【管理人の一言】

原発汚染水からトリチウム水を分離する装置には、従来から主に以下の3つの方法があります。

  • 蒸発分離法

汚染水を加熱して水蒸気にし、その水蒸気からトリチウム水を分離する方法です。トリチウム水は水蒸気と比べて沸点が低いため、水蒸気から分離しやすいという特徴があります。この方法は、比較的簡易な設備でトリチウム水を分離できるため、福島第一原子力発電所の処理水処理においても採用されています。

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蒸発分離法

  • ガスハイドレート法

トリチウム水と重水をガスハイドレートとして生成し、そのガスハイドレートからトリチウム水を分離する方法です。トリチウム水と重水はガスハイドレートとして結合しやすいという特徴があります。この方法は、蒸発分離法と比べてトリチウム水の濃度を高く分離できるというメリットがあります。

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ガスハイドレート法

  • 化学吸着法

トリチウム水を吸着剤に吸着させて分離する方法です。トリチウム水は、炭素やセラミックなどの吸着剤に吸着しやすいという特徴があります。この方法は、蒸発分離法やガスハイドレート法と比べてトリチウム水を高濃度で分離できるというメリットがあります。

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化学吸着法

これらの方法は、それぞれにメリットとデメリットがあります。そのため、トリチウム水の濃度や処理水の量など、さまざまな条件に合わせて、最適な方法を選択する必要があります。

 

さらに下記の近畿大学の開発した方法も含め、なぜ原発村はこのようなトリチュウム除去にそもそも取り組もうとしないのか。「トリチュウムは危険ではない」「人体に影響ない」「薄めて海洋に流せば大丈夫」としてきたのでしょうか。

 

それはつまるところ「コスト」問題となります。

 

電力会社は事故と関係なく発電とともに膨大に発生するトリチュウム汚染水(冷却水)を吐き出し続けています。

トリチウムは、ウラン235の核分裂反応や、炉内に存在するホウ素と中性子の反応、冷却水中の重水素と中性子の反応、などから生じますから、現在の原発冷却システムにおいては発生が不可避です。

原子炉の冷却水は、原子炉内で発生する熱を外部に放散する役割を担っています。冷却水は、原子炉の内部を循環し、熱を奪い取ります。その際、冷却水の中には、トリチウムなどの放射性物質が含まれています。

 

このような莫大な海水などを回収して分離するには巨大な装置が必要です。トリチウム水を分離・除去するための設備や運用コストは、膨大な額になります。東京電力によると、処理水をすべてトリチウム水の濃度が1ベクレル/リットル以下にまで減らすには、約2兆円の費用がかかると試算されています。これはすなわち原発のつくる電力がいかに高額なものになるかが分かります。「原子力発電はクリーンで安い」とはこのような欺瞞の上に成り立っているのです。(了)

 

 

「トリチウム水」を分離する装置 関係者の多くが期待した画期的な技術

【原発汚染水「トリチウム除去」を誰が邪魔するのか #1】 (msn.com)

 

5年半前に発表されたトリチウム分離装置(提供)近畿大学

5年半前に発表されたトリチウム分離装置(提供)近畿大学© 日刊ゲンダイDIGITAL

【原発汚染水「トリチウム除去」を誰が邪魔するのか】#1

 

間もなく5カ月が経つ。昨年8月、政府・東電が地元関係者との約束を反故にし、福島第1原発にたまる放射性物質トリチウムを含んだ「処理水」の海洋放出を強行。元の汚染水は今なお1日約90トンのペースで増え続け、海洋放出はイタチごっこだ。政府は完了までに30~40年かかるとするが、希望的観測に過ぎない。元凶は、多核種除去設備「ALPS」でもトリチウムを取り除けないこと。しかし、この状況に一石を投じたのが、約5年半前に近畿大学の研究チームが発表した最新の除去技術だった。あの画期的なシステムは今、どうなっているのか。研究者らの挑戦を追った。

 

「『トリチウム水』を分離・回収する方法及び装置を開発しました」

2018年6月、近畿大学の研究チームが発表したプレスリリースは、各メディアに驚きをもって迎えられた。

トリチウムを含んだ水は普通の水と化学的性質が同じであり、分離するのは困難とされる。しかし、近大の研究者らは大阪市のアルミ箔製造会社と連携し、直径5ナノメートル(ナノは10億分の1)という超微細な穴を持つアルミ製フィルターを開発。トリチウム水を含んだ水蒸気を通すと、炭やスポンジのような無数の穴の表面にトリチウム水だけが残り、分離して取り除くことに成功したというのだ。

折しも政府と地元の溝が深まっていた時期

折しも政府が、福島第1原発にたまり続けるトリチウム水の処分を検討する有識者会議を設置。海洋放出を中心に検討を重ねていたのに対し、風評被害を懸念する地元漁協関係者らが反対し、「溝」が埋まることなく、平行線をたどっていた時期と重なった。

 

トリチウムの除去について、近大の研究チームは「実験室レベルの初期段階で、ほぼ100%除染されていることを確認した」と説明。トリチウム水の処理に一石を投じる研究成果に、この研究を主導する工学部の井原辰彦教授(当時)は「福島第1原発の汚染水の量を減らしたい」と胸を張った。

トリチウムを取り除ける画期的な技術さえあれば、難航を極める「処理水」の処分も丸く収まるのではないか──。関係者の多くが研究チームの画期的な技術に期待し、除去システムの確立と実用化に夢を膨らませた。メディアも当時は「処理につながる技術として期待」と歓迎したものだ。

しかし、共同研究者のひとりは、研究成果の発表に対し、一抹の不安を抱いていた。 =つづく

(取材・文=今泉恵孝/日刊ゲンダイ)