読書室  

『最新版 コロナワクチン 失敗の本質』宮沢孝幸・鳥集徹著宝島文庫

二〇二四年二月刊




〇国民の約八割が二回以上のワクチン接種をしたにもかかわらず、感染症は収束することなく、その後の第八波では過去最多の死者数も記録した。当初からコロナワクチンの安全性と有効性に警鐘を鳴らしてきた著者二人が、親本発刊から一年半後にコロナ騒動とワクチンを総括する。巻頭にはこの間の言行で京都大学を今年度末に免職になる宮沢氏と鳥集氏との特別対談が収録されている。コロナ関連書としては決定版というべき良書である〇

『京大 おどろきのウイルス学講義』(PHP新書二〇二一年四月一六日刊)で出版デビューした宮沢孝幸氏は、その後も『ウイルス学者の絶望』、『ウイルス学者の責任』、『なぜ私たちは存在するのか ウイルスがつなぐ生物の世界』の出版等で知られる新進気鋭の京都大学医生物学研究所ウイルス共進化分野准教授である。彼は東大からの移籍組だ。

 その彼と『コロナ自粛の大罪』(宝島社新書)等の優れた著書がある医療系ジャーナリスト・鳥集徹氏との対談による、コロナワクチンの「リスク」と終わらないコロナ騒動の「真相」に迫った新書の出版が、コロナ騒動の一総括として刊行されたのである。

 この本は、第一章コロナワクチンの「正体」、第二章コロナマネーの深い闇、第三章マスコミの大罪、第四章コロナ騒動を忘れるな、の全四章で構成されており、コロナワクチンの読み易い優れた総括本だと評価できる。何よりの特徴は、第一章には二十二の、第二章に十三の、第三章に七の、第四章に十一の実に丁寧な注釈があり、本書を読む時、私たちの理解を助ける知識が書かれている。特に第一章に注釈が多いことも実に納得である。

 そして二〇二二年八月に上梓されてから一年半の間に、余りにも多くの事が起き、また状況の変化もあったが、新書版で指摘された警告はことごとく現実となってしまった。

 本文庫は、新書版の冒頭にこの一年半を振り返る約五十頁の「文庫版特別対談」を付け、目下の大問題であるパンデミック条約と言論と学問の自由に対する不当な圧力、医学界の体質的な問題、そこから見えて来た「コロナウィルス」の正体を語り合ったものだ。

 ウイルス学の専門家で免疫学の権威でもある宮沢氏は、ほとんどの医師は免疫学を知らないとして、コロナワクチンに対しても疑問を持つなどの自主的な判断力はないと断言する。確かに偏差値が高いことが自慢のほとんどの医師は、受験のように決められた問題に決められた答えを解くことにはたけているが、自らの問題意識により現実の中に新たな問題を見つけ出して解く等の思考力など持ってはいない。そして自らも序列化することが好きなのである。宮沢氏は農学部畜産獣医学科出身であるから、下に見られているのである。

 本来であればコロナ対策の当否を科学的な立場から自由に討論し、適切な結論を提起すべき医師や医療研究者が、例えば宮沢氏のように自由な研究・啓蒙活動を封じられ、京都大学医生物学研究所を退職するまでに追い詰められたことは、本当に重大なことである。

 宮沢氏は、昨年には仙台駅頭でコロナは「人工ウイルス」だと叫んだのだが、その言行が京都大学の准教授の品格にふさわしくないとして今年度末には免職にされたのである。

 特別対談は、控え目な表現ながらも現に宮沢氏が受けていた圧力が垣間見えるよう、かなり踏み込んだ部分もある。昔、反権力の砦としての京都大学は今や東大と変わらない大学となったのだ。本文庫は、新書版をお読みになった方にとっても再読する価値がある。

 実際、ワクチンは効かないばかりか、その薬害が拡大していることが知られてきた。そして当然の展開として、接種する人は減る一方であり、ワクチンの大量廃棄が始まった。しかし当初ワクチンを接種せよと言っていた医師たちも沈黙するようになったのである。

 本書の帯には、「科学者たちよ、なぜ『史上最大の薬害』に沈黙するのか」との宮沢氏と鳥集氏に共通する、魂からの叫びが明記されている。まさに責任者出てこいである。

 コロナワクチンとは何か。その疑問に本書はしっかり答えている。一読を薦めたい。(直)