阿部 治正

 

今週の流山市議会は、28日の総務委員会に始まって、29日は教育福祉委員会、3月1日は市民経済委員会でした。私の所属する教育福祉委員会には6つの議案と2つの陳情が提案されました。議案の中で、2024年度介護保険特別会計予算(介護保険制度を運用する財源的裏付け)と介護保険に関する条例の改正案(保険料の引き上げ案)は、多くの市民の皆さんの暮らしを大きく左右する問題ですので、私が行った討論の概要を以下に掲載させて頂きます。これらは委員会での討論なので短く簡潔に整理しています。最終日の本会議討論では、どうしてももっと長くなってしまいます。

 

もうひとつ、重要な案件として市立幼稚園の廃園方針に反対する陳情があり、これに対しても陳情賛成の討論を行いましたが、前回の12月議会でも同趣旨の討論を行っていますので、割愛させて頂きます。来週の4日は都市建設委員会、5日から11日までは2024年度予算の審査委員会が続きます。

■議案第10号 令和6年度(2024年度)流山市介護保険特別会計予算への討論

反対の立場で討論をします。

方向を間違えた国策に大きく縛られながらも、市当局が地域の介護ニーズに何とかこたえようと様々な努力をしてきていることは知っています。その努力がこの予算案の中にも反映されていることも理解しています。しかし、国策の大きな流れを押し返すことは出来ておらず、その故にこの予算には反対せざるを得ません。

介護保険制度は、介護が個々の家族・家庭に背負わされる状況から脱却することをめざす、つまり「介護の社会化」をめざすものだと言われました。しかし現状はどうかと言えば、措置制度に代わって介護の受け皿になることを期待された「地域社会」は疲弊をし、介護の「社会化」は掛け声倒れとなっています。この地域社会の疲弊は、30年間も続いている実質賃金の低下、格差・貧困の拡大、働く人々の長時間労働等々によってもたらされたものです。現在の地域社会は、介護を担う力を失ってしまっています。その結果、増大する介護ニーズは行き場を失い、住民は介護難民化し、介護崩壊とも言うべき事態が起きようとしています。

この予算案がその具体化の第一歩となっている「流山市第9期高齢者支援計画案」でも、「地域包括ケア」を推進していくことが強調されています。介護保険制度において「地域包括ケア」という考え方が導入され、強調されるようになったひとつの背景として、「施設介護」を抑制したいという国の意向が存在していました。施設介護は費用がかかり、そのことが国庫からの支出増を求める声につながることを嫌った国の側の都合と思惑でした。

確かに、「例え介護が必要な状態になったとしても」「長年住み慣れた地域で」とか、また「介護が必要とならないように」「高齢者も趣味や社会参加」に努めて」「健康寿命」を伸ばす必要があるとか、それ自体はもっともらしく聞こえる言葉が用いられてきました。しかし、介護が必要となった人々にとっては、様々な事情から在宅介護が困難な人々も決して少なくありません。そうした人々にとっては、施設介護の抑制という政策は致命的な結果をもたらしかねません。

そして今は、喧伝されてきた「予防介護」や「地域包括ケア」自体も、もっと大きくお金と人を投入しないことには十分に機能しないことが明らかになってきています。その端的な現われが、地域に多数設置されることが期待された小規模施設の不足と運営の困難、地域ケアの重要な戦力である介護ヘルパーの決定的な不足です。それらの背景には、労働条件や賃金の極端な低さが指摘をされていますが、国はその費用を現行の介護保険制度が定める国の支出割合の枠内で解決しようとして、国庫からの支出を増やすことを拒み続けています。

第9期の流山市高齢者支援計画の策定作業の中では、「第9期計画に向けた課題」のひとつとして以下のように述べられています。「介護保険事業のサービス量が増加すると、介護保険料基準月額も増額することとなるため、サービスの需要や介護人材の確保状況を踏まえて、適切な見込みで整備を進めていく必要があります」。分かりやすく言い変えれば、「介護サービスの量と質を拡充すれば、保険料の引き上げを求めざるを得なくなる。だからサービスの拡充は抑えるしかない」ということです。これは、介護保険制度が抱える根本的な矛盾について、審議会が思わず言い当ててしまった、大変に痛々しい言葉という他ありません。

提案された介護保険特別会計予算案は、そうした矛盾を反映した予算案であると判断せざるを得ないことから、反対とします。

 

■議案第11号 流山市介護保険条例の一部を改正する条例の制定について

反対の立場から討論をします。

条例案は、これまでの18段階目を二段階に分けて合わせて19段階とし、高所得者により大きい負担を求めています。他方で、第1段階から第3段階までの低所得層に対しては介護保険準備基金から6億円を公費投入して引上げ幅を緩和するなど、流山市としての独自の努力が見られます。しかし、こうした努力によっても、低所得者層の保険料の引き上げは避けることが出来ませんでした。

物価高騰や医療・年金制度の改悪などが及ぼす低所得層の皆さんへの影響を見れば、例え月々はわずかに見える保険料引き上げでも、暮らしへのマイナスの影響は軽視できません。しかも介護保険制度は、今後も市民負担を求める様々な改正が準備をされており、その一環としての今回の保険料の引き上げであれば、なおさらです。

本来なら、介護保険財政に対する国庫支出の増額が図られるべきだと思います。国の負担は増やさない、介護保険制度が抱える矛盾はあげて被保険者と自治体に押し付ける。こういう国策の転換を目指す立場から、条例改正案には反対をします。