【管理人の一言】

イーロンマスク氏は、世界的に話題の人です。変人と言う人もいれば、天才だと言う人もいます。私も正直、トップダウン型経営者で、反組合的でありあまり幻想を持てない人物だと思っていますが、この議論提起を無視するものではありません。

 

すなわち、「もし何も変わらなければ、日本は消滅するだろう」と。日本は出生者が過去最低で、一人の赤ちゃんに対して二人が死亡します。先進資本主義国、中国・韓国もそうですし日本もご多分に漏れません。

 

■イーロンマスクの積極的な移民対策

 

イーロンマスク氏は移民の子供です。彼は南アフリカ共和国で生まれ、母親はカナダ人で父親は南アフリカ人です。17歳の時にカナダに移住し、その後アメリカに移住しました。そんな経歴からか、移民の増加について肯定的な意見を持っているようです。彼は、移民はアメリカ経済にとって重要であり、アメリカをより強く、より革新的な国にすることができると考えています。

 

だから彼はこんなことも言っています。

 

"アメリカは移民の国であり、移民はアメリカを偉大な国にしたものです。"

"移民はアメリカ経済にとって不可欠であり、アメリカをより強く、より革新的な国にすることができます。"

"私たちは、合法的な移民を増やすべきであり、不法移民を合法化するべきです。"

 

イーロンマスク氏の移民に関する政策提言については、合法移民の数を増やす、不法移民を合法化する、外国起業家が米国で起業できるビザプログラムを拡大する、高度なスキルを持つ移民を優先する云々。積極的提言を繰り返しています。

 

彼の発言は明快です。つまり、米国で成功した起業家・大資本として彼は優秀な人材確保を海外からの移民にも手を広げているということです。彼の動機は企業の隆盛の問題、その視点からの移民積極論です。しかし、移民が米国なり日本に来ることには大きなハードルが存在し、テック企業に入るとかのエリートは極少数であることは当然です。多数の移民は入獄しても厳しい差別的な現実が待っています。

 

■移民と人口問題

イーロンマスク氏が、日本について「変革が必要だ」とXにポストしたのは「移民を受け入れないのは愚かだ」という含みがあるものとわたしは受け取りました。

少子化は先進国病の一つと言ってもよい深刻な問題です。OECD諸国や中国などでは、ほとんどが人口減少(出生率の低下)となっています。詳しくは以下の記事を参照してください。

 

出生数「過去最少75万人」の衝撃 「給付金」が決め手か? テーラーメイド社会の打破へ | ワーカーズ ブログ(ameblo.jp)

 

全世界の合計特殊出生率、わずか半世紀で半分…先進国ほど激しい : 日本•国際 : hankyoreh japan (hani.co.kr)

 

しかし、だから「労働人口を移民でカバーする」というような、プラグマチックなご都合的な発想にとどまれば、移民バッシングや民族・宗教対立が派生すると思います。イーロンマスク氏の、移民積極論も、このような流れであり、人権や教育の問題も含めた視点が欠けているのではないかと思います。

 

■移民問題と日本

 

「現代の奴隷制度」であると海外から批判された技能実習生制度を生み出した日本、外国人の人権を認めようとしない入獄管理制度など、日本の受け入れ体制は政府から自治体、そして企業や国民レベルでも停滞しています。そして、反省のない政府担当部局の対応が続けば、「国内出生率」の急速な低下ばかりでなく、海外移住も進まず、進んでもトラブルの原因となる恐れがあります。

 

外国人労働者が「家族を帯同」して移住してくれば、労働者本人の労働者としての諸権利(賃金・労災・寄宿舎・社会保険等)だけでなく、配偶者の生活・言語・仕事、子供の保育・教育・進路、老親の医療や介護などの課題が、次々と生じてくるのは当然です。これらに必要な行政・学校における通訳や医療通訳者の養成も全くニーズに追いついていない現状です。これらの諸施策を軽視すれば、住民生活における様々なトラブルが続発し、ひいてはヨーロッパのような排外主義を伴った紛争につながる可能性も否定できません。

