南海トラフ地震の発生確率は計算式に「科学的事実に反するおそれ」

 政府は反対論を伏せたまま公表していた 

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 「30年以内に70〜80%」とされる南海トラフ地震の発生確率を検討した政府の地震調査研究推進本部(地震本部)が、2013年の会議の資料に、算出に使った特別な計算式のデメリットを「科学的事実に反するおそれ」と明記しながら、それを伏せたまま確率を公表していたことが分かった。地震本部の非公開資料で判明した。(小沢慧一)

◆「両論併記」も議論されたが…

 13年に発生確率を検討した地震本部傘下の地震調査委員会側の会議では、地震学者の多くの委員たちが、算出に使った計算式「時間予測モデル」は「科学的問題がある」と採用に反対した。一方で全国基準の単純平均モデルを使うと確率が20%に落ちるため、地震本部は報告書の公表方法を検討する合同部会を開催した。

 地震調査委員会 阪神・淡路大震災で地震の研究成果が国民に伝わっていなかった反省から設立した政府の特別機関「地震調査研究推進本部」の下部組織。地震学者を中心に19人で構成し、地震の発生確率などの予測をまとめる「長期評価」を検討する。委員長は平田直(なおし)東京大名誉教授。

 部会では、発生確率を報告書の最も目立つ「主文」で高い確率と低い確率を「両論併記」するかどうかを議論した。文部科学省が提示した(1)低確率も高確率も出す(2)低確率は参考値にして、高確率を出す(3)低確率は出さず、高確率だけを出す(4)低確率は出さず高確率を参考値として出す—の4案が検討され、両論併記せず、高い確率だけを出す(3)案が採用された。

「時間予測モデル」で確率を算出することのデメリットが明記されていた、政府の地震本部の非公開資料

「時間予測モデル」で確率を算出することのデメリットが明記されていた、政府の地震本部の非公開資料© 東京新聞 提供

 これまで非公開とされていた資料は、部会が開かれた13年2月21日付で、4案のメリットとデメリットが表にまとめられていた。(3)案のデメリットには「精度の低い時間予測モデルのみを提示することになり、科学的事実に反するおそれ」と明記されていた。

 公表された報告書の主文は「(時間予測モデルは)さまざまな問題点があることが指摘されている」としつつも、「従来の評価方法を踏襲し、時間予測モデルから(確率を)推定した」と説明。地震学者側が採用に反対したことや、「科学的事実に反する」という文言は一切書かれていない。

 資料は猪瀬直樹参院議員=日本維新の会=が地震本部事務局の文科省から入手し、本紙が提供を受けた。資料を非公開としていた理由について、同省地震・防災研究課の担当者は取材に「当時の担当者がおらず即答できない」と回答した。

 

◆反対意見を隠さず説明するべきだった

 確率検討時の政府委員だった橋本学・東京電機大特任教授の話 問題の核心は、科学者側の反対意見を防災・行政側が押し切ったことではなく、事実を隠したことだ。地震本部は「科学の側に反対意見があるが、行政・防災側が防災対策を進める上では必要なので、科学的根拠とは別に高い確率を採用した」と国民に説明すべきだった。

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南海トラフ巨大地震 観測データに特段の変化なしも

「発生の可能性は非常に高い」 強い揺れと津波の備え続けて 気象庁

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気象庁は、南海トラフでの巨大地震発生の可能性を評価する定例の検討会を開き、特に目立った地震活動はなかったことなどから、「特段の変化は観測されなかった」とする見解をまとめました。

気象庁は、今後30年以内の発生確率が70%から80%とされる南海トラフ巨大地震について、専門家による定例の評価検討会を開き、想定震源域でおきた地震や、研究機関の観測データの分析を行いました。

気象庁によりますと、先月1日から今月5日までの期間に南海トラフ巨大地震の想定震源域とその周辺では、マグニチュード3.5以上の地震が5回発生したということです。