【Bunnmei の一言】

下添付の二つの記事は、言うまでもなく深く関係しています。

 

円が実質実効為替レートにおいて90年代以降一貫して低下し往事の半分まで下落しています。しかし、対ドルにしか注目が集まらないという日本マスコミの理解不足もありそれほど騒がれることはありませんでした。

 

2022年3月頃から、円安が大きく取り上げられるようになりました。これは、主に以下の理由によるものです。インフレの世界的な波及に伴い、世界的な金利引き上げ政策が始まりました。とりわけ米国が金利を2022年3月から2024年3月までの累計で、政策金利を4.50%引き上げています。この間、「日米金利差」が開くにつれて円の対ドルレートは下がり現在では1ドル=150円と言うレベルです。

 

金利差は投機的資金を中心にして金利の上がった米国などに流れ出て円安が進行したということです。このことがきっかけで「円安の弊害」がにわかに議論されるようになりました。

 

しかし、二つ目の添付記事にあるように、金利だけが「円安、円高」を決めるものではありません。むしろ本質的には、日本産業力の衰退が円安を呼び込んだと言えるのです。これは歴史的に深刻な問題です。しかしながらいくつかの手段があります。

 

一つの例でいえば、エネルギーの海外依存が高い日本は年間に中東諸国から20兆円の原油の買い物をしなければなりません。これは強力な円安=ドル高要因です。それならば、自然エネルギーなどの国内の資源利用で20兆円の原油買いを10兆円にへらしただけでもかなりの円高要因となります。一事が万事このようですから、食糧の過度の海外依存をやめて国内での自給率を少し高めるだけでもよいのですが、政治がそのようには動いていません。

 

日本政府は、エネルギー、食糧ばかりではなく、生産力の重要な拠点である中小零細工場の維持発展にもあまり関心が無いようです。政府日銀、そして財界はむしろ「円高解消」政策として金利上げ政策を高唱しています。しかし、現在の日本の経済停滞状態で金利高を目指し「ゾンビ企業の一掃」「強い経済の実現」(日本経済新聞)を目指すのは乱暴な話です。これは逆効果です。中小零細企業の総崩れになる可能性があります。米国からの高額兵器大量購入も中止すべきです。

 

この間30年、低金利政策とその進化系であるアベノミクスが採用した政策は真逆のモノでした。金融大緩和政策であり、マイナス金利政策でした。これは、意図的な「円安政策」にほかなりません。輸出関連の大資本に大きな利益をもたらし、他方、円安つまり減価した労働力の投げ売りにより、労働者の賃金は30年間国際的に見てもあり得ないほど下がり続けてきました。日本の平均給与が世界ランキングで最高位だったのは、1990年頃の2位です。その後は徐々に順位を下げ、2023年には24位まで下がっています。当然労働分配率も低下しました。

 

少しでもまともな「円高是正」政策を政府は取っていません。日本の労働者は労働力を国際的に安く売って、低賃金に追い込まれています。労働者や中小企業への犠牲のしわ寄せ政策ばかりを執行しています。(了)

 

 

円相場、34年ぶり安値 1ドル=151円94銭を下回る 

| 毎日新聞 (mainichi.jp)

 外国為替市場で円安の動きが加速し、対ドルの円相場は一時、2022年10月につけた1ドル=151円94銭をさらに下回り、1990年7月以来、約34年ぶりの安値を更新した。

 日銀は19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除し、17年ぶりの利上げを決めた。円安に歯止めがかかるとの期待もあったが、植田和男総裁は記者会見で「当面、緩和的な金融環境が継続する」と強調。急激な金融引き締めを警戒していた市場に安心感が広がり、逆に円売りが勢いを増す結果を招いた。

 

「貿易立国」の次は何で稼ぐ 日本経済の改善策、財務省で議論始まる

 (msn.com)

国内経済は長らく、自動車や電気製品などの輸出に支えられてきた。2000年代までは貿易や投資による日本と外国のお金の出入りを示す「国際収支」の多くを、貿易黒字が占めていた。しかし、近年は競争力の低下や輸入燃料の高騰、海外のネットサービスの利用増による「デジタル赤字」の拡大などで、日本が得意とされてきた貿易・サービスの赤字傾向が続いている。

 半面、企業の海外進出が進み、海外投資などのもうけによる「第1次所得収支」が経常黒字を支えているが、もうけの半分は再び海外への投資に回り、国内投資への還元は限られているという。主催した財務省の神田真人財務官は「国際収支の構造が歴史的に変容している中で、どのようなところに日本経済への制約があり、将来の発展の好機が潜んでいるのかを、虚心坦懐(たんかい)に議論したい」と述べた。