDP比2%への増額や敵基地攻撃能力の保有、防衛装備移転三原則と運用指針の改定など、岸田が強引に推し進めた軍拡路線の全てに、米国側は「歓迎する」と表明。「安倍元首相ですらできなかったことを岸田首相はここまでやるのか」と国賓として遇された理由がよく分かる。

 

70を超える合意項目の柱は防衛・安全分野だ。とりわけ従来の安保体制を大きく転換させるのが、米軍と自衛隊の連携強化に向けた指揮・統制枠組みの見直しである。今後、自衛隊が米軍と完全に一体化し、事実上、米軍の作戦傘下に置かれることは避けられない。

 

国賓訪米を足がかりに脱・崖っぷちを期す。そんな保身だけのため、岸田は自衛隊を米国に差し出したも同然なのだ。

 

首相の地位保障を求めた対米隷属の極み

 

具体的には、自衛隊が今年度末に陸海空3部隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」を発足させるのに伴い、現在は作戦指揮権を持たない在日米軍の司令部機能を強化する方針だ。

 

在日米軍は約5万4000人規模。駐留部隊として世界最大を誇るが、指揮権は現在ハワイにあるインド太平洋軍司令部が握っている。在日米軍司令部(東京・横田基地)は日本側との事務的折衝、日米地位協定に関する調整を担うのみだ。

 

そこで在日米軍司令官の階級を「中将」から「大将」に格上げし、米軍の調整組織を日本に新たに設け、在日米軍司令官に一定の指揮権を委ねる案を検討中だ。共同声明では、5月末の日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)で「突っ込んだ議論」を行うことで一致したが、自衛隊がますます米国の軍事戦略に組み込まれていくのは間違いない。

 

例えば敵基地攻撃能力の運用だ。平和憲法に基づく「専守防衛」の国是をかなぐり捨て、米国から先制攻撃につながる巡航ミサイル「トマホーク」を送られても、攻撃目標地点を特定できなければ手に余る。いざ有事となれば、攻撃目標の「ターゲティング能力」など圧倒的な情報収集力を持つ米軍の指揮に従うほかないだろう。

 

いくら日本政府が「自衛隊の統合作戦司令部が米軍の指揮統制下に入ることはない」(林官房長官)と指揮権の独立を強調しても、しょせん建前論に過ぎない。実態は米軍の先制攻撃体制に自衛隊を献上。米国と共に米国のための戦争を仕掛ける準備を着々ということだ。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言った。

 

「岸田首相はやはり、自分の地位を守るためなら何でもやる人です。米軍と自衛隊の『高度の一体化』は、2018年に『第4次アーミテージ・ナイ報告書』で米国側が日本側に突きつけたもの。岸田首相は言われるがまま、自衛隊を米国に貢いだのです。訪米のたび、憲法破壊の軍拡を手土産にしてきたとはいえ、いよいよ日米安保体制が憲法と相いれなくなっても、躊躇すらしない。国内の窮地をしのごうと米国から政権延命のお墨付きを得たかったのでしょうが、ここまでしないと日本の首相は地位を保障されないのかと悲しくなります。岸田首相は対米隷属の極みです」

 

戦争リスクと歴史的な物価高で国民は不幸に

 

切り詰めても切り詰めても追いつかない(C)日刊ゲンダイ

 

共同声明には、ミサイルなど防衛装備品の共同開発・生産に向けた協議体「DICAS」の新設も盛り込まれた。米艦艇や航空機の大規模補修を、日本国内で日本の防衛産業に担わせることが念頭にある。とどのつまりが米軍の「下請け化」と、体のいい軍事費の肩代わりだ。他にも軍拡メニューは目白押しで、中国をにらんだ米英豪の安全保障協力の枠組み「AUKUS」との技術協力にも踏み込んだ。

 

「米国は中国と対峙する一方、直接対話を欠かさない。バイデン大統領は今月2日、日米首脳会談の前に習近平国家主席と電話で協議。イエレン財務長官を訪中させるなど、高官協議を続けています。そんな対中外交のしたたかさは岸田政権にはみじんも感じられず、『台湾有事』をあおるのみ。軍拡強化で中国など周辺諸国を刺激するだけでは、自ら戦禍に飛び込む危うさすら感じます」(金子勝氏=前出)