【Bunnmeiの一言】

香港政府が「国家安全条例」をスピード成立させました。香港の統制強化を急ぐ習近平政権の意向があったとみられます。この新条例は、国家機密の窃取やスパイ活動などを禁じるもので、2020年に中国の習近平政権が制定した香港国家安全維持法(国安法)を補完する形となっています。国安法は香港の「一国二制度」を有名無実化し、新条例はそれをさらに強化し、外国スパイだけではなく広範に市民たちの政治活動や報道統制を強めることが狙いです。

 

この新条例により、香港の政治体制は完全に「中国化」する恐れがあり、これは習近平政権の強権的な統治が中国の対外的信用を損ねかねません。このようなあからさまな抑圧政策の拡大は、台湾住民にも強い影響を与えると考えられます。習近平指導部は、国内の経済低迷や、対米関係での軋轢の中で国内政治が急速に強権に向かっています。(了)

 

 

<社説>香港新条例成立 「中国化」は公約違反だ 

(msn.com)

 

<社説>香港新条例成立 「中国化」は公約違反だ

<社説>香港新条例成立 「中国化」は公約違反だ© 東京新聞 提供

 

 

 香港政府が国家機密の窃取やスパイ活動などを禁じる「国家安全条例」を成立させた。

 2020年に中国の習近平(しゅうきんぺい)政権が制定した香港国家安全維持法(国安法)による民主化弾圧で、香港の「一国二制度」はすでに有名無実化している。新条例は国安法を補完し、広範に政治活動や報道統制を強めることが狙いであり、香港の政治体制は完全に「中国化」する恐れがある。

 香港政府が立法会(議会)に条例案を提出したのは今月8日。親中派がほぼ独占する立法会は、わずか11日後の19日に可決した。

 当初、年内成立を目指した香港政府トップの李家超(りかちょう)行政長官は可決後の演説で「中国共産党の負託と国家の信任に応えることができた」と強調。異例のスピード可決の背景に香港の統制強化を急ぐ習政権の意向があったとみられる。

 

 23日施行の条例で犯罪とされるのは、反乱や扇動▽国家機密の窃取やスパイ行為▽海外勢力による干渉-など。最高刑は終身刑で、国籍を問わず適用される。

 国家機密には、中国や香港の外交、経済、科学技術など幅広い情報が含まれるとされ、報道への強い規制となる。市民の反政府デモも、政策や選挙への干渉、反乱として処罰される可能性が高い。

 国家の安全を守るための条例の制定は、香港基本法で香港政府に義務づけられているが、03年に政府が制定を目指した際には、50万人規模の抗議デモが起き、無期延期に追いこまれた経緯がある。

 条例について香港政府は、外国人との交流やビジネスには影響が及ばないと主張する。だが、国安法以降、香港市民の外国移住や外資撤退の動きも目立つ。

 香港政府によると、22年の海外流出人口は約6万人に上る。条例制定による香港の「中国化」は国際金融センターとしてのビジネス環境にも一層の打撃となろう。

 1997年の英領からの返還の際には、英中両政府により50年間の「高度な自治」が保障されたはずだったが、すでに「自由な香港」は見る影もない。

 民主化弾圧を目的とした国安法に加え、取り締まり範囲を拡大した条例で「中国化」が完遂されれば、中国が「一国二制度」の国際公約を完全に反故(ほご)にしたことを意味する。台湾の人々や国際社会がどうみるか。中国はいま一度、その得失を熟考すべきだろう。