自衛隊と靖國神社

自衛隊へのシビリアンコントロールは機能しているか

-「自衛官は靖國に祀られるか」と説く元陸上幕僚長-(3)

 

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幹部自衛官らの靖國神社参拝

1月9日、小林弘樹陸上幕僚副長(陸将)が自ら委員長を務める「航空事故調査委員会」【注】の委員ら数十名の自衛隊幹部らと共に靖國神社を参拝した。小林副長らは公用車を使用していました。

小林副長は、時間休を取っての「私的行為」であると弁明しているが、「私的行為に」公用車を使用することはありえません。

参拝に際しては陸自の担当部署が実施計画書を作成していた。案内は41人に送られ、22人が参加したということです。

防衛省は、「宗教の礼拝所を部隊で参拝したり、隊員に参加を強制したりしてはならない」とした1974年の事務次官通達に抵触する可能性があるとして調査を開始しました(2024年1月12日付毎日新聞等)。

 

政教分離原則違反だけではない

1月13日付朝日新聞社説は、「陸自靖国参拝 旧軍との「断絶」どこえ」と題し、「憲法が定める「政教分離」の原則に抵触するというだけではない。侵略戦争と植民地支配という戦前の「負の歴史」への反省を踏まえ、平和憲法の下で新たに組織された自衛隊の原点が風化しているのではないかと疑わせる振る舞いではないか。・・・・・この機会に、陸自にとどまらず、自衛隊全体として靖国神社との関係を徹底的に点検すべきだ」と述べています。

そうです。幹部自衛官の靖國神社参拝は単に「政教分離原則」に抵触するだけに留まらないのです。

小泉純一郎首相〈当時〉は、靖國神社参拝を批判された際、日本国内で日本の首相が行けないところはどこもないと嘯き、伊勢神宮の参拝は批判されないのに、どうして靖國神社の参拝だけが批判されるのかと居直りました。

前段について「在日米軍基地にも自由に入れるのか」と突っ込みを入れたくもなりますが、問題は後段です。首相の伊勢神宮参拝も靖國神社参拝と同様、憲法20条の政教分離原則に明確に抵触する違憲な行為ですが、首相の伊勢神宮参拝は靖國神社参拝ほどの批判を受けていないのも事実です。もちろん韓国、中国等からの批判もありません。批判したら内政干渉です。中国、韓国等が批判するのは靖國神社参拝についてです。

首相ら公務員の靖國神社参拝には政教分離原則違反に留まらない重大な問題があります。前述したように靖國神社が聖戦史観に拠って立つ反憲法的、反社会的な施設だからです。

 

大甘な処分

1月26日、防衛省は、小林副長らの参拝は私的行為であり前記通達に反しない、但し、公用車の使用は不適切であったとし、小林副長ら3名を「訓戒」処分としました。身内に大甘な処分です。「事実関係に基づき厳正に対処する」と述べていた木原防衛大臣は、前記通達の見直しについても言及する始末です。裏金政治資金事件の処理顛末と同様納得できません。自衛隊制服組に対する防衛省の背広組(文官)のシビリアンコントロール(文民統制)が機能しなくなってはいないのではないでしょうか。「背広」が「制服」に忖度していないか、文官が「制服」に忖度した時、どのような社会が招来するか私たちは、体験したはずです。

 

海上自衛隊幹部(候補生)らも集団で靖國神社参拝

2024年2月20付「しんぶん赤旗」の報ずるところによれば、

2023年5月17日、海上自衛隊遠洋練習航海部隊の指揮を執る練習艦隊司令官・今野泰樹(やすしげ)海将補以下、一般幹部候補生過程を終了した初級幹部等165名が、航海に先立ち靖國神社に「正式参拝」しており、靖國神社の社報『靖國』(令和5年7月)は写真入りでこのことを明らかにしていると言います(添付写真参照)。

 参拝した自衛官らは制服を着用し、官用バスを使用したとのことで

ですが、会見した酒井良海上幕僚長は、参拝は強制でなく、「問題し

ておらず、調査する方針はない」と述べているとのことです。特攻出

撃について、強制でなく「志願」であると言い張ったように、旧軍に

は「強制」という「語」はありませんでした。自衛隊も旧軍の「伝統」

を踏襲しているようです。

遠洋練習航海部隊幹部候補生らの靖國神社参拝はこの年だけではないようです。

 3月6日、参議院予算委員会で防衛省の三貝哲人事教育局長は「自

衛官が制服着用して私的に参拝することに問題はなく事務次官通達に

反しない」、「自衛官は自衛隊法などにより常時、制服を着用しなけ

ればならない」等々答弁しました(3月7日付共同配信)。

前述した陸幕副長らの靖國神社参拝に対する対応と同様、泣きたく

なるような「制服」に忖度した「背広』(文民)の卑屈な態度です。

 

自衛隊幹部らが靖國神社参拝にこだわるのは何故か

自衛隊幹部らの靖國神社参拝は、戦死者(戦病死者を含む)の遺族、友人らの参拝とは異なるものがあると思います。

 歴史家の保阪正康さんが海軍兵学校出身の叔父と靖國神社参拝について話していた時、伯父が「天皇の参拝があろうとなかろうと、そんなことは俺には関係がない。戦友たちは死んだ。俺は生き残った。死んだ戦友たちに会いに行くにはあそこしかないじゃないか」と語ったとそうです。

この叔父の述懐には、死者たちの追悼を一宗教法人に委ねていてよいのか等々、靖國神社参拝を巡る様々な問題が包含されています。保阪さんの叔父は「ところで靖國神社の展示はそんなにひどいのか」とも尋ねたとのことです。

