コラムの窓・・・マイナ狂騒曲、保険証発行廃止で終止符か?
【ワーカーズ三月一日号】



 昨年10月13日の河野太郎デジタル大臣による保険証廃止発言によって、ポイント付与というアメから保険証剥奪というムチに、マイナ〝普及〟策が変更されました。そして、12月22日には今年12月1日で保険証発行を終了すると政令で決定しました。

 カード普及率が70%を超えるなか、政府は災害の際に役立つと「マイナ避難」を言い出し、河野大臣は能登半島地震でも役立つとのアピールを繰り返し、1月19日にはXで「17日までにマイナポータルから罹災証明書のオンライン申請された件数は合計4957件に」とアピール。23日の会見でも「マイナンバーカードはタンスに入れておかないで財布に入れて一緒に避難して」と呼びかけています。

 この火事場泥棒のような発言には、当然にも大きな批判がありました。停電でも機能するのか、カードを持ち出すために避難が遅れたらどうするのか、そうした点を少し考えるだけで、現実的でないことは明らかです。さらに、JーLIS(地方公共団体情報システム機構)による「マイナンバーカードの取り扱いについての注意」は見過ごせません。

 例えば「カードを入れた財布をズボンの後ろポケットに入れた状態で座ったりしてICチップ部分に局所的な荷重をかける」と壊れる、他にも高温はダメ、強い磁気もダメ、薬品や液体がついてもダメになる、等々。

 つまり大切に扱わないと使えなくなり、「マイナンバーカードが破損してしまった場合、再発行が必要となるため、再発行について住民登録のある市区町村窓口へお問い合わせ」(JーRIS)する必要があります。しかも、再交付には1カ月はかかるようです。

 さらに、決定打は「災害時は『保険証』も『お薬手帳』も『マイナカード』もなくても大丈夫!」と、1月23日の河野大臣の会見を受けて、約10万7000人の医師・歯科医師でつくる全国保険医団体連合会(保団連)がウェブサイトで注意喚起を行っています。万事休したデジタル庁、マイナカードの代わりにスイカを利用することに。

 JR東日本が無償提供するのはスイカ2万1000枚とカードリーダー350台、2月7日から配布を始めています。このスイカには避難者の住所名前、生年月日、連絡先などを登録し、避難所を訪れるたびにカードリーダーで読み取り、各避難所の避難者数や物資の受け取り状況を把握するというしろもの。つまり、体のいい避難者の管理システムです。

 こうした災害に乗じたカード普及に加えて、厚労省はなりふりかまわず利用率を上げるのに必死です。厚労省は今年1月、全国890の公立・公的病院に対し11月までにマイナ保険証の利用率50%を達成するよう、促進計画の提出を求めています。これはまるで強迫ですが、こうした強制に対する反発として、国家公務員のマイナ保険証利用率の低迷があります。厚労省の資料によると、昨年11月時点で4・36%だというのです。霞が関の省庁ではマイナカードが入構証として強制的に使わせているのに、この普及率です。

 さて、ここで原則を思い出せばマイナカードの取得は任意であり、さすがの河野デジタル大臣もこれを否定することはできません。従って、マイナ保険証がないから医療機関を受診できないなんてありえません。

 岸田文雄首相は1月30日の施政方針演説で、「デジタル社会のパスポートであるマイナンバーカードの利便性向上も徹底的に進めます」と言い、国内パスポートの強制をあきらめていません。ならば、「番号は書かない、カードは持たない」人々の結束でこのたくらみを退けたいものです。 (晴)