「建設」や「再稼働」させなくて良かった

       能登半島原発災害を阻止したのは住民の反対運動 
【ワーカーズ二月一日号より転載】

 

 

志賀原発の主な敷地内断層 - 志賀原発に「活断層なし」 規制委、従来判断覆す 2号機再稼働も - 写真・画像(1/1)|【西日本新聞me】


 能登半島の大震災で志賀原発が被災しました。しかし、いまのところ重大事態とはなってはいません。もう一つの珠洲(すず)原発は能登半島の突端にあり建設は放棄されています。

 「原発再稼働してなくてよかった」「原発無くてよかった」の声が多く出されました。しかし、それまでには地元住民や科学者たちの地味で長い闘いがあったのです。

■忘れてはいけない住民の反対運動

 2011年3月11日の東日本大震災と福島第一原子力発電所事故を受けて停止。その後、志賀原発の再稼働をめぐる議論が起きましました。地元議会では、再稼働に反対する議員が多数を占め、再稼働に向けた動きを阻止するための活動が活発化しました。また、市民団体も結成され、再稼働反対の署名活動やデモ行進などを実施しました。2012年には、志賀原発再稼働を阻止するための市民団体「志賀原発いらない会」が結成され、署名活動やデモ行進などを継続的に実施しています。再稼働をこれまで抑止できたのは本当に正しい選択でした。

 この原発は何しろ敷地内に「活断層」があり(2016年認定)、その後、原発推進派の学者と論争が続いていました。ところが去年3月3日に「敷地内の断層は活断層ではない」という逆転判定を原子力規制員会が出しました。志賀原発を廃炉に・訴訟原告団は「志賀原発が活断層に囲まれた原発であることが次々と明らかになる中、敷地内断層に限っては活動性なしと断言できるのか、周辺断層からの影響はないのか」(2023年3月3)と指摘しています。活断層は単独で動くのではなく、多くの断層を道連れにして巨大地震になることは、今回の能登半島大震災が示しています。今後も再稼働を阻止し廃炉に持ち込みましょう。
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 珠洲(すず)原発建設については、1975年に計画が持ち上がり、1993年には要対策重要電源の指定を受けましたが建設計画は、2003年12月に中止されました。

 「新しい珠洲を考える会」、「珠洲地区労」、「社会党珠洲総支部」が「珠洲原発反対連絡会議」を結成し、能登原発(志賀原発)反対各種団体連絡会議と共闘しました。また、1981年の珠洲市長選挙に反原発の候補者を擁立したこともあります。さらに、市民団体「珠洲文化会議」が結成され、市民の一員として、珠洲市の抱える問題を考え、文化活動を進めていきました。この反戦・平和を目指す文化活動が、当然のこととして、珠洲原発に反対する運動へと発展していきました。

 珠洲原発予定地は能登半島の先端で今回の大震災の中心でした。もし、この珠洲原発が完成していたら、稼働していたら今回の震災による放射能被害や故郷喪失は疑う余地もありません。原発災害という悲劇につながったでしょう。建設を止めたのは住民の粘り強い力でした。
 
■原発の存在が自然災害対策を台無しにする

さらに、3.11以来、自然災害の不可避性や大規模性を考慮して「防災」ではなく「減災」という理解が深まりました。つまり、津波や大地震、台風、あるいは戦争も含めた危機に対して、被害を軽減し拡大を防止することです。能登半島地震のように道路の寸断があり、その場に長くとどまらざるを得ない被災者が放射能プルームを大量に浴びる可能性を今回は強く示しました。これでは津波や台風や地震の避難計画は台無しです。安全なはずの家屋に避難しても、二次災害としての原発は異質な脅威です。
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 2022年1月時点で、すでに確認された日本の活断層は、約2,000あるとされています。これでは仮に一万年に一度動いても全国では五年に一度は直下型地震に見舞われますので、とても安心できません。

 国土地理院が公開している「都市圏活断層図」によると、2022年1月時点で、全国で47都市圏に1,648の活断層が確認されています。また、地震調査研究推進本部が定めた「主要活断層帯」は、全国で114あります。

 ただし、これらの数字はあくまでも確認された活断層の数であり、まだ見つかっていない活断層も多数あると考えられています。今回の能登半島震災の活断層は、「主要活断層」以外のものでした。日本列島は活断層列島なのです。

 軍拡予算など大幅に減らしてでも、河川、道路の補強、住宅の補強を優先しなくてはなりません。災害備蓄や避難所の確保も早急な課題なのです。気候危機の影響で、複合災害の恐れも高まっているのです。原発再稼働、軍備費倍増の政治をやめさせましょう。(阿部文明)