岩田氏は、1月31日付産経新聞「正論」でも「自衛官の靖国参拝の意味と思い」と題して、元陸幕長として前記「靖國」で述べたと同趣旨の論を展開していまます。岩田氏は、陸幕長を拝命した時、その任を終えた時、靖國神社に参拝したとのことです(前記「靖國」)。

2月23日付朝日新聞川柳欄に「旧軍の後輩顔で参拝し」とありました。

下士官・兵はともかく、戦後生まれの自衛隊幹部らが靖國神社にこだわるのは何故でしょうか。

いつの時代にも軍隊組織には、国のための戦死者を「護国の英霊」として祀り、称える靖國神社のような顕彰装置が不可欠なのです。「平和の礎」で追悼するだけではだめなのです。靖國というナラティブ(物語(ストーリー)」)が必要なのです。また幹部自衛官も下士官・兵の統率には靖國神社のような顕彰装置の存在が必要なのです。

横須賀の防衛大学より東京九段の靖國神社までの徒歩による「行軍」・参拝の奨励も含めて防衛大学での歴史教育に問題があります。

2023年8月7日付、同14日付毎日新聞夕刊は防衛大・等松春夫教授の告発として、新入生の大量退学、多発する不祥事、極右論者の浸透について報じています。等松教授は「さらにあきれるのは、教官が政治的に偏った思想の論者らを自分の授業の枠内で招き、講演させることです」と述べています。

 

「服務の宣誓」の本旨は憲法遵守にこそある

「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえる」、

自衛隊員が就任に際して述べる「服務の宣誓」中にある自衛隊幹部(であった人物)らが好んで用いる一節です。岩田論考も、冒頭においてこの一節を引用し、「これは『命を賭しても国を守る』ことを国家、国民に対して誓うものであり、命のやりと取りを意味する」と、説きます。

2017年12月5日、佐藤正久外務副大臣は、参議院外交防衛委員会での就任挨拶で、この一節を述べました。いかに元自衛隊員であるとはいえ、防衛省関係者ならともかくとして、外務副大臣が「事に臨んでは危険を顧みず」云々とはいささか大仰ではないかと、少なかざる人々が違和感を抱きました。

自衛官の「服務の宣誓」中のこの一節、なにやら戦後新憲法下ではそぐはないとして、1948年6月19日、国会の衆参両院決議で廃止された教育勅語中にある「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」に似たフレーズのような気もしないでもありません。

「服務の宣誓」はその冒頭において「私は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、・・・」と、憲法遵守を謳っています。一般に、公務員の憲法遵守義務は憲法99条の規定しているところですが、武器を扱い、日頃から敵を殲滅する訓練を積んでおり、政治学上は「国家の暴力装置」(マックス・ウエーバー)とされる自衛隊については、一般公務員に比してより一層強く憲法的制約が課されているのは、戦前、軍部の専断により政治が壟断された苦い歴史を持つ国として当然です。

防衛大学初代校長槙智雄は、国民と政府への服従こそが防衛大教育の根幹であるとして「服従の誇り」を唱えました。「服務の宣誓」の本旨は「事に臨んでは危険を顧みず」ではなく、憲法遵守にこそあります。

自衛隊員の「服務の宣誓」中の「事に臨んでは危険を顧みず・・・」について語る自衛隊幹部が、その冒頭で述べる憲法遵守義務について言及することはあまりありません。逆に岩田論考のように「戦後レジュームからの脱却」等々を気軽に語ります。近年、自衛隊制服組の憲法軽視、政治的な発言についての批判が緩んでいます。「はじめに」で言及した小林陸上自衛隊幕僚副長らの靖國神社集団参拝事件及びその後の大甘な処分もその一例です。

「服従の誇り」も米軍と自衛隊との統合運営の名の下に、米軍への服従となってはいないでしょうか。国民の負託にではなく米軍の負託にこたえていないでしょうか。

今、改めて自衛隊は槙智雄初代防衛大学校長の唱えた国民と政府へ

「服従の誇り」の精神に立ち返るべきです。

 

【注】

2023年4月、坂本雄一陸上自衛隊第8師団長ら10名が陸上自衛隊ヘリコプターで琉球列島軍事要塞化を視察中、宮古島沖で墜落し、死亡した。小林陸幕副長らは、靖國神社で航空安全祈願をしたと言いますが、水島朝穗早大教授(憲法学)は、墜落事故で亡くなった隊員たちを追悼する意味合いも込められていたのではないかと推察するとも述べています(1月12日付け毎日新聞)。

岩田氏も前記産経新聞「正論」で「今、現役自衛官の靖国参拝に関する報道があるが、参拝した自衛官たちは、昨年4月に宮古島海域において殉職した同僚たちを思いながら交通安全を祈願するとの、純粋な気持ちで参拝したものと信じる」と述べています。

戦前、靖國神社は陸・海軍省所管の宗教的軍事施設として、すべての戦死者の魂を「招魂」する「神通力」を有するとされ、戦死者の魂独占の「虚構」を維持してきたことはすでに述べてきたとおりですが、1月9日靖國神社参拝をした小林陸上幕僚副長らは、遭難死した坂本第8師団長ら10名について靖國神社に「招魂」されていると思っているのでしょうか。

追記

3月13日付朝日新聞「私の視点」

「自衛隊幹部らの集団参拝 靖国神社都の距離感危惧」(拙稿)

3月14日付朝日川柳

 「市ケ谷と靖国の距離近くなる」(東京都 後藤克好)

3月15日

 靖國神社発表 元海上自衛隊海将の大塚海夫が4月1日付で靖國神社の宮司に就任する(3月16日付朝日新聞) 

靖國神社と自衛隊、事態は想像以上に進行しているようです。

 

内田雅敏(弁護士)

 

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