 これについて、外国人労働者支援団体関係者から、いくつか重要な指摘が上がっています。

それは、

①当面の労働力不足の対応にとどまり、包括的な中長期的視野での外国人労働者政策が提示されていない。

②国内労働市場との軋轢を避けるための量的なコントロール手段(「労働市場テスト」、「職種・地域別のクオータ制」等)が講じられていない。

③業種別の受入れ方針では関係省庁と業界団体にまかされ、日本語能力や技術水準が確保されない。

④「悪質な紹介業者の介在を防止する」具体的な規制方法が不明(韓国の「雇用許可制度」は募集・採用ルートを政府間に限定)。

⑤出入国管理や在留管理に当る「法務省」受入れ環境整備に当るのは心理的抵抗を生じさせる。⑥今以上の「在留管理体制の強化」では息苦しい社会になってしまう。

⑦「移民政策ではない」とするため社会統合政策が希薄、日本語能力の習得について国の責任が不明。等、多岐にわたります(自由人権協会・旗手明氏「日本社会は分水嶺を迎えている・骨太の方針がもたらすものは?」Migrants Network 200号 2018・10より)

●在住労働者と移住労働者との連帯へ

 資本主義社会は、一方では「国民経済」「国民国家」の枠組みを維持しようするため、資本は「国境」や「在留資格」の厳密な管理を要求しますが、他方では「資本」の海外への移転や「労働力」の海外からの移入なども要求するもので、必然的に両者は相矛盾することになります。

 このため、労働者の闘いは単純化することは難しいことを自覚しつつ、現実的には「労働市場」の現状を踏まえて、移住労働者に対しては「日本語能力の習得」を保証しつつ、在住労働者の側も「移住者の言語への対応習慣」を身につけるなどしながら、労働者として生活者としての連帯を作り上げていくことが不可欠でしょう。もちろん「言うは易し、行うは難し」です。しかし現実に既に様々な諸地域や諸現場では、困難を乗り越え奮闘する人々がいるのですから、こうした人々の切実な声を政策に反映させる方向で、政府の無責任を具体的に追及していくことが課題と考えます。

そのためには、そもそも外国人労働者の状況がいったいどうなっているのか?技能実習生の状況、留学生の状況、日系人労働者等の状況、在留資格を巡って起きている紛争の状況について、認識を共有する作業も必要でしょう。今現に何が起きているかをしっかり把握し、今後もたらされる諸課題を見すえてこそ、労働者の共生・連帯の未来が見えてくるはずです。

 

かつて、植民地諸国からの収奪のおこぼれに与って英国などで労働運動が体制内化の傾向を強めた時に、英国の労働運動を再活性化させ、救ったのは実は移民労働者たちだったのです。このような歴史的な運動から学ぶ必要があるでしょう。政府や支援団体ばかりではなく、労組がここで頑張るという意義は大きいものです。(了)

 

イーロン・マスク氏「日本は消えてなくなる」X投稿再び 過去最低の出生数を受け

イーロン・マスク氏「日本は消えてなくなる」X投稿再び 過去最低の出生数を受け© CNET Japan

 

 

実業家のイーロン・マスク氏は日本時間2月29日夜、「もし何も変わらなければ、日本は消滅するだろう」とX(旧Twitte)に投稿した。2023年の日本の出生数が75万8631人(速報値)と、統計開始以来の過去最少を更新したことを受けた投稿だ。

 

マスク氏は2022年5月にも同様の投稿をしていた。同氏は日本だけでなく世界的な人口激減を危惧していることでも知られる。

 

厚生労働省の統計によれば、2023年の日本の出生数は75万8631人だった。80万人を初めて割り込んだ2022年からさらに5.1%も減少した。一方で死亡数は前年比0.5%増の159万503人だった。新たに生まれた人の2倍以上の人が同年に死亡した計算で、国の想定より10年以上速いペースで少子化が進行している。

 

また、出生数に直結する婚姻数も48万9281組と2022年比で5.9%減少した。