【管理人の一言】

金正恩による「敵対的な二国間関係」論の政治的外交的意味をさぐる議論が活発になってきました。韓国の「ハンギョレ新聞」は「金総書記の《二つの朝鮮》(Two Korea)論は、日増しに悪化する朝鮮半島情勢と北朝鮮国内の政治的事情を考慮した特有の敵対的レトリックを取り除いてみると、北朝鮮側が脱冷戦期以降に懸念してきた《吸収統一》を避けるための防御的戦略だ」との専門家の意見を紹介しています。

 

実際に70年以上の間、別個の敵対的国家として存在してきた二国の「統一」は、理念としてはともかく現実としての統一は国家と国家との戦乱を経ることなくしては実現できないことは明らかです。韓国のムン・ジェイン前大統領の推進した「統一」政策も冷え切った南北対話の拡大以上のものではありませんでした。ドイツの東西統一のような平和統一は事実上不可能だと思われます。

 

「二つの朝鮮」論の背景には、国際的対立の谷間にあって北朝鮮が中国や特にロシアとの関係を深めていることと関係しているでしょう。また先日、北の政府高官が苦言を呈しながらも「日朝対話」の秋波を送っていることも注目すべきでしょう。ところが金正恩発言に対する韓国政府の対応は、「ハンギョレ新聞」で紹介された専門家たちの意見のような深い理解に欠け、金正恩の過激な表現を逆手に取り敵愾心を韓国民に煽るというのは残念なことです。「金正恩委員長の脅しは、我々を刺激しないでほしい経済建設に専心したいという意味でしかない」(ハンギョレ新聞)、つまり南北統一の呪縛から解放され独自の国家建設を進めたい、というのが北の支配層の本音のようです。

 

 たしかに「二つの朝鮮」論の提起つまり「統一」論の放棄は、韓国や米国との意味のない対立で経済を消耗させたくないという金正恩いや北朝鮮支配層の考えなのかと推測できます。だから難癖をつけながら韓国と決別し「武力統一を放棄したから、韓国も軍事圧力をかけないでほしい・・」ということでしょう。

 

 しかし、朝鮮半島の南北統一と金政権の「正統性」は、歴史的な観点から見ると深い関連性があります。北朝鮮は、初代最高指導者の金日成が日本統治時代の朝鮮半島で抗日武装闘争を率いたこと、さらにその後の朝鮮戦争時代に米軍主導の国連軍との戦いを率いたことを根拠に金政権の正統性を主張してきました。このような「統一」と言う国家目的を放棄した北朝鮮政府と支配層は、今後北朝鮮の民衆をどのように「指導」するのでしょうか。金正恩は全く気付いていないようですが、国民的大義の放棄は実は北の歴代金政権の正当性の放棄なのです。時間がかかるとしても民衆の新たな覚醒と階級的な組織化に結びつく可能性を暗示するものです。

 

このような経過を見てみると、果たして韓国がキューバと国交正常化したことが、北朝鮮にとって「打撃」だということは当たっていないと思われます。あまり言われることのない北朝鮮経済ですが、大衆の貧困が引き続き深刻である一方で、産業の回復や経済の改善が進んでいることも事実でしょう。北東アジアの安定は外交にかかっていますが、その外交が下手(あるいは意図的にサボタージュしている)なのが韓国や日本政府の現実です。対立を煽ることで「政権浮揚」を演出したいという下心が見えます。日本の労働者市民にとって朝鮮半島の政治変化の意味をしっかり考慮する必要があるでしょう。(了)

 

 

 

キューバとの国交樹立 北朝鮮に「相当な打撃」=韓国大統領室 

(msn.com)高官は「歴史の流れの中で大勢がどのようなものなのか、そしてその大勢が誰にあるのかを明確に示したもの」と述べた。また、キューバが北朝鮮の「兄弟国」とも呼ばれたことについて、「正しい表現だ。そのため、北としては相当な政治的・心理的な打撃が避けられないとみられる」との認識を示した。

 

北朝鮮の「兄弟国」キューバと韓国が国交樹立 妨害工作を警戒し公表タイミングも分単位で調整

(msn.com)

北朝鮮は反応なし

 北朝鮮による妨害工作を避けるため、交渉の過程は少数でしか共有せず、発表のタイミングも分単位で調整したという。今月上旬にキューバ側から積極的な協議の意向が伝えられたといい、韓国メディアは「電撃的な国交樹立」などと伝えている。

 15日の朝鮮中央通信によると、朝鮮労働党幹部は14日「わが党と国家は、社会主義国家との団結と協力を強化していく」と述べたが、キューバに関する直接の反応は示していない。

 

金正恩氏 軍需工場を視察 (msn.com)

北朝鮮の朝鮮中央テレビは15日、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)が重要軍需工場を現地指導したと報じた

 

金正恩氏、「国民の親」で権威回復か 日成氏を手本 韓国分析 

(msn.com)

国民を慈しむ「親」のイメージを重視している――。韓国統一省は15日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記についてこんな分析結果を明らかにした。祖父で初代最高指導者の故金日成(キム・イルソン)氏を見習っているとみられ、厳しい経済状況が続く中で「権威の回復を試みている」という。

 

北朝鮮が“国歌”の歌詞変更 韓国と同族を示す表現「三千里」を削除

 (msn.com)

北朝鮮が1947年に「国歌」として作られた歌の中で、韓国を含めた朝鮮半島全体を意味する「三千里」との歌詞を「この世界」という表現に変更したことが分かった。

金正恩総書記は1月、韓国を「第1の敵対国」として南北統一を放棄すると発言していて、その方針に基づく動きとみられる。

 

「拉致捨てるなら、首相の訪朝あり得る」 金与正氏が個人的見解

 (msn.com)

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)党副部長は15日の談話で、日朝関係をめぐり「既に解決された拉致問題を両国関係の障害物として捨てるのなら、両国が近づけないわけはない。岸田文雄首相が平壌を訪問する日が来るかもしれない」と述べた。