【Bunnmei の一言】

 

国際的孤立化と国内の批判を集めているネタニヤフ政権にとって頼みの綱は超正統派ユダヤ教政党の支持です。これらの超過激な極右政党は、自派の信徒(超正統派ユダヤ教徒)について特権として認められている徴兵免除措置を守り抜くと公言しています。

 

しかし、これはおかしなことです。建前からすればユダヤの国家を守る先頭に立つべき超正統派ユダヤ教徒が、その義務を果たさないというのですから。国民的な批判や不満が高まるのは当然です。

 

超正統派ユダヤ教徒の生活は非常に厳格な宗教的な生活を送ることが特徴で、男性は主に宗教の教義を学ぶことに一生を捧げることが求められています。そのため、就労していない男性が多く、代わりに女性(妻)が就労して家計を支えることが一般的です。その流れで「徴兵免除」となつています。

 

また、超正統派ユダヤ教徒の家庭は大家族であり、「宗教戒律に従った生活」に捧げ経済力が無い層が多いため、イスラエル国内の信徒は政府から生活保護費である補助金の支給を受け、税や社会保障負担も減免されていることが多いのです。ユダヤ教の良し悪しとは別に、明らかなことはイスラエルで増大する彼らの存在は社会のかなりの負担です。

 

彼らは避妊や中絶を禁じられており、ゆえに子だくさん家族で暮らすことが多いです。超正統派ユダヤ教徒の家庭では、子供たちは通常、親の信仰を受け継ぎます。幼い頃から厳格なユダヤ教の教えを学び、成人した男性は宗教の教義を学び続け、超正統派としてその生涯を捧げることが期待されています。ゆえに「超正統派」は増大を続けています。

 

人口が一定に維持される出生率である人口置換水準(2.1)を先進諸国で唯一超えているイスラエルには以上のような理由があるのです。超正統派ユダヤ教徒の人口は約120万人で、現在イスラエル全体の人口の約13%を占めています。このような超正統派ユダヤ教徒の出生率は6.6です、かなりのペースで増大しています。

 

イスラエル民主主義研究所によれば、2065年には約640万人、30%超に達すると予測されています。ほかの推計では21世紀半ばにはイスラエル人口の40%に達するとの予測もあります。驚くべき社会の負担となっています。つまり、徴兵に行かないばかりではなく、生産的な社会活動には参加しない人(男性)がイスラエルで増大し続けることが必至なのです。歴代政権も現在の政権もそれを政治的理由で擁護しています。

 

超正統派ユダヤ教徒は、イスラエル社会において重要な存在であり精神的な特権者です、彼らの信仰と伝統は国内外で注目されています。しかし、その存在自体が(宗派の教義とは無関係に)社会にとっての無視できない重荷となって国民の批判を受けつつあります。その批判は「超正統派ユダヤ教徒」ばかりではなくそれを擁護する現在のネタニアフ政府へと鋭く向かっています。こうした矛盾はいつか爆発するほかないでしょう。(了)

 

 

イスラエル、ネタニヤフ政権に連立崩壊の危機-神学生の兵役免除巡り

 - Bloomberg

  • 超正統派ユダヤ教の神学校、最高裁が資金援助を凍結する判断

  • 最高裁決定は「カインの印」、超正統派の宗教政党は政権退陣の構え

イスラエルのネタニヤフ首相が率いる連立政権に亀裂が生じている。最高裁判所が超正統派ユダヤ教の神学校に対し、学生が兵役につかない限り資金援助を凍結するとの判断を下し、これに激怒したユダヤ教超正統派の政党が連立解消を示唆。パレスチナ自治区ガザでの戦争を続ける同国を政権存続の危機が襲った。

 

 

焦点:政争続けるイスラエル、ガザで戦った予備役兵士の怒りの声 (msn.com)

 

対立の焦点となっているのは、ネタニヤフ連立内閣による新たな徴兵法案の起草について最高裁判所が設けた3月31日という期限だ。下手をすれば内閣にとって命取りになりかねない。

ネタニヤフ政権にとって頼みの綱は超正統派ユダヤ教政党の支持だが、こうした政党は、自派の信徒について幅広く認められている徴兵免除措置を守り抜くと公言している。

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だがガンツ元国防相は、同氏が要求するこれまでより公平な徴兵法が実現しなければ政権を離脱する可能性をほのめかしており、ガラント現国防相も、閣僚が全員一致で賛同する法案でなければ支持しないと述べ、ガンツ氏に歩み寄る姿勢を見せている。

超正統派ユダヤ教徒に対する徴兵免除は、18歳になると2─3年間の兵役を義務づけられる一般イスラエル国民の多くにとって、以前から不満の種になっていた。

 

また超正統派ユダヤ教徒は、終日の宗教研究を神聖な行為とし、課税の対象となる生業に就かず、もっぱら国家からの給付金に頼って生活している。一方、兵役を務めたイスラエル国民は40歳前後、あるいはもっと後まで、予備兵として招集される可能性があり、その間、職場や家庭から離れることになる。

 

司法改革案に対する2023年の抗議デモにおいて、予備兵たちは重要な役割を演じた。この改革案で最高裁が骨抜きになると主張し、招集に応じない姿勢をちらつかせる人もいた。

 

当時の抗議に参加した予備兵組織の中で最も目立つ存在だった「ブラザーズ・イン・アームス」は今月、政府に対する抗議のため、今度は徴兵法改正に重点を置く街頭デモを再開すると発表した。

「ブラザーズ・イン・アームス」のメンバーで陸軍予備役のオムリ・ローネン大尉は23日、全国規模の集会の1つで、「この国で何かを実現する唯一の方法は、抗議行動だ」と述べた。「これが最後のチャンスになるかもしれない。逃すわけにはいかない」

 

<公平な負担を求めて>

長年にわたり、徴兵に基づく軍隊にはさまざまな属性のイスラエル国民が集まっていた。軍の倫理規範は、政治からは距離を置くことを旨としていた。

だが予備役の兵士たちは紛争後の政治的変化に影響を与える役割を果たしてきた。1973年の第4次中東戦争や、1980年代と2006年のレバノン紛争の後には、政府への抗議を通じて、当時のイスラエル指導部の退潮を加速した。

 

無党派のシンクタンク、イスラエル民主主義研究所(IDI)が3月14日に発表した1200人を対象とする調査によれば、イスラエルで多数を占めるユダヤ人の間では、政界指導者に対する信頼よりもIDFに対する信頼の方が約4倍も高かった。

 

IDIのヨハナン・プレズナー代表は、「選挙で選ばれた公職者を信頼しているのは、市民の4分の1にも満たない」と語る。ただし同代表は、イスラエル社会全体に対する連帯感は、大規模な抗議行動が見られた2023年半ばの低水準に比べ、開戦後に回復したと指摘している。

 

ガザ地区への地上侵攻を開始して以来、イスラエルは約30万人の予備兵を招集した。これは過去数十年で最大規模の動員となる。約4カ月後には除隊が始まった。

除隊となった予備兵の一部は、街頭に出て抗議行動に参加している。昨年の大規模抗議に比べれば参加人数ははるかに少ないが、ほぼ毎日のように国内のどこかで抗議が行われている。

 

リーフ・アーベルさん(25)は昨年10月に研究生活に入る予定だったが、120日間にわたりガザで戦うことになった。従軍期間中、周りの兵士が対戦車ミサイルの攻撃で死亡したと話す。

ロイターの取材に応じた複数の予備兵と同様に、アーベルさんも、市民生活に戻ったとき、政府に見捨てられたという感覚を味わったと語る。

「除隊すれば自分で食料品を買わなければならないが、物価は上がっているし家賃も上がる予定だ。政府は私の生活などにはまったく無関心だ。自分が政界で生き残ることにきゅうきゅうとしている」とアーベルさんは言う。

 

アーベルさんは2月26日、イスラエル最高裁の外で行われた数百人規模のデモに参加した。最高裁では、超正統派ユダヤ教徒に与えられた徴兵免除に対する異議申し立てに関する聴聞会が行われていた。

ガザでの戦闘でイスラエル側にも過去数十年で最多の犠牲者が出る中、この問題は不穏さを増している。IDFによれば、10月7日以来、約600人のイスラエル兵が死亡しており、これは2006年のレバノン紛争による犠牲者のほぼ5倍だ。

 

とはいえ、アーベルさんは再度招集があったら応じるつもりだと言う。「それでも応召する理由は、私たちがイスラエルを防衛しており、人質(の奪還)に近づいていると分かっているからだ」

ガザ地区の保健当局は、イスラエルの軍事作戦で3万2000人以上が犠牲になったと発表している。

 

<従軍による経済的負担>

予備兵にとって、徴兵制度への憤りをさらに募らせるのが、数カ月にわたって仕事や事業から離れることによる経済的ダメージだ。

 

開戦以来、イスラエルは予備兵のために90億シェケル(約3700億円)の支援措置を導入した。内容としては、子育て世帯向けの給付金の増額、事業オーナー向けの保証や融資などが含まれる。

経済委員会によれば、1月以降で、招集に応じた中小企業オーナー約1万人が補償給付金を申請しているという。これまで約半数が承認され、既に6200万シェケル以上が支払われた。

 

イスラエルの主要労働組合「ヒスタドルット」は労働福祉委員会に対し、雇用が脅かされたという内容も含め、予備兵から権利侵害の訴えを数千件も受けていると伝えた。職または生計手段を失った予備兵について、当局は正確な数字を把握していない。

 

ロイ・マフード氏が主宰する予備兵の権利擁護団体「コンバット・フォーラム」も、やはり数千件の支援要請を受けているという。「人々は傷ついている」とマフード氏は言う。

シャニ・コーエンさん(35)は10月7日に招集を受けた。最初の2カ月はガザ地区境界での待機要員だった。職場からは1月に解雇された、とコーエンさんは言う。

「私自身は政治的なタイプではないが、人々はこの国が戦時下にあることを忘れ始めているように感じる」とコーエンさん。「私たちは、自分たちを分断する要因ではなく、団結させる要因に焦点を当てるべきだ」